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私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?  作者: さいとう みさき
第十章絶対合格しなきゃいけないよ!!
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10-5絶対合格しなきゃいけないよ!!

長澤由紀恵15歳(中学三年生)。

根っからのお兄ちゃん大好きっ子。

そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥


「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」


ここから始まるラブコメディー。

さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!


私は絶対にお兄ちゃんの高校に行くんだ!!(由紀恵談)


 「いいか由紀恵、よく聞くんだ」



 お兄ちゃんは息も整っていないのに私に話しかける。

 それはとても興奮した状態で。



 「今回の新型ウィルスな、かなり蔓延していていろいろな所で受験生に支障が出ていたんだって。それで急遽市の教育委員会が今年の入試試験に二次受付を追加する事になったんだ。さっき教員室で先生から聞いたから間違いない! 由紀恵、まだあきらめなくて済むかもしれないんだぞ!」



 一気にそこまで言ってお兄ちゃんははぁはぁと荒い息をつく。



 「う‥‥‥そ‥‥‥」



 何故だろう、ポロリと涙が一筋流れた。


 「嘘じゃないぞ、由紀恵! まだやれるんだ!」


 私は思わずお兄ちゃんに抱き着く。

 そしてわんわん泣き始める。



 「終わってない! 本当に!! おにいちゃん!!!!」

 

 「ああ、まだだ、由紀恵、まだやれるんだよ!」



 まだ終わっていない。


 その事だけが私にとって奇跡。

 そしてやっぱりお兄ちゃんが私をつなぎとめてくれる。



 「いいか由紀恵、明日各学校に緊急連絡でこの通知が出るらしい。既に公立高校を受験した者は合否に関わらずもう受けられないが諸事情の学生は医療機関の証明を取れば申請の受付を始めるはずだ! だから!!」


 「うん、お兄ちゃん! 絶対に桜川東に私は行く! 絶対にね!!」



 私とお兄ちゃんは早速この事をお母さんに話に行くのだった。



 * * * * * 



 「でもこれでやっと由紀恵ちゃんも試験受けられるねぇ~」


 「ああ、これも何も紫乃ちゃんのお母さんのお陰だよ。ありがとうな」


 「ううぅん、もともとお母さんも悩んでいたみたいだけど、私はちょっとだけ大変なみんながいるって話しただけだよ~」



 紫乃のお母さんは市の教育委員会の会長を務めていた。

 まあ、あの家は昔からいろいろとこういった所に顔を出す家柄だったけどね。



 あの新型ウィルスは日本の各主要都市で蔓延が始まりその猛威を振るっているらしい。


 おかげで首都圏で大学が集中する所は試験日延期とか国立大学に関しても試験日の延期や試験方法の見直しが始まっていた。


 なのでうちの市でもいち早くその取り組みが始まっていて第一弾として公立高校の二次受付が始まった。

 条件は今次新型ウィルスに感染した者や諸事情で試験が受けられなかった者に限られるけど、とにかく私は桜川東高校を受験できる事となった。




 「それじゃぁ お兄ちゃん、紫乃、高橋さん、矢島さん、泉さん、吉野君、親友その‥‥‥じゃなくって、太田さん。行ってきます!」



 私は受験票と筆記用具の入ったカバンを握りしめ桜川東高校の門を入って行く。



 「まあ大丈夫だろうけど、頑張ってね由紀恵ちゃん」


 高橋静恵はそう言ってあの大きな胸を抱き上げるように腕組みする。



 「ファイトですよ! 由紀恵ちゃん!」


 矢島紗江はガッツポーズを取って応援してくれる。



 「‥‥‥新学期で待つ」


 泉かなめは相変わらずぼそぼそと言っているけど今日はなんだか穏やかな表情だ。



 「先輩、来年は僕もここに来ますからね! 絶対ですよ!!」


 吉野君もそう言ってエールを送ってくれる。



 「はぁ、友也んちの妹が来年からは後輩かぁ。俺、いろいろと使いっ走りにされそうだな」


 親友その一も笑っている。



 「由紀恵ちゃんがんばれぇ~」


 紫乃も手を振っている。




 そして‥‥‥




 「由紀恵、待ってるぞ!」




 お兄ちゃんのその声を聴いて私は試験会場へと入って行く。

 私は絶対この桜川東高校に受かるんだ!





 だってここにはお兄ちゃんがいるんだから!!!!

  






 ~ 私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!? ~


 ―― Fin ――


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