9-4インフルエンザ蔓延だよ?
長澤由紀恵15歳(中学三年生)。
根っからのお兄ちゃん大好きっ子。
そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥
「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」
ここから始まるラブコメディー。
さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!
紫乃も上手く行ってるかぁ~(由紀恵談)
お兄ちゃんお容態はその後一週間過ぎてもなかなか良くならなかった。
通常薬を飲めばインフルエンザでも一週間もすれば治るのになかなかその傾向にならない。
「お父さんも熱が出たみたいで今日は会社お休みするって?」
「そうなのよ、だから由紀恵も注意してねもうじき入試だからね」
お母さんとリビングでそんなことを話していた私はまだその時にその重要性に気付いていなかったのだった。
* * * * *
「やっと落ち着いて来たよ。これも由紀恵の看病のお陰だ。ありがとうな」
どうやら熱も下がり落ち着き始めたお兄ちゃんだったけど今度はお父さんが酷い状態だ。
お医者さんに行ってもどうもなかなか治らない。
インフルエンザじゃ無いのかもしれないってお医者さんは言っていたらしい。
「でもお兄ちゃんが回復してよかった。本当に心配したんだからね?」
「悪い悪い。でもどんどん回復しているからもう大丈夫だよ。それより由紀恵、お前の方が要注意だぞ?」
「うん分かってるよ。手洗いうがいは勿論タオルの共用とかそう言うのもしない様に要注意しているし、除菌スプレーで部屋も洗浄してるもん」
私はそう言って除菌スプレーを取り出しお兄ちゃんに見せる。
ちょうどこの後リビングの除菌をするつもりだった。
お父さんも今日で寝込んで二日目。
お父さんは大事を取ってお母さんと一緒の寝室から一階のリビング横に和室で寝ている。
なのでリビングは特に念入りに除菌しなければならない。
早いところ抗生物質が効いてくれないかなぁ。
あたしはそんな事を思っていた。
* * * * *
「ねぇねぇ由紀恵ちゃん、今巷ではインフルエンザが大流行しているけど、どうやら今までのインフルエンザとは違って新型の物みたいだって~」
学校で紫乃は目を輝かせてそんな話をしている。
いや、新型も何も受験生の私たちにとって脅威以外の何者でもない。
「紫乃、何嬉しそうにしているのよ? そんな事よりどうなのよ?」
「へへへぇ~、見てみて通っている塾の合格率判断!」
紫乃に渡されたそれは「桜川東高校合格率八十三パーセント」となっていた。
「やったじゃん紫乃! これはかなり期待できるじゃない!?」
「へへへぇ~、これでうまくいけばまた由紀恵ちゃんと一緒の学校だね~」
ものすごくうれしそうにしている紫乃。
私は少しほっとしてこの先の明るい未来を待ちわびるのだった。
* * *
「そっかぁ、吉野君も大変ね」
「はい、でも先輩も気を付けてくださいよ? もうじき受験ですからね」
もう引退したけど生徒会室に用事があって立ち寄ったら吉野君がいた。
今は陽子ちゃんが生徒会長で吉野君が副生徒会長。
他にも数人が生徒会に入り私の役目もちゃんと引き継ぎ安心だった。
「でも今回のインフルエンザって大流行よね? 危うく三年生のクラスも学級閉鎖になる所だったわ」
実際には隣のクラスは閉鎖されたけど学年全部では無かった。
逆に吉野君たち二年生は学年全部が一週間閉鎖され症状のある子は医者に行くよう指導されていた。
「なので生徒会も手洗いうがいやマスクの装着、人込みを避けるなどの指導をしなければならないので大忙しです。それと、これは噂ですけど今回のインフルエンザって新型らしくてやたらと感染力が強いらしいですよ? 潜伏期間もやたらと長いらしいので本当に注意してくださいね」
吉野君にそう言われ私はにっこり笑って答える。
「うん、ありがと。十分に注意するね」
そう言って私は生徒会室を後にしたのだった。
* * *
「それでどうだった?」
『うん、ばっちりだよ! 最悪私立はこれでいけると思うね~。それより由紀恵ちゃんって本当に私立受けないの?』
「うん、お金の無駄だし桜川東以外に考えてないからね」
『そっかぁ、じゃあ来週の公立の試験まで体調管理で要注意だね~』
「そうだね、紫乃も十分に注意しなさいよ?」
『うん分かったぁ~ じゃ、お休みね~』
ぴっ
無料通話を切ってSNSのチェックをする。
そうかぁ、紫乃も上手く行っているかぁ。
来週にはいよいよ桜川東の入学試験がある。
これでやっとお兄ちゃんと一緒の高校へ行ける。
私はそう思うと嬉しくなり明るい未来を妄想するのだった。
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