78
「なら!今すぐ、その娘と別れて!」
と千聖が指さす相手は、駒形さん。
面白い冗談を……
駒形さんは俺の彼女。
いくら千聖の言う事でも、それはできない。
そんな千聖の発言に、駒形さんは不機嫌になる。
「はぁ?あんた何言っているの?」
ガタガタと貧乏ゆすりするところ、物凄く苛立っているのが伝わる。
何か、一言でも余計な事を言った瞬間、俺に苛立ちがやってきそうだ。
「だから、和君と別れてくれるかな?駒形さん日本語分かる?」
「それを言うならあんたでしょ?聞いていた?和真自身が言っていたじゃない。私が和真の彼女だって」
「それは今までのこと!今日からは、私の彼女になって貰います!」
と言うと、千聖は内ポケットから、何かを取り出してきた。
よくもまぁ、あそこまで駒形さんに噛みつくもんだ。
俺には到底出来ないことだ。
命がいくつあっても無理だ。
「これ!和君と交わした契約書」
と駒形さんに手渡す。
駒形さんはその契約書と言うものを読む。
「えっと、なになに。 ちさと と かずくんは、しょうらいけっこんし、せかいいち、なかよく、くらすことをちかいます! 〇がつ〇にち〇ようび」
すると、駒形さんは紙をビリビリに破く。
「ふん!くだらない!なにが契約書よ!こんなの昔話でしょ!」
すると、駒形さんは席を立ちあがり俺を引っ張り、腕に絡むとこう言った。
「いい、今は私が和真の彼女!そして、将来の旦那さんなの!あんたみたいな古参が入る場所はないの!」
「「分かったなら!どこか行きなさいよ!」」としっしと千聖を遠ざけようとした。
しかし、そんな事で食い下がるわけがない千聖。
千聖は俺を引っ張る。
「和君とは貴方よりも先に婚約の約束をしたの!和君のことを何も知らない、あんたこそしゃしゃり出てこないでくれる!?」
俺の左手に絡みつく千聖。
なんだか、不穏な空気が漂い始めてきた。
「離れなさいよ!和真が可哀想でしょ!ねぇ、和真、こんな古い中古品よりも私の方がきっといいよね?!」
「駄目よ和君!こんな性格悪女!和君も駄目になっちゃうし、将来の子供も駄目になっちゃうよ!だから、優しくて、可愛いこの私の方がいいよね?!」
「ふん!自分で可愛いとか!馬鹿じゃないの!この自意識過剰女!」
「あら、貴方より少なからず私の方が可愛いし、それに……ねぇ、和君!」
すると、千聖は俺の腕に絡み、それはそれはさぞご立派な胸を押し付ける。
千聖は笑った。
こ、これは確信犯だ!
「和君もこういう女性の方が好きでしょ?」
「えっ!」
男性ならふくよかな方が良いと思う人は多いはずだ。
勿論、俺もふくよか派だ。
「和真は、そんなふしだらなものよりも、こういう健全な方がいいわよね?」
素敵な笑顔で俺を見る駒形さん。
とても素敵な笑顔だが、この状況にその笑顔はすごく不気味だ。
ここは、駒形さんに頷くべきだろう。
でなければ、このあとなにが待ち受けているのか、想像するまでもない。
千聖には後で謝ろう!
「うん、そうだね……」
すると、右の脇腹から痛みがきた。
右を見ると、千聖がにっこり笑っている。
うわー……すごく可愛い……
「違うでしょ?和君。私の方がいいよね?」
「いや、これには深いわけが」
脇腹を強くつねられ激痛がはしる。
やっぱり、千聖に賛同しておくべきだっただろうか
「へーどういうわけなのかな?」
言えない。駒形さんが脅してきたからなんて言えない。
言った所で、駒形さんに適当に誤魔化させ、後で地獄が待っている。
それよりも近い、近い!千聖!
すると、次の授業が始まるチャイムがなった。
とりあえず、チャイムのお陰で助かった……
こうして、突如現れた俺の幼馴染 小手 千聖。
彼女の登場で、また俺の生活は日々変わるのであった。
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!




