65 もう、限界だよ……
関係が修復出来ないままついに1週間が経過してしまった。
――昼休み――
「よし!今日も頑張るぞ!」
と張り切る木嶋さん。
木嶋さんは俺を見る。
そして、俺の方に手を伸ばすとこう言った。
「さぁ!今日も行きますよ!」
とにっこり笑う木嶋さん。
以前の俺だったら、可愛いな~的な事を思って、デレデレしていたのかもしれない。
だけど、今回の木嶋さんには、そんな感情が芽生えない。
なぜなら、木嶋さんに出来た、生々しい複数の痣のせいだからだ。
これらは全て、葵さんに酷い暴力とかを受けた後だ。
それなのに、この1週間、葵さんに関係修復を図ろうと、葵さんに接触した木嶋さん。
そして、その結果がこの結果。
生々しい痣は日に日に増えて、もう見てられないほどだ。
「木嶋さん、もうやめましょうよ。はっきり言ってこのままじゃ木嶋さんが持ちませんよ」
葵さんと、木嶋さんの関係は、元通りにさせたい。
だけど、もう見てられない。
「和真君、ちょっといいかな?」
そう言って木嶋さんは、人気がない場所に俺を連れて行った。
「木嶋さん、どうしたの?」
「今だけ、こうさせて」
と木嶋さんは俺を抱きしめる。
そして、数分間、俺を抱きしめた木嶋さんはこう言った。
「よし!今日も頑張るぞ!さぁ!今日も葵さんの所に行こう!」
木嶋さんは俺の腕を引っ張り、葵さんの所へ向かった。
「はぁ……またですか……一体いつになったら諦めてくれるんですか?」
「葵さんと仲直り出来るまで」
「なら、一生無理ですね。私は、貴方と仲直りするつもりはありませんから。いい加減諦めてくれます?」
「私は、諦めないよ」
「あっそ、なら今日も虐めて、わからせてあげるから、放課後、いつもの場所に来てくださいね」
「うん、わかった」
と木嶋さんがあっさり言うと、葵さんは不機嫌そうにこう言った。
「ちっ、ふざけやがって……今日もたっぷり虐めてやるから」
と言うと、表情をがらりと変えて、満面な笑みを浮かべ、可愛い声でこう言った。
「放課後、楽しみにしていてくださいね!」
葵さんと別れた後、俺はもう一度、木嶋さんに忠告をした。
「やっぱりやめましょう!もう木嶋さんは限界ですよ!」
「私は、限界じゃない。まだ続けるつもりだよ」
そう言う葵さんだが、強気な言葉と裏腹に手が震えているのが見える。
やっぱり、木嶋さんは限界だ。
もう、無理に決まっている。
「もう、無理ですよ……諦めましょう」
「ならいいよ。私、一人で行くよ」
俺の腕を離した木嶋さんは、俺から離れていく。
木嶋さんは一人でも、行くつもりだ。
なぜそこまで、行くのだ。
このままでは、自分が駄目になってしまうではないか……
俺には木嶋さんの気持ちが分からない。
どうして、そこまで自分を蔑ろにしようとするのだ。
「それで、私に何をしろと言うのですか?」
「木嶋さんを助けてほしいです」
木嶋さんと別れた後、俺は今、彩華さんと話している。
情けない話、もう俺一人では、木嶋さんを救えない。
だから、彩華さんに頼んでみたが……
「それは私に関係ない話ですよね」
「そうかもしれません。だけど、助けてください!もう一度、皆が笑える日を取り戻したい!」
「そうですか……その理想が叶うといいですね。さぁ、もうじき授業が始まりますので、準備をした方がいいですよ」
と言い残し、彩華さんは俺の前からいなくなり、淡々と授業の準備をするのであった。
彩華さんの力を借りることは出来ず。
昼休みは終わってしまった。
そして、放課後
彩華さんの力は欲しかったが、こうなったら俺が止めるしかない。
あの二人はまた、屋上に来る。
そこで、葵さんの暴走を止めてみせ、木嶋さんを助ける。
「ちょっと!和真!」
俺の前で、腕を組み不機嫌な表情で、俺を見下ろすのは駒形さん。
そういえば、色々あったせいで、駒形さんの事を疎かにしていた。
駒形さんが不機嫌になるのも、納得できる。
「あんた最近、何をしているのよ!私を放置して、どこか行って!私の事が嫌いなの!」
それは違う。
駒形さんのことは好きだ。
駒形さんと一緒に、昼休みを過ごしたり、放課後は一緒にどこかへ寄り道したり、休日はどこかへ一緒にデートでもしたい。
だけど、今はそれが出来ない……
「ごめん、駒形さん。俺、駒形さんの事は好きだよ。だけど、今は駒形さんにかまってあげられないんだ」
「なにそれ、私より大切な事があると言うわけなの……」
「今は、そうかも知れない……」
「そっか、分かったわ……」
そう言い駒形さんは、俺の前からいなくなろうとした。背中姿の駒形さんに俺は、こう言う。
「今度、予定が空いたら、また一緒に過ごしましょうね!」
「楽しみにしているわ……」
そう言った駒形さんの声音は、どこか冷めていた……
ごめんなさい。駒形さん。
今は、駒形さんを巻き込む訳にはいかない。
だけど、葵さんの件が終わったら、必ず駒形さんと過ごして見せるから、待っていてください。
その後、二人が集まる屋上へと俺は向かった。
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