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私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?  作者: さいとう みさき
第五章お兄ちゃんは知っちゃいけないよ!?
33/75

5-7揺らぐ心

長澤由紀恵15歳(中学三年生)。

根っからのお兄ちゃん大好きっ子。

そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥


「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」


ここから始まるラブコメディー。

さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!


キノコもタケノコも好きだよ?(由紀恵談)


 お兄ちゃんはその日ものすごく複雑な顔をして帰って来た。



 「ただいまぁ‥‥‥」


 「‥‥‥お帰り、お兄ちゃん」


 お兄ちゃんは私の返事に何も言わず二階の自分の部屋に行ってしまった。


 

 私は何でお兄ちゃんが部屋に行ってしまったか知っている。

 今日は約束の日。

 そう、高橋静恵たちが話し合ったラブレターをお兄ちゃんに渡す日だ。


 私は何となくリビングでテレビを見ている。

 でもテレビで何をやっているのかなんて全然頭に入ってこない。



 せっかく書いたのに結局私だけはあのラブレターを渡せなかった。

 

 

 だって兄妹だよ?

 どんなに好きでも私を選んでもらえることは無いんだよ?


 それなのに私は高橋静恵や矢島紗江、泉かなめたちと張り合ってお兄ちゃんに私を選んでもらおうとした。



 「もし選んでもらったって何にもならないじゃない‥‥‥ 私のバカ‥‥‥」



 今更ながらにその現実が私に襲ってくる。




 私はお兄ちゃんが好き。



 その気持ちは間違いなく本物。

 お兄ちゃんの為なら私は‥‥‥





 「なあ、由紀恵ちょっと良いか?」



 「うぴゃぁっ!!」


 心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた!!



 リビングでいきなり声をかけられた私は文字通りびっくりして跳ね上がりソファーからずり落ちた。



 「そんなに驚く事かよ? それで、由紀恵今いいか?」


 「ご、ごめん、今テレビが忙しいから後にして‥‥‥」


 そう言って私はテレビを見ると秋場所のお相撲さんの中継が目に入った。


 「秋場所ねぇ‥‥‥ 分かった。悪かったな邪魔して」


 お兄ちゃんはそう言って「出かける」と言ってリビングを出て行く。


 「あっ、お兄ちゃん何処へ?」


 「ん? ちょっと考え事でぶらぶらとね」


 そう言ってそのまま出て行ってしまった。

 私は本当はすぐにでも追いかけて行きたかったのに動けずまたテレビに目を向ける。



 『おおっとぉ~! これは突き落とし!』



 テレビの解説はなんかよく分からない解説をしている。

 私は大きくため息を吐いたのだった。

 


 * * * * *



 結局お兄ちゃんは暗くなる前には帰って来た。


 「ほい」


 ソファーでやっぱりテレビの内容なんか頭に入っていない私にいきなり何かを頭の上に乗せてくる。


 「お兄ちゃん?」


 乗せられたものを見て私は目を輝かす。

 

 『秋限定コ〇ラのマーチ、マロン風味』



 これ、可愛いし私の大好きなお菓子の一つだ!!



 「あ、ありがとうお兄ちゃん?」


 「ん、どういたしまして」


 お兄ちゃんはそう言って洗面所で手洗いうがいを始める。


 私は大切にお菓子を両手で抱えたまま何となくそれについて行ってその様子を見る。



 「なあ、由紀恵。やっぱりちょっと相談に乗ってもらいたいんだけどいいかな?」


 「‥‥‥うん」



 私はお兄ちゃんが顔洗ってタオルで拭いているのを見ながら視線を外す。

 きっと高橋静恵たちの事だ。

 

 分かってはいる。

 そして本来ならその贅沢な悩みに祝福を述べ妹としての見解を踏まえアドバイスするべきだと言う事も‥‥‥





 お兄ちゃんは顔を拭き終わり私を見るのだった。


 


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