夏は外で遊ぶよりもゲームのイベント周回の方が大切だ!
ある日こと。
ぼけっと外の景色を楽しみながら休み時間を過ごす。
季節はあっという間に梅雨が明け、蒸し暑い季節がきた。
「和真さん!ついに夏が到来です!」
俺の机をバン!と勢いよく叩いた葵。
その表情はやたらと機嫌がいい。
「うん……そうだね」
「うわ!何その反応の薄さ私ショックです」
いや、当然だろう。
急に夏が来ますね!と言われたところで反応に困る。
なんたって夏はただ暑くてセミがうるさい。
そして朝昼晩の3食は決まってそうめんと言うイメージしかない年だと思うが……
「それで、夏だから?」
「はぁ……分かってないですね和真さん。夏!夏と言えば水着でプールデート!そして、花火大会と言う和真さんには必見な大きなイベントがあるじゃないですか!」
いやそう言われても困る。
なにせ去年の俺はただただゲームや漫画、そして夏休みの宿題をしながら一人で過ごしていた。
だから、夏と言われたらプールに花火大会!なんてリア充共が言いそうな考えは俺には思いつかない。
因みに葵に乗っ取るなら俺の夏は勝負の夏だろう。
夏は水着イベントが始まる。
この時期にしかこない、推しキャラをゲットするため諭吉を生け贄にするのは勿論のこと、上位賞に入賞しない限り手に入らない水着イベントのキャラを手にいれるがために夜通しイベントを周回し上位に入賞する。
それが俺の夏である。
まぁ到底リア充共にはわかる訳がない……いや、分かってたまるか!と言うイベントが俺には待っている。
だが今年はそうもいかないかも知れない……
「という事で!私達と水着を買いに行きましょう!」
ここは教室。
清水 葵はそれを分かっているのだろうか?
見てほしい、男子の殺気がよく伝わるような視線に女子には俺をみながら陰口を叩かれているような……
それにこんなところで「うん 行こう!」なんて言える訳がないだろう。
多分、言った瞬間俺はこの学校にこれなくなってしまう。
「で!どうなんですか!和真さん。答えないなら私達が強制的に連れて行きますよ!」
もう、それで結構だから、顔を近づけて俺をじーっと見てくるのをやめてほしい。
うん?ちょっと待て……
さっきから葵は「私達と」や「私達が」など一人称ではない発言をしてくる
まさか、水着を買いに行くのは葵だけではないのか?……
「清水、水着を買いに行くのは清水だけじゃ……」
「何言っているんですか!皆さん来ますよ!」
「みんなって……まさか!」
「そのまさかです!」
と言う事は木嶋さんに彩華さん。
そして駒形もくると言うことだ。
彩華さんはともかくあのツンデレ全開である駒形がくるとは意外である。
いや、それよりも普段からおとなしい木嶋さんまでくるとはもっと意外過ぎるかも知れない。
俺は知らぬ間に興味を持ちはじめてしまった。
「で!どうするのですか!?」
どうしよう……
木嶋さんの水着姿をちょっと興味がある。
きっと水着を着た木嶋さんの恥じらう姿は可愛いに違いない。
だが他の面子がいらない……
という事で……
「ごめん……」
「はい!時間切れ!と言うことで和真さんは強制ですー!まぁ、断っても半ば強制的に連れていくつもりだったのですけどね」
ニコッと笑った葵。
ならこの時間はなんだったのだろうか?
その前に俺は断るつもりだったのですが……
「じぁ、これおいておきますね」
そう言い、葵が俺の机においたのは一枚のメモ用紙。
そこには日時に集合場所がかかれていた。
「私、楽しみにしてますので必ず来てください!」
「ちょ、ちょっと!」
葵はどこかへ消えていく。
本当は水着を買いに行くなんて断るつもりだった俺だがこうなった以上、行くしかなくなったのであった。




