第6話 死を回避したら…
阿用城内
「…側近になれと?」
「そうだ」
捕らえた桜井宗的にそう告げる
「敵対したのに何故…許すのですか?」
許すだけではなく所領も半分は安堵するとまで言ったのだ
驚くのも無理はない
「そうだな。使えるからだな」
「と申しますと?」
「多勢に無勢にありながら良く戦ったそなたやそなたの配下を無下にしたくはない。優秀な者は手元に置いておきたい。無論手柄を立てれば加増するし次裏切れば赤子に至るまでの一族を火あぶりにしてやるがな」
褒めつつも恐怖もある言葉に桜井宗的は若干恐ろしさを感じたが
「どうする桜井宗的」
少し考えた桜井宗的だったが
「…父・経久に勝るとも劣らないその策略と寛容さ…見てみたい気がしてきました。わかりました。政久様に仕えましょう」
「助かるぞ」
「その代わり、我が娘を側室にしてやって貰えませぬか?」
そう来たか
予定の範疇ではあったが桜井氏は出雲の有力な豪族の一つ。
それを従属させ後ろ盾も得られれば大きいに決まっている
「わかった。それも含めて父上に報告しよう」
「ありがたき幸せ」
そうすると桜井宗的の縄を解き家臣に加えることになった
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俺から報告を受けた経久は驚いていた
「桜井宗的を許しただけでなく直属の家臣に加え、娘を側室に貰った?」
「はい」
少し考えた経久ではあったが
「見込んだとおりの息子だ」
「は…?」
「桜井氏は有力な豪族。それも分かっての懐柔であろう?」
「お見通しでしたか」
そんな私を見て高笑いする
「まだ老いてはおらぬからな」
「そうでございますな」
二人して笑うと
「しかしここらが良いところじゃな」
「なにがでございます?」
「政久よ。今日を持ってそなたに家督を譲り儂は隠居する事に致す」
そういう経久に空いた口が塞がらなかった
「まさか…それも込みでの桜井氏討伐だったのですか?」
「そうじゃ。故に総大将の座を譲る訳には行かなかったのじゃ」
いや、タイミング…それのせいで史実の政久死んでんだけど
「なるほど…」
「家臣達には儂から発表しておく。そなたは今後尼子の当主として振る舞わねばならん。準備しておくように」
「…ははっ!若輩者ながら一所懸命に…」
こうして自らの死を回避しただけでなく家督も相続してしまうことになってしまった
ひょっとしたらもっと早いタイミングで家督を譲って他かもしれませんが桜井氏討伐はキリのいいタイミングということで解釈させてください