5月11日 自宅謹慎させていただきます
「どうしてこんなミスをしてくれるんだ!」
社長は私に叱責した。
「申し訳ございません。発注する数を間違えていたようです」
「そんなことを言われてもねえ。もう物は注文して届いてしまっているんだ。特注の品だから今さら断るわけにもいかないし、この大量の品をどうするつもりかね」
「大変申し訳ございません」
「ただ謝ればいいと思っているのかね。そんなことだから君は時おりミスをしでかすのだよ」
「ではこの度の失敗を猛省するためしばらく自宅謹慎とさせていただきます」
「自宅謹慎だと? アホなことを言うんじゃない。状況を理解しているのかね」
「ええ、理解しています。社長が愛人に貢ぐために購入したアクセサリー、それを間違って大量に購入してしまいました。社長はもちろん、愛人の方にも申し訳なく思っております。そのためしばらく自宅謹慎とさせていただきたく思います」
社長は先ほどの威勢はどこへとやら、急に小声になった。
「何を言っているのだね。愛人とはなんだ」
「早川さんのことです」
「彼女は秘書じゃないか」
「失礼しました。愛人兼秘書でしたね」
「貴様、どこまで把握している?」
「さあどうでしょう? そんなことより私は今回のミスは自宅謹慎では軽すぎますので、ここは自主的に懲戒解雇処分とさせていただきます。それではさようなら」
「き、君……待ってくれ。悪かった。悪かったよ」
社長は崩れ落ちるように床にうなだれた。
「脱税の疑いがありますので御社を調査させていただきます」
ほどなくして税務署の職員がやってきたが、これは誰の仕業か言うまでもないことだ。
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