見っけ~!
こちらは百物語五十二話&夏のホラー2021の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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まだ娘が三才だった時のお話です。
数年前、私たち家族は三人で「古民家」のような家に住んでいました。
周りを森に囲まれた大きな家で、田舎暮らしを満喫したい夫が格安の値段で見つけてきたのです。
色々と不自由なこともありましたが、私も娘も田舎暮らしは嫌いではありませんでした。車が必要不可欠ですが、夜は静かでバーベキューもできます。
私たち家族にとっては、当時の環境は悪くないものでした。
あの「事件」が起こるまでは…
「いーち、にーい、さーん、しーい…」
ある日の午後。庭の手入れをしていると、家の中にいる娘が何かをやっていることに気がつきました。
「何やってるのぉ?」
家に戻ってみると、客室の中で壁に顔面を擦りつけながら数字を数えている娘がいました。
「今ね、かくれんぼしてるの!」
娘は私に向かってそういうと、再び数字を数え始めました。
家にいるのは私と娘だけです。夫は仕事で出かけているし、今日はお客さんもいません。
「そう、気をつけてね」
私はあまり気にすることなく、すぐに庭へ戻りました。この年代の子どもにとって、一人遊びはよくあることだと思ったのです。
数日後…
「いーち、にーい、さーん…」
居間で洗濯物をたたんでいると、娘がまた一人でかくれんぼをしていたのです。
「今日もかくれんぼ?」
娘に向かって私は声をかけました。
「うん。お姉ちゃんとかくれんぼしてるの」
娘はどういうわけか「お姉ちゃん」とかくれんぼをしていると言ってきたのです。気になった私は、質問を続けます。
「お姉ちゃんって誰?」
娘はかくれんぼを中断すると、私に向かって懸命に説明を始めました。
「あのね、お姉ちゃんが見つけてほしいっていうの!だから見つけてあげようと思って!でも全然見つからないの…」
詳しいことはよくわかりませんが、娘は正体がわからない「お姉ちゃん」とかくれんぼをしているというのです。
不気味なものを感じた私は、すぐに夫へ相談してみました。
「イマジナリーフレンドってやつじゃないかな。子どもならよくあるって聞いたことがあるぞ。とにかく気にする必要はないよ」
夫の言っていることも理解できました。田舎暮らしで地元に友達がいない娘なら、そういう空想上の友達を作っても不思議ではありません。しかし…
「いーち、にーい…」
娘は毎日かくれんぼで遊び続けているのです。まるで本当に誰かを探しているかのように…
「ねぇ、お母さんもかくれんぼに参加していい?」
お姉ちゃんの存在が気になった私は、一度娘のかくれんぼに参加してみることにしたのです。
「いいよ!お母さんも一緒に探して!」
私は娘と一緒にお姉ちゃんを探すことにしました。そんな人物見つかるわけがないのに…
かくれんぼが始まってから数分後…
どこを探してもお姉ちゃんの姿は見つかりません。当たり前のことです。
「お姉ちゃんいないね。本当にお姉ちゃんは家にいるのかなぁ」
娘に向かってそう話しかけてみると、娘は何かを思い出したかのように家の二階へ走り出しました。
「まだ上の部屋は見てないの。そこにお姉ちゃんがいるかも…」
娘の後を追いながら、私は久しぶりに二階の「物置部屋」へ足を踏み入れました。
「この部屋は鍵がかかってるからいないと思うよ?」
私が娘にそう言っても、娘は物置部屋を開けてほしいと何度も私にお願いしてきます。娘のお願いに根負けしてしまった私は、仕方なく物置部屋を開けることにしました。
「ほら…誰もいないよ…?」
物置部屋の扉を開けると、中から古い本のような独特のニオイが漂ってきました。
「あそこ!お姉ちゃんあそこにいるかも!」
娘が部屋の一番奥にある「押し入れ」を指さしました。押し入れの中に人がいるわけがないと思ったのですが、私は娘を納得させるために一度あの押し入れを開けてみようと思ったのです。
「それじゃあ、開けるね。せーの…」
私は娘と一緒に物置部屋へ入ると、押し入れの扉へ手をかけました。そしてゆっくりと、押し入れの扉を開いたのです。
「ほら、お姉ちゃんなんていな…」
押し入れの中を見た瞬間、私の身体は石になったかのように動かなくなりました。
「見っけ~!」
娘が押し入れの中を指さしている。
「きゃああああああああああああああっ!?」
中に「お姉ちゃん」はいました。
首がありえない方向に曲がってしまっている女性が、私たちを見てニヤリと笑っていたのです。
「嘘…そんな…」
予想外の出来事に驚いた私は、思わずその場で棒立ちになってしまいました。しかし…
「に、逃げなきゃ!?」
我に返った私は、すぐに娘を抱きかかえると急いで部屋の外に向かって走り出しました。その時、私たちの後ろから奇妙な声が聞こえてきたのです。
「ツギハ…ワタシガ…オニ…ネ…」
女性はそう言っていたと思います。私たちは部屋を出た後、パニックになりながら家を飛び出しました。
その日の夜、私は夫に今日見たものをすべて話しました。
「そ、そうか…でもこの家は確か…いや…あぁ…わかったよ…すぐに引っ越そう…」
意外なことに、夫はすぐに私の話を信じてくれました。何か事情を知っていると感じた私は、夫へ正直に話してくれるよう何度も頼みました。すると…
「実はこの家、人が亡くなっているらしいんだ…大昔の話で、お祓いもちゃんとしたって聞いてたからさぁ…」
夫が話してくれたのはここまでです。ただ、私は亡くなった人が女性で、亡くなった場所があの物置部屋だということだけは何となくわかりました。
1週間もたたないうちに、私たち家族はあの家を後にしました。
現在、私たち家族は都会にあるマンションの一室で生活しています。
あの時の自然が恋しくなる時もありますが、将来のことを考えると今の生活の方が大切なのかもしれません。
娘ももうすぐ小学生です。一人遊びが好きなところは変わっていませんが、健康で元気に育ってくれています。
「あら、どうしたの?」
幼稚園から帰ってきたばかりの娘が、どういうわけか部屋の押し入れの中へ入ってしまったのです。理由を聞いてみると…
「お姉ちゃんがね、かくれんぼの続きするんだって!」
娘が意味のわからないことを言い始めました。私はしばらく考えた後、娘の言葉の意味を理解してゾッとしました。
次の「鬼」は彼女だったのです。
そして私たちは…
「ミッケェ」