君のいない世界に
僕には、君のいない世界に
意味なんて、無いんだ
永い間、水の中を揺蕩っていたような気がする。
本当は、数時間夢という名の虚無の中を漂っていただけなのだけど。
でも、こんな目覚めの日には、言い表せないほどの後悔と、懐かしさを感じる。
こんなふうになったのは、いつからだっただろうか。
そんな風に思いながら、今日も息をする。
でも、いつも何処か物足りなくて。
何かが足りない僕の身体は
きっと"大切なもの"が欠けている
最近、あの感覚を覚えることが多い気がする。
こんなこと、今まで無かったのに。
今日は特にそれが強くて。無意識のうちに、今はもう無い左目を触っていた。
10年前。僕の、空白の時間。僕が左目を失った時。
この感覚は、それに関係があるのだろうか。そんなことを考えても思い出せるわけじゃ無いのに。
"真っ白"に塗られた僕の時はきっと
忘れていてはいけないこと
久しぶりに、外に出た。
絵を描くためだけれど、本当はあの不可思議な感覚を紛らわすため。
僕のアトリエの近くには、大きな公園がある。
ここには沢山の人がいて、僕は彼らの色を描いていく。
楽しい色、哀しい色、嬉しい色、恋の色。
沢山、沢山あるけれど、まだ何か足りない。
僕の探す"イロ"は何色ですか
少し時間が空いたから、海辺へ来てみた。
海なんて、いつぶりだろうか。
少なくとも、ここ5年は来ていない。
次は、風景画を描いてみてもいいかも知れない。山にも行ってみたりして。
珍しく自然に触れたからだろう。
とても気分が高揚しているのを感じる。
元来、感情の起伏が激しい方では無いのだけれど。
そう考えながら画材を広げる。
そうだな、水彩画にしようか。どんな絵にするか構想を纏めて、砂浜に腰を下ろす。
すると、何かが手に当たった。見てみると、割れたガラス玉。
光に透かそうと思って海の方へ向けると、唐突に頭が痛くなった。内側から、何かがドンドン叩いてきて、頭が割れそうだ。
今日はもう、帰ってしまおう。
ただ、"何か"が僕を呼んでいる
歯車は既に廻り始めている