28 免罪
俺はなにもしてない……
けど……
「和真殿、これは一体どういうことですか……」
彩華は俺が悪いことをしたかのような疑いの目を向けてくる。
「いや、違う!これは葵が!」
必死に免罪を晴らそうと試みるが、言葉が出ない。
俺の頭は今、真っ白だ。
騒ぎに気づいた他のお客さんも俺を悪者のような目で見てきたり、陰口なようなものを叩いている人もいる。
被害者ずらをする葵は泣きながらこう言う。
「違う!私、なにもしていません」
その涙に、彩華は俺を完全に疑ってきた。
「和真さん嘘をついていませんよね?……」
「だから嘘ではない!俺が本当だ!」
自分を守るがあまり、彩華に声を荒げた。
これでは、逆に疑われるのに、俺はバカなことをしてしまった。
「西園寺、一体どうしたのよ!」
騒ぎに気づいた駒形と木嶋が来た。
すると、彩華は俺に冷めきったような死んだような目で説明した。
「見てください、和真殿はついに、女の子に手を出してしまったようです……」
「和真くん、それ本当?」
木嶋さんの目がうるうるしている。
きっと木嶋さんも俺のことを疑っている。
俺はなんとしてでも信用して貰うために必死で訴えかける。
「違う!俺はなにもしてない!」
「本当に?……」
「あぁ!信じてくれ!」
「なら、証拠でも出してみなさいよ」
その声は駒形だった。
駒形は今、必死で訴えかけている俺を見下すような態度をしている。
一方、俺は駒形の言葉になにも言えない。
だって免罪を晴らす証拠なんて……
「ふん、証拠がないなら私はあんたを信用出来ないわ」
鼻を鳴らした駒形は姿を消した。
どうせ、駒形の事だ。
証拠があったところで俺を完全に信じてくれる保証はない。
だから、あんな奴は無視。
それよりも……
「き、木嶋さんは俺のことを信じてくれるよね?!」
俺は今、どんな表情で木嶋さんに訴えかけているのだろうか?
きっと哀れもない表情をしているに違いない。
けど、木嶋さんだけでも信じてくれれば、それでいい。
「ごめん、私も今の和馬君を信用出来ない……」
その言葉に俺は希望と言う言葉を失ったような気がした。
木嶋さんはこの場から逃げるように消えた。
その時、一瞬、木嶋さんから涙のようなものが見えたが、俺は必死であった。
「い、彩華さんは信じてくれるよね?」
「私も鈴木君のことは信用出来ません。さようなら」
もう、俺の事が好きだった頃の彩華はいない。
完全に彩華は俺を悪者扱いし、他人のような振る舞いをしてくる。
「行きましょう、葵殿……」
「……」
彩華は葵を連れて行く。「ちょっと待ってくれ!」と俺はそう呼び止めたが聞く耳を持たない。
一方、葵は俯き、表情が見えない。
けど、葵は心のどこかで俺を笑っているに違いない。
その後、俺は彼女らとは距離を置くようになった。
奴らは敵だ。
俺の事が好きだと言いながらも、俺の事を信じてくれなかった敵だ。
もう、奴らとは一切関わらない。
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