第16話 誠豊と講和
湯梨浜の戦いは尼子軍の死傷者が500程度だったのに対し山名軍は無傷で鳥取城に戻ったのは1000程であり3000近く死傷者が出ていた
この大敗により山名を取り巻く状況は大きく変わる
田結庄氏は誠豊の甥でまだ齢7つの祐豊を但馬で擁立し尼子との講和を目論む
太田垣氏は尼子への臣従を早々に表明
八木氏はこの戦いの主力を勤めていた為に当主が戦死
山名誠豊に残ったのは垣屋氏だけだった
「まさか…尼子がここまでとは」
鳥取城に逃げ帰った山名誠豊がそういう
「油断しましたな」
垣屋当主・垣屋続成もそれに続く
「この後どうするべきだ?」
「この鳥取城は堅牢とはいえ此度の敗戦で大きく戦力を削がれました。さらに田結庄氏に擁立された祐豊様を推す声もあり…我々はかなり不利かと」
そういう垣屋に山名誠豊は思う
死ぬしかないのか…と
そんな時尼子から使者が来る
その尼子の使者の提案が思いもよらぬものだった
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「尼子政久は私を許すと?」
「はっ」
山名誠豊は使者の亀井秀綱に声を荒らげる
尼子政久は山名誠豊に対して「山名の当主と認め祐豊ら但馬国を倒し山名家を纏めます。まとめた暁には誠豊を山名の当主として尼子は認め但馬に関しては安堵する」というものだった
「わからぬ…このまま攻めればわれら山名を滅ぼし因幡・但馬を完全に領有できるでは無いか…それほど圧倒的なのになぜ今講和し私を認め所領の安堵まで認めるのだ?」
驚くのは無理もない
むしろ領土全てを奪い山名誠豊らは出雲に幽閉、もしくは打首でもおかしくない
それほど圧倒的な展開なのに講和と安堵を自ら申し出る政久の真意が分からなかった
亀井秀綱がいう
「殿は誠豊様を買っておられます。多勢に無勢でありながら自ら先頭に立つその将器は名門・山名を統べるにふさわしいと。それに我々は単に尼子の勢力を増やしたり力を示すだけではなくこの国全体の平和を望んでの戦だと…」
そういう亀井秀綱に誠豊はビックリした
あそこまで圧倒的な才を魅せた政久が私を認める?そしてこの国の平和の為?
自らは山名四天王を統率すら出来ず国内は乱れていたのに政久はこの国全てを見ている
これは勝てないと誠豊は悟った
「わかりました。その案受けさせていただきます。近いうちに講和の場を設けましょう」
「ありがたき幸せ。殿に伝えます」
こうして山名氏と講和することとなった