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「私と仲直りしたいなら、一つ条件がある」
そう言った駒形さんは俺達に指を突きつけた。
「条件?それってなにかな?」
木嶋さんがそう尋ねる。
すると、駒形が笑った。
「そうね、私が満足するようなことをして貰おうかしら」
駒形さんを満足させる?
それって、どんなことをして駒形さんを満足させるのだ。
「あの駒形さん。満足させるってどうした良いのかな?」
そう俺が聞いてみると駒形さんは俺を睨んだ。
そして不機嫌そうにこう言った。
「それは、あんたが見るけるものでしょ」
俺が見つける……
どうしよう……
わからない……
今になって思う。
俺は駒形さんのこと良く分かっていない。
駒形さんが好きなこと嫌いなことすら分かっていない状態だ。
もしかして、俺は駒形さんの彼氏に向いているのだろうか……
そんな不安が俺に襲いかかる。
「さぁ、和真。私を取り戻してみなさい!タイムメリットはこの夕日が沈むまでだわ!」
「わ、分かった……」
駒形さんを満足させるなんて、どうしたらいいのかわからない。
だけど、駒形さんは取り戻したい!
俺は駒形さんの手を取る。
「駒形さん、今からデートをしよう!」
「は、はぁ!?」
駒形さんは顔を真っ赤にし、驚いた。
けれど、そんなことに対してお構いなしである俺は、駒形さんを取り戻すため、ある場所に向かう。
「さぁ、駒形さん行こう!」
俺は駒形さんの手を引っ張りリードする。
「和真君」
「木嶋さん……」
木嶋さんが俺を見る。
そして
「頑張って!」
ここまで来られたのは木嶋さんのおかげである。
だから、このチャンスを逃さない。
木嶋さんがくれたチャンスは絶対に生かす。
「木嶋さん、ありがとう」
「和真君、頑張ってね」
木嶋さんに見送られた俺は駒形さんを連れ、ある場所に向かった。
「さぁ着いたよ!駒形さん!」
最初に駒形さんのデート先に選んだ場所。
それは……
「な、なんでここなのよ!」
駒形さんは俺の胸ぐらを掴み睨む。
どうやら、怒っているようだ。
折角、喜んでくれると思って連れてきたと言うのに残念だ。
だけど、駒形さんが怒るのもわかるような気がする。
なぜなら、俺達がいる場所。
そこは駒形さんが一部の人間しか教えていない、駒形さんが好きな場所だ。
勿論、駒形さんがこんなところを好きだったなんて知らなかった。
あの人が教えてくれなければ……
そう、木嶋さんがいなければ……
ここからは木嶋さんから聞いた話である。
駒形さんは最近、寂しさからか、猫を飼い始めようと考えていたらしい。
だが、家庭の事情で猫は飼えなかった。
だから、駒形さんは猫と触れ合える猫カフェに通いつめるようになった。
と、ある日木嶋さんに聞いた俺は、いつかその情報が役に立つと思い、前から猫カフェがある場所を探していた。
それがこんな早く役立つとは思っていもいなかったが……
俺は駒形さんをなだめながら、猫カフェに連れて行った。
最初は、「猫なんて嫌い!」とか、言っていたにも拘わらず、猫と触れあっているうちに猫にメロメロになった駒形さん。
駒形さんの表情を見る限り、駒形さんは上機嫌だ。
「満足したかな駒形さん」
駒形さんは咳ばらいをした後、こう言った。
「はぁ!?はぁ!?何言っているのかしら。私はまだまだ私は満足してないから!」
絶対に満足していると思うが、駒形さんが満足していないと言うなら次だ。
「分かった」
俺は駒形さんをある所に連れて行った。
「だから!なんでここなのよ!」
駒形さんは俺の胸ぐらを掴み、強く揺らす。
気持ち悪くなるからやめて欲しいものだ。
ちなみに俺が次に連れてきた場所は、スイーツバイキングが出来る店。
これも、木嶋さん情報だ。
どうやら、駒形さんは最近ストレスがたまり、ストレス発散のため、スイーツを食べるようになったらしい。そして、スイーツにドはまりし、体重もみるみるうちに増えていった。
それを木嶋さんに相談したらしい。
で、その情報を俺は木嶋さんから聞き、今に至るということだ。
体重はともかく、駒形さんがスイーツが好きだったというのは意外だ。
駒形さんは和菓子とか好きそうなイメージだった。
駒形さんは美味しそうにスイーツを食べる。
そこからはとても幸せそうな顔をしている。
これで、駒形さんの体重は増えるが、俺には関係ない。
そして、満足そうに食べ終わった駒形さん。
「どうだった?美味しかった?」
うぅん!と咳ばらいをした駒形さんは腕を組み、偉そうにこう言った。
「まぁまぁかしら」
「そっか……」
絶対に満足していると思うが、駒形さんがそう言うのなら仕方がない。
もう、夕日が沈む。
時間切れだ。
俺は駒形さんを取り戻せなかった……
悔しさからか、俺の目からは涙のようなものがこみ上げてくる。
俺の事を思っていてくれた女性の事を俺は知らな過ぎだ。
情けない……
「う、嬉しかったよ。和真」
「えっ?……」
俺は駒形さんの方を見る。
すると、顔を真っ赤にした駒形さんがいた。
「だから、嬉しかった。その、私のためにここまでのことをしてくれたなんて……嬉しかった。だからその、考えてあげてもいいかしら」
「それってもしかして」
鼻を鳴らした駒形さんは腕を組み、こう言った。
「それ以上は言わないから!」
こうして俺は駒形さんを取り戻すことに成功した。
だけど、今回のことで課題も出来た。
俺はもっと駒形さんの事を知る必要があるということだ。
駒形さんが好きなこと、駒形さんが嫌いなこと、駒形さんが喜ぶことそれらすべてを今から知る。
そして、駒形さんが俺の彼女となったら、俺は堂々と駒形さんの彼氏だと名乗れるようにしたい。
だがそれは駒形さんだけではない。
木嶋さん、これから取り戻す彩華さん。
そして、葵さん。
この人達の事をすべて俺は知る。
そして、この人達が俺の彼女になっても、俺は彼氏だと胸を張って名乗りたい!
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!




