8話 煩悩だらけの組体操:後編
体育が組体操になってから2週間。真面目な輝夜ちゃんはともかく、不真面目な私は特に練習をしてなかったので……
「うわーー!! どうしよぉ〜、輝夜ちゃん!」
「今からでも練習しましょう! 灯さん!」
何をこんなに熱く話しているかと言うと、もう明日が組体操のテストなのに、ロクに倒立ができないのです(主に私が)
練習の機会はいっぱいあったんだけど、輝夜ちゃんの足を触りたいがあまり、自分の練習は「いいからいいから」で済ませてしまった。
壁なしの倒立がこんなに怖いなんて……
「あと、サボテンの練習もしなきゃ」
「そうですね。合わせ技ですし、放課後やりましょう!」
ちなみに7月2日以降、輝夜ちゃんは歯磨きを見せてくれないまま。あぁ、辛いなぁ。
そしていつも通り授業は寝て過ごしてようやく放課後。今日はまっすぐ帰らず輝夜ちゃんと体育館へ向かうことにした。
「まずはサボテンからやりましょうか。マットを持ってきます」
「はーい!」
ちなみにサボテンはまず肩車をして、上に乗った人が土台の人の太ももに足を乗っけて手を広げる組体操のこと。
輝夜ちゃんはスタイルがいいから今回は私が上の役になった。輝夜ちゃんに乗るっていう響きだけで昨日鼻血を出したのは内緒です。
「さぁ、やりましょう!」
さっそくマットを敷いて輝夜ちゃんがしゃがむ。
さてと、輝夜ちゃんの首にお股を挟んで肩車を……え!? 首にお股を挟む!? これ極大エッチなのでは!?
こんなエッチなことを運動会のプログラムに平気な顔して取り入れている日本ってやっぱりイっちゃってるよ。
「灯さん? どうしました?」
「あっ、ごめんごめん。じゃあ失礼しまーす」
輝夜ちゃんの首を挟んで乗る。首、細いなぁ。
「じゃあゆっくりと上がりますね」
「了解!」
そっと輝夜ちゃんが動き出して景色がだんだん高くなっていく。
私のお股大丈夫かな……輝夜ちゃんは体育の時はポニーテールにするからちょっと擦れて……
「んっ……」
「灯さん、大丈夫ですか?」
「へぇあ!? う、うん。大丈夫!」
危ない危ない。トリップするところだった。
「じゃあ次のステップへ行きましょう。太ももの上に乗ってください」
「はーい!」
輝夜ちゃんの首と髪を楽しむ時間は終わっちゃったけど、今度は足の裏から太ももを堪能できる。組体操バンザイ!
予想通り細いのにぷにぷにしていて……なんかこう……スゴイの!
「ひゃ!?」
足の関節を輝夜ちゃんががっしり掴む。なんか...輝夜ちゃんの指使いってえっちなんだけど! いや輝夜ちゃんに関したことなら全部えっちだって言ってる気がする。
「うん! できましたね!」
「よ、良かったぁ〜」
本当は首と太ももの感触を上書きするのに精いっぱいだったからそんなに覚えてないけど。
「じゃあ次は倒立の練習ですね!」
うっ……倒立って怖いんだよねぇ。
「か、輝夜ちゃんの練習からどうぞ!」
「いえ、今日は灯さんからお願いします」
えっ!?
いつもなら受け入れてくれるのに!
「灯さんの練習時間を奪ってしまったのは私です。絶対に灯さんも成功できるよう頑張りましょう!」
あぁ、真面目。いい子。好き。
こんなにまっすぐな目で見られると流石の私でもちゃんとやらなきゃって思っちゃうよね。
「う、うん。じゃあ私、頑張る!」
輝夜ちゃんと向かい合う。思いっきり勢いをつけて...
「そりゃ!!」
「……上がってこないです」
ううう。怖いよぉ。
「輝夜ちゃんはどうやって怖さを克服したの?」
「わ、私ですか!? それはその……秘密です」
えぇ、なんでだろ。
こうして私はまったく成功の予感がしないまま、テストに望むことになったのです。
◆
いよいよテスト本番。昨日は緊張して夜も7時間しか眠れなかったし、午前の授業も半分くらいしか寝ていられなかった。
「はーい。テストの説明をするぞ。サボテンは1分以内で完成させること。倒立も同様に1分以内。その間なら何度挑戦してもいいぞ」
う〜ん、1分だとそんなに何回もミスをしていられないなぁ。
「はい、じゃあまずサボテンから。始め!」
一斉にマットに並ぶ。
「行きますよ! 灯さん!」
「うん」
「「せーの」」
スムーズに肩車の形まで行けた。サボテンは輝夜ちゃんが安定してるからしっかり成功!
問題はやっぱり……
「次は倒立! 名簿が若いほうから始めること」
「輝夜ちゃんからだね」
「はい。灯さん」
「どうしたの?」
「信じています!」
……ほへ? どういうことだろう?
そのまま輝夜ちゃんはサッと成功させた。今日もふくらはぎを触れたわけだけど流石にテスト本番中となると興奮も半分くらいになった。
そして私の番……どうしよう。
目の前の輝夜ちゃんは不安そうな顔。というか、心配してくれている顔に見える。でもどこか寂しそうで怒っているようにも見える。
「はい、よーいスタート!」
私の60秒が始まる!
「いくよ輝夜ちゃん」
「はい!」
思いっきり足を上げた……つもりだったけど、実際には上がってないようで輝夜ちゃんの手に届かない。
時間がどんどん減っていき、もう半分も残っていない。
「もうダメ……ムリィ」
私がそんな弱音を吐いた時だったー
「そんなに私は……」
「輝夜ちゃん? どうしたの?」
「そんなに私は……信用ならないですか……灯さん」
輝夜ちゃんが、うっすら涙を浮かべてそう言った。
「私は灯さんのこと……友達だと、親友だと思っています……だから、信じてください! 灯さん!」
頭を強く叩かれるような衝撃だった。輝夜ちゃんをずっと毎日観察してきたけど、ここまで感情を表に出すのは初めてだった。
「うん……ごめんね。私、自分のことばっかりだった……次は思いっきり上げるよ。だから……信じてるよ! 輝夜ちゃん!」
「はい、灯さん!」
「はぁああ!!」
思いっきり、それこそ魔法少女として戦っているように力を込める。好きな人を泣かせてしまった罪は-私の中でなによりも重い!
だから…………
パシッ!!
「や、やりました……灯さん!」
「や、やったぁあ!!!」
「森野、合格!」
パッと足を放してもらってすぐに輝夜ちゃんに抱きつく。
「ありがとう輝夜ちゃん! それと、ごめんね……」
「いえ、私も感情的になってしまってごめんなさい……」
私たちは夏休み前に、確実に数歩前進しました!




