4月29日 地球旅行
地球環境の悪化により、人類が火星に移住を終えて数百年経った頃のことだ。
「我々の元々いた地球は今、どのようになったのでしょうか」
とある大学の学生は教授に疑問を投げかけた。
「そうだな。もう何百年も地球から離れているから我々はあまり気にしなくなったが、きちんとした装備をすれば、地球に行けるくらいに環境はよくなっただろう」
「本当ですか。行ってみたいです」
「どうしてだ。行っても何にもないと思うがね。少なくとも生物は何一ついない」
「僕は昔の人々がどのような生活をしていたのか、どのようなものが昔、流行していたのか知りたいんです。火星移住によって地球から持ってこられる物は限られていたので昔の文献はほとんどありませんし、それもあってか歴史の教科書も火星移住の時代のことは詳しく載っていません」
その学生の言葉を聞いた教授は少しの間考えた。
「そうだな。地球に行ってみるというのもいいのかもしれない。それに興味深いものも中にはあるかもしれない。木星旅行や土星旅行にはもう行き飽きたところだったからな。何とかして、行けるようにしてみるか」
「本当ですか」
学生は大声を上げて喜んだ。
地球旅行の計画は思うように進んだ。この時代、距離だけを考えた場合、地球旅行をすることは難しいことではない。実際問題、地球に行くための宇宙船の準備よりも、着いてから必要になる装備の方が手間はかかるのだ。地球の強力な放射線を防ぐための防護服は欠かせない。
「よし。これで準備ができましたね」
学生はにこやかに笑いながら言った。達成感にあふれた顔のように見える。
「これだけでやり切ったような顔をするではない。ここからが本題なんだぞ。いいか」
「そうですね」
その学生と教授は準備を終えた。そして、宇宙船は地球に向けて動き出したのだった。地球と火星の距離は他の惑星に比べれば、それほど遠くはないため、すぐに到着することができた。
地球はかつて人類が住んでいたとは思えないほど枯れていた。
「これは何だ……」
学生が見つけた物は手の親指の大きさに相当するほどの小さなプラスチック製の物体だった。
「これは確か……かつてデータを記録するために使われていた記憶装置ではないか。火星に持ち帰った時に分析するとしよう」
それから学生と教授は様々なものを見つけて火星へ持ち帰った。保存状態が悪いものが多く、分析はうまくいかないものがほとんどだった。しかし、最初に学生が見つけた記憶装置だけは奇跡的に分析がうまくいったのだった。
そのデータは大変貴重なものとされ、博物館に置かれるほどのものとなった。また、そのデータは画像データだった。そして、そのデータは博物館内のスクリーンに映し出され、来ていたお客はそれを見て言う。
「へえ、昔の人はいつもこんな服装をしていたのか」
その画像はピンク色の長髪をツインテールにした男性がセーラー服を着ている画像だ。それはまるでアニメや漫画に出てくるキャラクターのような見た目だった。
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