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「駒形さんこれは……」
「あら言ったじゃないこれが私のお願いってね!」
綺麗なウインクを決めた駒形さんは今、とても機嫌がいい。
多分、駒形さんがお願いした「私に付き合って」と言うお願いを聞いて貰えたからだと思う。
「それより、どこ行きたい!?」
「どこでもいいけど……」
「どこでもはなし!」
顔を膨らませ、睨みつけてくる駒形さん。
こんな姿は初めて見た。
普段の表情は、如何にも「怒っています?」と聞きたいほど機嫌が悪そうな表情をしているくせに、今はちゃんとした表情をしている。
しかも、普通に可愛い。
他の男子もさぞ一目惚れさせそうだ。
「なにぼーっとしているのよ!ほら行くよ!」
駒形さんが俺の手を握り引っ張る。
その勢いで俺はバランスを崩しそうになる。
「こ、駒形さんどこに?!」
「ひ・み・つ・!」
駒形さんはぐいぐい俺の手を引っ張る。
そしてある時には電車に乗せられた。
一体、どこまで行くのやら……
そう思っていると、突如でかい建物が視界に写ってきた。
そして、先導していた駒形さんが振り返った。
「さぁ!着いたわ!」
「ここは……」
駒形さんが連れてきた場所。
それは、つい最近できた、大型ショッピングモールだ。
「さぁ!私のショッピングに付き合って貰うわよ!」
駒形さんはやる気に満ち溢れている。
もしかしたら、今日の俺はへとへとになるかも知れない……
そうこうしているうちに駒形さんが俺の手をとり走り出す。
「ほらほら、ぼっとしないで行くよー」
駒形さんはまるで子供のように楽しそうだ。
俺と駒形さんは
「どう?楽しかったでしょ?」
その質問に俺は思う。
「全く、楽しくない」と……
駒形さんはご満悦かも知れないが俺は、駒形さんの荷物持ちをする羽目になっている。
だから、楽しくない。
「ちょっと和真!なんか言いなさいよ!」
「あっ、うん。俺も楽しいよ……」
良かった。本音が漏れていたのかと思った。
俺と駒形さんは色んな店を回った。
時には、駒形さんの服選びに付き合わされたりし、ある時には下着ショップまで行こうとした。
さすがに俺はそこには入らなかったが、なんだか恥ずかしい思いをした。
こうして駒形さんとのショッピングも終わりを迎え、最後にご飯を食べようと言うことで、なにかいいお店屋をさがすこととなった。
「ねぇ、どこにする?」
「そうだね……」
時刻は今、5時を迎えたところ。
今日は休日と言うこともあってどこも行列ができている。
そのため、俺達は入れない状況だ。
「和真ー。私お腹空いたーもう、動けないー」
子供のように駄々をこね始めた駒形さん。
こんな姿も初めて見る。
だからこそ怖い。
例えばこの後、駒形さんが「おんぶして!」的なことを言ってきたら、俺はつぶれてしまう。
だからこそ、早く店を見つけて、駒形さんにやがままを言わせないようにしなければならない。
「駒形さん、あのお店はどうかな?」
俺が指差すところも混雑しているが、駒形がわがままを言わないためのやけくそだ。
けど、駒形さんは……
「嫌だ!混んでる!」
「じぁ、ここは?!」
「嫌だ!ここも混んでいる!」
「じぁ、ここ!」
「混んでいる!」
口を開けば「混んでいる!」としか言わない駒形さん。これではここでご飯を食べるなんてことは出来ない。
俺はもう疲れた。
「じゃあ、ここは……」
結局、最初のお店に戻ってきてしまった。
今までの時間がすべて無駄になった。
そして駒形さんは……
「嫌だ!混んでいる!」
駒形さんはついに地べたに座り込んだ。
そして
「私疲れた!和真おんぶ!」
俺が思っていた通りになった。
災厄だ……
そう思った瞬間だった。
「か、和真殿と駒形殿……どうしたここに……」
俺はその声がした方を見た。
そして俺は思う。
いや、どうしたお前がここにいるんだと……
なぜならそこにいたのは、あの、西園寺 彩華だったからだ。
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