第15話 湯梨浜の戦い(後編)
時を戻して会議の後
「隠岐水軍と協力して山名軍の背後を突いて欲しい」
尼子政久の指示に桜井宗的は耳を疑った
「背後でございますか?」
確認する桜井宗的に
「そう背後だ。そなたの手勢500と隠岐水軍の500…合わせて1000の兵力だ」
そう説明する
「なるほど…たしかに難しい任務ですな」
そう桜井宗的は言う
山名氏は強敵だ。少なくとも8000近い兵力は動員できる
それを敵の領内のど真ん中…しかもわずか1000で
失敗したら命はない
「場所は湯梨浜。そこに山名軍をおびきだす。初日は我々の攻勢はあえて緩め温存しておく。すると山名氏は緒戦に勝ったと油断する。その夜本隊と夜襲部隊で挟み撃ちにするということだ」
そういう尼子政久に
「この桜井宗的…例え失敗したとしても殿の本隊が来るまで時間稼ぎはしてみせましょう。死してもやり遂げてみせます」
力強く桜井宗的が答える
「頼むぞ!」
そう言うと桜井宗的は準備にかかった
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山名への夜襲が成功するやいなや尼子政久は動き出す
警戒させていた塩冶興久や赤穴、三沢ら5000に命じ攻撃させる
亀井秀綱は
「そのために昼は戦力を温存にし諸将には気を緩めず山名の夜襲を警戒しろと命じたのですな」
「うむ」
俺は返事をする
実は亀井秀綱だけでなく興久にさえ桜井宗的が背後をつくことは今の今まで話していなかった
それが桜井宗的の夜襲成功の秘訣だった
「敵を欺くにまず味方からだぞ秀綱」
「そうですな。儂も肝に銘じます」
政久の奇策に脱帽せざるを得なかった
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「退却だ〜!」
「逃げろ!」
夜襲だけでなく挟み撃ちにされた山名軍はもはや立て直すことなどできなかった
瞬く間に潰走することになった
山名誠豊も逃げるしか選択はなく辛くも鳥取城に逃げ帰ることが出来たほどだった
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夜が開けると桜井宗的が隠岐水軍の首領と共にやってきた
「お味方大勝利でございます」
「よくやったぞ桜井宗的」
「ははっ!」
「興久もよく対応してくれた」
そういう俺に興久は
「兄者が何かしようとしていたのは分かっていましたがまさか背後からの夜襲とは…考えもつきませんでした」
そう興久は言う
「何はともあれ我が軍の大勝利だ!」
桜井宗的が言う
「殿!勝どきを上げましょうぞ!」
亀井秀綱が続く
「よし、興久!お前が音頭をとれ」
「はっ!恐れながら…者共!勝どきをあげよ!」
「エイエイオー!!」
こうして湯梨浜の戦いは尼子軍の大勝利に終わった