9 途中 駒形さんと
木嶋さんとの時間を過ごした二日後の事だった。
今度は駒形さんから連絡がきた。黒の猫のアイコンそれが、駒形さんの◯インのアイコンだ。
「あんた、今日、暇でしょ?」
なんとも失敬な!俺だって一応用事はある!……
家族は共働きで、家族との旅行とかの予定ではないけど!個人的には予定はある!……とか思いながら、駒形さんに返信を送る。
「まぁ、暇だよ」
「そう、なら、今夜私の家に来て、夜ご飯でも食べない?」
なんと言う誘いだ。まさか、女子の家にお邪魔して夜ご飯を頂けるのか……
「別に構わないけど駒形さんのお家の人に迷惑じゃない?」
「親は、なんか用事があるらしいから心配はいらないわ」
と言う事で、俺は駒形さんの家に訪問することになった。初めて来る女子の家。物凄く緊張する。恐る恐るインターホンを鳴らす。すると、誰かが階段をどたどたと下る音が聞こえてきた。そして、扉が勢い開くと
「こんばんわ!」
見た目は小学生一二年生くらいで、ショートヘアの女の子が出てきたんだが……
もしかして、来る家間違えたのだろうか?
すると、リビングらしきところの扉が開いた。
そして、猫のエプロン姿の駒形さんが来た。
「待っていたわ……さぁ、こっちに来てちょうだい」
「だって!さぁ、早く早く!」
どうやら、家は間違っていなかったようだ。
良かった……
女の子に手を引っ張られながら、リビングに入ると、カレーの匂いが部屋中に広まっていた。そして、駒形さんを見ると、駒形さんはカレーが入っている鍋をかき回している。そして、駒形さんは俺を見るとこう言った。
「もう少しで完成するから、そのソファに座って待っていて」
「わかった」
作業的にも完成に近いだろうし、お言葉に甘えよう。それにしても初めての女の子の家。それも、駒形さんと駒形さんの妹と一つ屋根にいるこの状況。これじゃあ、まるで家族みたいじゃないか!
「ねぇねぇ!里奈とあそぼ!?」
目をキラキラと輝かしている里奈ちゃん。何もないピュアな瞳で、じっと見つめてくる。か、可愛すぎる……
「あっ、紹介するね。その子は私の妹、駒形里奈。わがままで手が焼くけど少しの間だけ相手してくれると助かるわ」
「もぉ!お姉ちゃん!黙ってカレーを作ってて!それよりもお兄ちゃん!私とゲームしよう!」
「じぁ、カレーが出来るまで遊ぼうか!」
「ヤッタ!じぁじぁ!最近買ってもらったゲームをしようよ!」
「うん!いいよ」
「里奈、そのお兄さんはお客さんだから、あまりわがままを言わないで」
「はいはい!分かっている!」
ゲームコントローラーを取り出し、俺にコントローラーを渡すと、里奈ちゃんは俺の横に座る。
そして、俺ににっこり笑うとこう言った。
「里奈、絶対に負けないから!」
「よし、じゃあお兄ちゃんも本気で行くから!」
売られた喧嘩は買う。(ゲームなら)たとえ小さい子供が相手でも手加減はしない。俺は里奈ちゃん相手に本気でやった。普段はパソコンゲームがメインでこう言うテレビゲームはあまりやらないから勝てるかは分からないけど、ゲーム内容的にはサバイバルゲームに近い。だからその感覚と同じようにやれば
「よし勝った!」
「……」
やけにおとなしい。俺は里奈ちゃんの方をチラリと見た。すると、里奈ちゃんが今にも泣きそうな表情をしているではないか!やっぱり、少しは手加減をした方が良かった?
「和真。そんな奴、気にする必要はないから。そんな事よりも早くご飯食べましょ」
「えっ、でも里奈ちゃんが……」
「いいの、ほら里奈も早くしなさい」
「……いらない」
「あっそ、ならあんたの分は無しね」
とだけ言い残し、駒形さんは食べ始める。
特に会話はなく、なんか啜り泣く音が聞こえてくる。
「どうしたの?食べないの?」
「あっ、うん食べるけど……」
俺はソファーの方を見た。まだそこには、里奈ちゃんが座っている。やっぱり、あの時わざと負けるべきだった。
「あいつの事は気にしなくていいから」
「えっ、でも……」
「いいのいいの。いつもゲームに負けるとあんな感じだから。全く、自分から誘っておいて負けたらこれだから。ほんと困るわ」
すると、里奈ちゃんが動いた。目を真っ赤にさせ、怒っている表情を見せ、ゲーム機を片手に駒形さんの方へ走ってきた。そして、駒形さんの左肘にゲーム機を振り下ろす。
「いたっ!何するのよ!」
「おねーちゃんなんて嫌い!バーカー!」
「馬鹿で結構!」
駒形さんはそう言うとゲーム機を取り上げた。
里奈ちゃんは涙をボロボロと流し、大声でこう言った。
「里奈のゲーム返してよ!」
「やだ。このゲームは捨てるから」
「なんでよ!」
大声で泣き叫ぶ里奈ちゃん。なんだか、見ている俺が心が痛む。
「あの、駒形さん。俺からもお願いします。そのゲーム里奈ちゃんに返して……」
「和真。里奈を甘やかせないで」
「ごめん……」
それから里奈ちゃんはずっと、駒形さんの横で大泣きをしていた。「ごめんなさいーもう、おねぇーちゃんを叩かないからゲーム機返して下さーい!」と泣きじゃくていたりしていた。しかし、駒形さんは淡々とカレーを食べながらこう言い、里奈ちゃんの言葉を突き放す
「そう言って、何回も返してあげたよね?だけど、結局、約束は守れなかったじゃない」
「今度は守る!守りますから!返してください!お願いします!」
駒形さんの服を掴み、駒形さんを揺らす里奈ちゃん。駒形さんはカレーを食べようとするが、スプーンが揺れてカレーがボタボタ落ち、うまく食べれない。おまけに落ちたルーが服に飛び散っていた。それに対して駒形さんはついに堪忍袋の尾が切れた。
「うるさい!ご飯もまともに食べれないじゃん!」
「ごめんなさ〜い!」
ぼたぼたと涙を里奈ちゃん。最初から俺が手加減してあげたらこんな事にはならなかった……
「駒形さん!俺からも!ごめん!だから里奈ちゃんにゲーム機を返してあげてくれないかな?」
「はぁ……」
深いため息をついた駒形さんはゲーム機を里奈ちゃんの方へ渡した。
そして、里奈にこう言った。
「いい!今度こそ、ゲーム機で人を殴らない!今度約束破ったら次はないからね!分かった!?」
「うん!」
こうして、ゲーム機の無事に返してもらい里奈ちゃんも泣き止んだ。
そして、仲良く夕飯を食べるのであった。
その後、
「ごめん和真。お見苦しい所を見せてしまって」
「いやいや、悪いのは俺だよ。あの時にもっと手加減してあげるべきだった」
「」




