6-8一大事だよお兄ちゃん
長澤由紀恵15歳(中学三年生)。
根っからのお兄ちゃん大好きっ子。
そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥
「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」
ここから始まるラブコメディー。
さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!
なんですってぇっ!?(由紀恵談)
私は新田泉一郎会長から渡された手紙の内容を見て思わず絶叫してしまった。
だって、有り得ない!
こんな事が起こるなんて信じられない!!
あろう事かこれは、これはぁっ!!
「なんで会長が私にラブレターをっ!!!?」
思わず校門を見るけど勿論新田会長はもうそこにはいない。
私はわなわなと震えるその手元の手紙をもう一度読み返す。
―― 長澤由紀恵様へ ――
僕、新田泉一郎は君が好きだ。
どうか考え直して僕と一緒に県央高校へ来てもらえないだろうか?
君となら生涯一緒にやっていけると実感している。
君の実力ならば一般入試でも県央高校へは十分受かるはずだ。
君の良い返事を期待している。
新田泉一郎より
私は目の前にあるこの達筆な筆文字一字一句に間違いない事を確認する。
そして今まででついた事が無いほどの大きなため息を吐いて家路につくのだった。
* * *
「お兄ちゃん、ちょっと相談が有るのだけど‥‥‥」
お兄ちゃんの部屋の扉をノックしてから私は部屋に入る。
お兄ちゃんはベッドの上でスマホのゲームをやっていた。
むう、呑気に。
「おお、由紀恵。どうした?」
「うん、実はお兄ちゃんに相談したい事が有って‥‥‥」
またまたお風呂上がりの私はそう言ってお兄ちゃんの横に行く。
同じくベッドに腰掛けもじもじとする。
あ、ちなみに今日はちゃんとブラして髪の毛だってタオル巻いているから透ける事は無いしもうパジャマだ。
「実は、その、学校の同級生から‥‥‥ ラ、ラブレターもらったの‥‥‥」
「へえぇ、それはおめでとう。それで?」
「ちょっとお兄ちゃん、そこはおめでとうじゃないでしょう? 可愛い妹が他の男からラブレターもらったんだからもっと動揺してよ!」
お兄ちゃんは真剣にそう言う私にきょとんとしながら「なんで?」等と聞いてくる。
「お兄ちゃん!」
「いや、だってラブレターもらったんならうれしいんじゃないのかよ? 何故怒る?」
「お兄ちゃんのバカっ! 困っているから相談に来ているのじゃない!」
うううぅ~っ!
唸る私にお兄ちゃんは両手をあげて争う気が無い事をアピールする。
「分かった分かった、それは一大事だ、で、どうしたいんだよ?」
「う゛~、おざなり。それで、もらった相手はうちの生徒会の生徒会長なんだけどね」
お兄ちゃんはしばし上を見て記憶を呼び起こす。
そして手をポンと打って「ああ、あの礼儀正しいやつか!」とか言っている。
いや、お兄ちゃんあの時の会長は対外用の猫かぶりだから!
「だったら悪い相手じゃないんだろ?」
「お兄ちゃん、本気で相談に乗っているつもり?」
イラっと来た私はまじまじとお兄ちゃんの顔を覗き込む。
「と言われてもなぁ、だったら断りたい理由でもあるのか?」
「有るわよ、私、好きな人がいるんだから‥‥‥」
私はそう言って少し顔を赤くする。
そしてじっとお兄ちゃんを見る。
目の前にその人がいるのだ。
小さい頃からずっと好きだった人。
いつもいつも優しく私の事を大事に思ってくれる人‥‥‥
「お兄ちゃん私はね‥‥‥」
そして私はお兄ちゃんに話し始めるのだった。
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