5-8由紀恵の相談室
長澤由紀恵15歳(中学三年生)。
根っからのお兄ちゃん大好きっ子。
そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥
「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」
ここから始まるラブコメディー。
さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!
お兄ちゃん‥‥‥
私は‥‥‥(由紀恵談)
「実は高橋達からラブレターなんて物をもらったんだ」
私はお兄ちゃんの部屋でそう話し始められた。
お兄ちゃんは既に開封済みのラブレター三つを取り出した。
「まさかこんな俺にラブレターが来るなんて思いもしなかったし、あの三人がそんな気持ちでいたなんて思いもしなかったよ」
私は黙ってお兄ちゃんの言葉を聞いている。
本当はそのラブレターは全部で四つのはず。
でも最初に渡したラブレターは私が回収した。
だから三つになっている。
「正直困っている。同じ日に同じ時間に別々の場所に来てもらいたいって」
それはそうだ。
ハッキリとその日時に来てもらい正式に告白するのだから。
そして約束の時間に来てもらえないと言う事はその気がが無いと言う事。
残酷でありながらその分来てもらえれば付き合ってもらえる勝算はとても高くなる。
言い出した高橋静恵の何とも潔い選んでもらう方法だ。
「それで‥‥‥ 私に相談って何?」
「うん‥‥‥ 正直あの三人の誰か一人の所へなんて選べないって話なんだ。どうするべきかな?」
ストレートに悩みを打ち明けてくれるお兄ちゃん。
私は一瞬息が詰まる。
呼吸困難になるのを悟られないように何とか平然を保つ。
お兄ちゃんは誰か選ぶつもりだろう。
だからだ誰か一人の所へ行くのだろう。
そしてそんな事を妹である私に相談している。
「‥‥‥お兄ちゃんは誰かと付き合うつもりなの?」
「正直どうしたら良いのか分からない。三人は嫌いじゃない」
私は思う。
お兄ちゃんは優しいのだ。
だから選ぶなんて事が難しいのだ。
でも今回は違う。
向こうは本気なのだ。
だからこちらも本気で向かい会わなければならない。
「‥‥‥それでもお兄ちゃんは答えを出さなきゃだめだよ。高橋さんも矢島さんも泉さんも真剣なのだからね?」
「‥‥‥ああ、それは分かっている」
お兄ちゃんはそう言って黙ってしまった。
短いのか長いのかその沈黙の時間は私にとって苦痛以外の何物でもない。
いっそ行きたい相手でもお兄ちゃんから言ってもらいたいくらいだ。
「矢島は‥‥‥」
私はハッとなりお兄ちゃんの顔を見る。
まさか後輩の矢島紗江を選ぶつもり?
「矢島はずっと俺に対して好意なんて無いと思っていた。高橋だって仲の良い友達だと思っていた。泉はいつも一人で寂しそうだから声をかけてら素直な子だった」
私はお兄ちゃんの次の言葉を待っている。
「向こうが真剣なのは分かっているよ、手紙の内容からみんなで話し合ったみたいだしね‥‥‥」
一旦そこで言葉を切ってお兄ちゃんは手紙三通を見る。
「俺なんかには過ぎたものだな‥‥‥」
「そんな事無いっ! だってお兄ちゃんはステキだもの!!」
思わず私はそう言ってしまった。
「由紀恵?」
「あ、ごめん‥‥‥ お、お兄ちゃんが一番一緒にいたいと思う人の所へ行けばいいと思うよ。ごめん、私ちょっと気分が悪くなって来たから‥‥‥」
もう我慢出来ない。
これ以上話したらお兄ちゃんの前で泣いてしまう。
私はそれだけ言って慌ててお兄ちゃんの部屋を出て行くのだった。
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