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「あんた、本当にそれでいいの?」
それでいい?
それしかないだろう。
お前らが、俺を信じてくれなかったから、俺は一人で学校生活をするようになったのだろうが……
「じぁ、この状況をどうにか出来るのかよ……」
駒形さんには無理に決まっている。
なにせ、俺を救う証拠がない。
それは本人も分かっているはずだ。
それなのに……
「えぇ、出来るかも知れないわ」
俺の思っている答えとは違う答えを出してくる駒形さん。
その態度、その感情のない声音。
腸が煮えくり返るほど腹が立つ。
俺を馬鹿にしているにか思えない。
「そんな事よりもあんたここに座りなさい」
突如、駒形さんは俺が元々いた場所に座るように促してきた。
「断ったらどうする?」
俺は座るつもりはない。
駒形さんとはこれ以上、関係を持つつもりはない。
「別に構わないわ。だけどあんたは一生そのまま。それでもいいのかしら」
駒形は俺を挑発しているのか?
それともなにか、意図があって俺に座れと言っているのか?
俺は迷った。
もし、駒形の言う通りに座ったら俺の免罪は晴れるのだろうか?
それとも、ただ駒形は俺と居たいだけ……
そんなはずはない。
「ふん、案外素直じゃないの」
駒形さんが笑った。
これはどういう意味なのだろうか……
そんな俺を他所に駒形さんはただただお昼ご飯を綺麗に食べる。
俺はその光景をただただ、見ているだけだ。
これになんの意味があるのか分からない。
「口、開けなさい」
はぁ?……
その瞬間、何かが放り込まれた。
「どう、美味しい?」
それは美味しいに決まっている。
なにせ、駒形さんが俺の口にいれたのは唐揚げだ。
だけど、こんなことをして……
「なんなんだよお前!俺をからかうために俺を呼び戻したのか!」
食堂には他の生徒もいる。
きっと俺を見ているだろう。
だがそんなことは今は関係ない。
「いいえ、違うわ」
「なら、どうしてこんなことを!」
「そ、それは……」
駒形さんの様子が変だ。
なぜか、髪の毛をいじり始めたうえに顔が真っ赤になっている。
この場ではあり得ない反応だ。
まぁ、どういうつもりなのかは、知らないが俺はこれ以上、駒形さんとは居たくない。
俺は席を立ち上がる。
「さようなら、駒形さんもう、二度と俺に関わらないで下さい」
「ま、待ちなさいよ……」
駒形さんが俺の足をおもいっきり踏んだ。
その威力は女子とは思えない威力だ。
「ど、どうして私の気持ちに気づかないのかしら……この馬鹿……」
さっきよりも顔を真っ赤にし、ぶつぶつと独り言のように呟いた駒形さん。
「ごめん、よく聞こえない……」
「もう良いわよ!そんな事よりも座りなさい!」
なぜか、逆ギレされてしまった。
俺が怒っているつもりだったのになんだか、怒る感じでもなくなった。
俺は食事を黙々とする駒形さんを見ていたが、それよりも足が痛む……
「き、昨日はごめんなさい。証拠がないとか言ってあんたを見放したことちょっと後悔しているわ……」
急な謝罪をしてきた駒形さん。
意外だった。
駒形さんは人に謝りそうなタイプには見えない。
俺はつい、笑ってしまった。
「な、何が面白いのよ!」
「ごめん、ごめん」
なんだろうこの気持ち。
駒形さんに対して怒りの気持ちがあったのになぜか怒る気がしない。
なぜか、それは駒形さん新しい一面を見たからかも知れない。
駒形さんは普段から近寄りがたい存在だと思っていた。
だが意外に面白い生徒でツンとしているところが可愛い。
「そ、それでなんだけど私、あんたがやってないことを信じることにしてみる。そして、あんたを犯罪者にした人を暴いて見せたい。だから……」
「協力してくれるかな?……」
ずるい……
ずるいよ……駒形さん。
そんな俺を見つめてきたら断れない……
その後、俺は駒形さんと犯人探しをするようになった。そして、駒形さんと次第に関わることが多くなり、俺と駒形さんの距離は縮まる。
そして……
だけど、それはまだ先のお話である。
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