4月30日 ウソツキ
あるところに人の頭を突くという変わった習性を持つ鳥がいた。その鳥は、人間同士が会話している時にどこからか突然現れては頭を突いては人々を悩ませていた。どうしてこんなことをするのか誰も分からなかった。
しかし、ある一人の研究者がその鳥を観察し続けた結果、あることに気が付いたのだった。
「博士。この鳥について分かったことがあると聞いたんですけどぉー。何なんですかぁー?」
博士の助手はゲージに入った鳥を見ながら博士に訊いた。
「まあ、そう急ぐでない。ちゃんと教えるから。そうだな……この映像を見てもらった方が早いか」
博士は助手にコンピュータの画面を見せ、動画を再生し始めたのだった。
その動画は国会の証人喚問の動画だった。
「記憶にございません」
画面の中の男がそのように発言すると、鳥が現れて男の頭を突き始めた。
今度は夫婦が話をしている映像に切り替わる。
「あら、あなた。よく見れば首元にキスマークがあるじゃないの。誰のかしら?」
女は何かに確信をしたように鋭いまなざしを男に向ける。
「キスマーク? 何のことだ? そんなもの俺は知らん。たぶん朱肉に触れた手で首元を触ったからだろう」
すると、またもあの鳥はやってきて先ほどと同じように男の頭を突き始める。
「痛い。痛い。やめろって」
そして同じようにどこかへと飛んで行ってしまった。
「鳥のことよりもあなた。私に嘘ついてない?」
「何を言っているんだ。嘘なんかついているわけがないだろ」
そうして、また鳥はやって来て男の頭を突き始めるのだった。
助手はこの動画を見て、鳥がどのような条件下で頭を突くのか理解したようだ。
「博士。俺、わっかりましたー。嘘をついたら鳥が頭を突きに現れるつーことですね」
「そのとおりだ。私はこの鳥にウソツキという名前をつけてみた。名のとおり嘘を突く鳥だ。嘘をついた人の頭を突くという習性を持つ鳥でな。なかなか面白いだろう?」
「そーですねー。マジ面白い習性っす」
「いやー、君みたいに私の研究を理解してくれる助手がいて本当に嬉しい。君の他にも助手はいるが、やはり君が一番だな」
ウソツキは博士の頭を突こうとしていたが、ゲージの中からは出られなかったようだ。
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