第3話 息子に死ねというのかよ!
おいおいおいおい
尼子政久かよ…
さっきまで「大好きな尼子だ」だの「新宮党がいいな」だの思っていた気持ちは吹っ飛んでいった
なぜなら尼子政久は「20代という若さで亡くなる尼子家の嫡男」という事
そして俺が好きな新宮党を粛清する「尼子晴久」の父であるということ
浮かれてた気持ちから一気に地獄を見たがこうして居られない
なぜならその阿用城の戦いの最中で笛吹いてたところを殺されて命を落とすのだから
現世で事故死して転生した先でもすぐ死ぬなんて真っ平御免だ!
絶対運命を変えてやると心に誓った
~~~~~~~~~~
支度を整えると俺は父・経久の元へ向かった
先程尋ねてきたガタイのいい男は俺を兄と呼んでいたので「尼子国久」か「塩谷興久」のどちらかであろう
そして手柄の部分から考えて多分若い「塩谷興久」に違いない
ならば話は早い
死ぬとわかってる戦に行くほど馬鹿ではない
ここは桜井氏討伐を塩谷興久に譲って俺は今後の事をゆっくり考えさせてもらう
そう思い父の元へ向かった
~~~~~~~~~~
「政久入ります」
そう言うと父経久と対面した
これが経久か…
俺の大好きな尼子の…
大〇ドラマじゃ緒形拳がやってたイメージだが全然似てねぇな
そう思っていると
「政久、話とはなんだ?」
「はっ。此度の桜井氏討伐の任を弟興久に譲りたく思います」
「なにっ。なぜ急にそのようなことを」
「興久は若く将来があります。ここは手柄を立てさせて将来的には私を支え尼子を盛り立てて貰うための経験にさせてはどうかと」
「ふむ…」
考えた経久だったが
「悪いが此度の総大将は政久、お前のままで行く」
「は…何故でございますか?」
「此度の桜井氏討伐後、正式に家督をお主に譲りたいのじゃ」
な…なんですと!?
「桜井氏討伐は出雲統一の大事な一戦じゃ。故に次期尼子当主として見せつけねばならぬ」
「はっ…」
「故に総大将はお主のままで行く。異論はないか?」
あるに決まってんだろ!
この人桜井戦で笛吹いて死ぬんだって!
だから殺さないでよ経久!
と思っていたがそんなことは言えなかった
だがこのままでは死んでしまう…そう思いある事を思いつく
「であればお願いしたき事が」
「なんだ?」
「国久と興久を付けて頂けませぬか?」
本来、国久と興久は政久の死後に桜井氏討伐に加わる事になるのを知っていたがそれでは俺が死ぬ!
「ほぅ…しかし先も言ったようにお主に尼子の当主として見せつけてもらわねばならぬ故に二人をつけては…」
「分かっております。しかし此度の桜井氏との戦、早期決着が望ましく思います」
「と言うと?」
「桜井氏の城、阿用城は堅城です。しかしここに時間をかけていては桜井に謀反を促した南条宗勝の思う壷であり出雲の諸将も我々の力を見くびりかねません」
「それで二人をつけよと?」
「はっ。武勇に名高き二人を率い。兄弟で桜井氏を討伐したとあれば皆に示しがつきまする。そしてそんな二人を見事に扱ったとあれば私の名も上がり父上の描いてるとおりになると思われます」
「ふむ…たしかにな。わかった。二人を含めてできるだけの戦力を集めるとしよう」
「ありがたき幸せ」
そう言うと経久の部屋を出た
これで歴史が変えられる!死ななくて済むかもしれん!
という思いもあったが大好きな尼子国久を扱える事に感激していた