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8 ゴールデンウィーク

季節は進み、ついに五月。今日からゴールデンウィークだ!さて、今日から徹夜漬けで、オンラインゲームの周回をしよう。こう言う特別な日はイベントも熱い。俺は、いろんな準備に取り掛かる。そんな時、俺のスマホから通知が来た。


「今度の子供の日、予定空いているかな?」


 ショートケーキのアイコンに、ローマ字でYUIと表記されているのは、木嶋さんのアカウントからだ。木嶋さんから続けて、こう言う内容がきた。


「実は、良く来てくれる常連のお客さんが、私に遊園地のペアチケットをくれたの。だから良かったら一緒にどうかな?」


 本当は、家でゆっくりオンラインゲームをやりたい。だけど、木嶋さんは家の手伝いで忙しい中、俺を誘ってくれている。


「是非!一緒に行きましょう!」


 こうして、木嶋さんと約束をし、今度の子供の日に遊園地に行くことになった。


――子供の日――


俺は今、待ち合わせのバス停前で待っている。

集合時間より、少し早く来てしまった。仕方がない、ベンチに座って、スマホゲームでもしてよう。


――ゲームをはじめ数分後――


「おはよう和真君」


 顔を見上げるとそこには木嶋さんがいた。こうして、休みの日に会うのは初めてだ。当然、私服も見るのは初めてだが、私服姿も可愛い。


「どうしたの?なんか変?」

「そんな事ないよ!ただいつもと違うから、つい見惚れてしまっただけ!」

「そっか……なら、一つ聞いていいかな?」

「はい……なんでしょうか?」


 すると木嶋さんは一歩後ろに下がり、くるりと一周回るとこう言った。


「私の今日の服、似合っているな?」

「はい!とても似合っています!」

「そっか……ありがとう!」


 木嶋さんは満面な笑みを浮かべた。その姿が物凄く可愛いくて、心を撃ち抜かれそうだ。そうこうしているとバスが来た。俺達はバスに乗り、いざ遊園地へ!て言うか、バスの中が思っていて混雑していて、座る場所がもう、一二箇所しかない。もしかして、みんな、最終駅の遊園地に行くつもりなのだろうか?そして、俺の予想は的中しているだろう。ほとんどの乗客は、降りず、ついに終点まできてしまった。これからこの人達も遊園地に行くのか……まぁ、ゴールデンウィークだから仕方がないけど……

遊園地に入るにもたくさんの人が並んでいて、人気なアトラクションは一時間待ちなんてざらにある。


「和真君、あれやらない?ちょっと待ち時間長いけど……」


 木嶋さんが指をさすのは絶叫ジェットコースターだ。確か、この遊園地の目玉アトラクションだ。

うわ……ものすごく行列が出来ている。時間を見ると、一時間半待ちになっている。まだ比較的に空いているほうかも知れない。テレビでここの特集が放送されていた時には、三時間半とか待ちになるとか、聞いていたから、今の状況はましだろう。よし!並ぼう!


「よし!木嶋さん。他のところにいきましょう!」

「やっぱり、混んでいるもんね……うん!他のところに行こう!」


 いいえ、違います……ごめんなさい木嶋さん。俺は絶叫系のアトラクションがとても苦手なんです。

嘘をついた罪悪感を抱えながら、ジェットコースターの乗り場から離れていく。なんか、心の中にモヤモヤが残る。木嶋さんが乗りたがっていたのに、これで良いのだろうか?……


「やっぱり、乗りましょう……」

「だけど、混んでいるよ……」

「それでも、やっぱり乗りたいです!これで、木嶋さんといい思い出が作れるなら!」


 こうして、俺と木嶋さんはジェットコースターに乗ることになった。長い待ち時間。さて……何か、木嶋さんに話し掛けないと……


「きょ、今日は、いい天気になって良かったね」

「そうだね!ほんと、雲もない快晴で良かった!」


木嶋さんは腕を上に伸ばした。伸びしている木嶋さんも可愛い。じゃなくて木嶋さんが退屈しないように会話を広げないと……さて、次の会話は


「きょ、今日の朝は何を食べた?」

「今日はねー、久しぶりに和食料理を食べたよ!いつもはパンとかで終わりだけど、今日はなんか、早く起きてしまったから、家族分の朝ご飯を作ったんだ」

「すごい、自分でそんな事が出来るなんて」

「そんな大したことじゃないよ。実際、お父さんとお母さんは私の人数分以上にケーキを提供しているわけだし……」


 なんて言うが、それでも俺は凄いと思う。きっと朝早く起きて作っている。それも家族全員分……俺が爆睡している間に……


「和真君?」

「あっ、うん。なんでも無い」


 その後、俺が必死に考えた話題を木嶋さんに振り、なんとかこの時間を退屈させないようにしてみせた。お陰様で木嶋さんの笑顔を沢山見れた。昔なら、手が届くはずもない雲の上の存在の人の笑顔をこんなにも近くで見られるなんて……ほんと夢のような時間で幸せだ。

 そして、待ち時間も圧倒間に過ぎとうとう俺達番が回ってきた。よりによって、ジェットコースターの最前列に座る事になってしまった。


「なんか、どきどきするね!」

「そうだね……」


 木嶋さん的には、ワクワクしているドキドキだと思うが、俺的にはちゃんと帰還できるか……その不安でこっちはドキドキだ。そうこうしているうちに発進のアナウンスが流れた。そして、ジェットコースターはスタートし、動き始めた。最初はゆっくり、坂を上っていった。そして、勢いよく駆け下り、駆け下りたスピードを維持しながら、くねくねと曲がっている……もう、ギブ……

そこからジェットコースターの記憶はほとんど、覚えてない。ただ単に怖かった。あと、吐きそう……


「大丈夫和真君?」

「うん、少し休憩すれば大丈夫……」

 近くのベンチに座り、木嶋さんは俺の背中をさすってくれている。せっかく、楽しい時なのに不甲斐ない俺なんかのせいで、こんな事をさせてしまって……



「ごめん、木嶋さん。こんな事でせっかく楽しい時間を奪ってしまって……」

「別に大丈夫だよ!それよりも、体調はもう大丈夫?」

「うん」

「なら、この後どうする?丁度、お昼ご飯を食べても良いころだと思うけど……」

「そうだね。ご飯でも食べに行きますか!」


こうして、体調も元通りに戻った俺は、木嶋さんと一緒にお昼ご飯を食べることに。そして、かれこれ探して、30分ほど、やっと飲食店に入ることが出来た。さすが、ゴールデンウィーク。飲食店を探すのにも一苦労だった。


「流石、ゴールデンウィークだけあって、どこも混んでいるね」

「そうだね。もしかしたら、白金君とお昼ご飯食べれないんじゃ無いかとハラハラしたよ」


と美味しそうにマルゲリータを一切れ食べる木嶋さん。「うーん美味しい!」と、とても美味しそうに食べている。


「はい、和真君におっそわけ!」

「あ、ありがとう!」


こうして、木嶋さんと楽しい昼食を過ごした。

そして、昼食を終えた後は、いろんなアトラクションを体験した。お化け屋敷に入っては、そのお化け屋敷の怖さに二人で絶叫したり、コーヒーカップに乗っては、ふざけてコーヒーカップをひたすら回してみたり、最後は夕日をバックに二人っきりの観覧車に乗った。


「今日は、ありがとう。すごく楽しかった」

「私も、すごく楽しかった。また機会があれば一緒に行こうね……」

「うん!」


今度は俺から誘えるようにしよう……

そう思いながら、俺はにっこり笑った。




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