第14話 湯梨浜の戦い(前編)
1518年5月
尼子政久は総勢1万2千の軍勢を率いて因幡へ進出した
一方の山名氏は家中がまだまとまっていない状態であったが山名四天王の垣屋、八木氏を中心に当主・山名誠豊が自ら出陣。7千程で持って迎撃に出た
そして両軍は湯梨浜付近にて睨み合う形となっていた
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「思ったより少ないな」
山名氏の総勢が1万に満たないことを確認するとそう呟いた
「やはり一枚岩では無いようですな」
亀井秀綱が続ける
山名氏は山名四天王と呼ばれる八木・垣屋・田結庄・太田垣の四氏が力を持っており1512年にはその四天王が当時の君主を追放し今の山名誠豊が山名氏当主に就任している。つまり傀儡のようなものだ
そんな四天王の中でも争いが続いており今回の戦も田結庄・太田垣は温存している
「こちらとしては好都合。一気に決めるぞ」
「はっ!」
こうして湯梨浜にて尼子・山名の両軍が激突した
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山名氏は7千と数に劣るもののやはり地元での戦い。地の利を生かした戦いと故郷を守るため尼子軍相手に善戦していた
「このまま因幡を守り抜く!」
山名誠豊はそう言い放つと垣屋・八木両将を率いて自ら切り込んで見せた
傀儡と言えど名門・山名の当主である。その実力は確かなものがあった
こうして初日は山名氏が推した形となりおえた
「皆の者、よくやってくれた」
山名誠豊は本陣に戻ると諸将を労った
上出来すぎる序盤の戦いぶりにみな酔いしれていた
「出雲・伯耆を統一した勢いから我らにも勝てると思ったみたいですが浅はかでしたな」
「うむ。尼子など恐るるに足らず!」
「このまま伯耆も取ってしまいましょう!」
士気は万全、勢いも山名にあり誠豊も勝てると確信していた
その時だった
「敵襲!!」
そんな一言で皆が我に返る
敵襲?夜襲とは出し抜かれた…いやまて
本陣の先の前の尼子は動いていない
「敵襲?目の前の尼子軍に動きなどなかったでは無いか!」
現に山名軍は尼子の動きには注視していた
しかし前方の尼子軍はまるで動きがなかった
「しかし、後方の部隊が襲撃を受け被害甚大!こちらに迫っています」
「後ろだと!?」
まさか陣中で裏切り?それとも他の四天王が…
色んな考えが誠豊をよぎる中思いもよらぬ報告が来る
「船より降りし尼子の別働隊による攻撃!」
「別働隊!?」
誠豊はさらに混乱した
尼子は1万2千もの軍勢を動員している
塩冶興久や亀井秀綱など主だった主戦力の出陣も確認している
隠岐水軍が手伝ったとはいえ尼子に動かせる戦力などないはず
「何者だ!旗や敵将を確認せよ!」
そう命じると前方の尼子本隊の動きを見つつ軍を立て直す
ほどなくして別働隊が何者か判明する
「敵将は桜井宗的と判明!桜井氏の家紋を確認!」
「桜井宗的だと!?」
そう、その将は遠征軍から外されていた桜井宗的だった