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80話 わからない

「ただいま〜」


「おかえりなさい。ブラッディさんを見ませんでした?」


「ブラッディを?外出してるの?」


「はい。灯を追いかけるって言って家を飛び出して行ったのですが…」


「見てないなぁ」


 私を追って?コンビニまでほぼ一本道だし絶対すれ違うはずだよね?


「うーーん…まぁちょっと待ってれば来るんじゃない?晩御飯の準備しよっか」


 実は今日の勉強合宿は勉強だけでなくお料理教室も兼ねているのだ!

 漫画のキャラクターみたいな産業廃棄物製造機系ヒロイン…とまではいかなくても輝夜ちゃんはそこそこお料理が下手。対して私は親がシェフでそこそこの花嫁修業を積んできた地味に料理が上手い女(自称)


 活躍できる場所は…今しかない!


 今日のメニューは炒飯と麻婆豆腐!色気ないなとか思ったそこの君、表に出なさい。


「まずはベーコンを少し切ればいいですよね?」


「ちょちょ待って!まな板敷いて!」


「あっ!そうでしたね…」


「ひき肉こねたらハンバーグになっちゃうよ!」


「えと…えと…!」


 こんなにあたふたしてる輝夜ちゃんは珍しい…!けど料理は水物。早めに対処しないとだから堪能してる場合じゃない!


 勝手なイメージだけどブラッディも料理苦手そう…。ここにいたら修学旅行の日の鹿に襲われた時みたいにあたふたしそう…。


 なんとか説明しながらパッ、パッと作って…


「完成〜!」


「うぅ…足を引っ張ってごめんなさい…」


「いいっていいって。また慣れてこ?」


 うん…!この完ぺきに見えて弱点がちゃんとあるところが好き!

 それにしても…


「ブラッディ遅くない?」


「そう…ですよね。さっきメールも送ったんですが」


「心配…迷ってないかな?」


 とか思っていたら ピンポーーン!とインターホンが。


「・・・ただいま」


「もう〜どこまで行ってたのさ!心配したんだよ!」


 ・・・あれ?なんかこんなやり取り修学旅行の日にもしたようなしてないような。


「・・・ごめん」


 なんか…元気なくない?とはなんとなく言いにくい雰囲気があった。どうしたんだろ…。


「ご飯できてるよ?食べよ?」


「・・・ごめん。お腹…空いてないから。上で待ってる」


「そ、そう?」


 せっかく作ったんだけどなぁ。


「ブラッディさんでしたか?」


「うん。なんか食欲ないから上で待ってるって」


「そうですか…心配ですね…」


「とりあえず炒飯の方ならおにぎりにしていつでも食べられるからあとで握るね。麻婆豆腐は…食べれる?」


 そびえ立つそこそこの量の麻婆豆腐…。カロリーの爆弾!JK的にこれをすべて食らうのは…。


「・・・イけます!灯と二人で作ったものですから」


「体重の覚悟はできたみたいだね…いくよ!」


「「いただきます!!!」」



 当然すっごく満腹になりました。ブラッディめ…これで体重増えてたらデコピンしてやる。


「ごちそうさまー。ブラッディ、食欲戻ってきたらこれ食べてね」


 炒飯おにぎりを2個ブラッディに渡す。ちょっと目を丸くして


「・・・ありがと」


 って呟いた。うん!まんざらでもないみたいだね。


「じゃあお勉強再開しよっか!」


「やる気満々ですね。何かあったんですか?」


「いや〜料理で気分転換できたからね」


 それと輝夜ちゃんとナイトっていう好きな子二人に会えてるし。今日はいい日だよ!


 とりあえず数学と理科をやり切って今日の勉強は終了!夏休みの宿題が一部だとしてもこんなに早く終わるなんてすごい!


 その後お風呂に一人ずつ入って歯磨きをしたら…布団を敷いてパジャマトーク!乙女が3人も集まればそりゃこうなるよね?


「誰か学校で付き合ってる子とかいないのかなぁ?」


「確か3組の山田さんと石井さんは付き合ってるって噂がありましたね」


「それ・・・先月別れたって聞いた」


「oh…」


 まぁ…色々あるよね。同じクラスで別れた同士か…地獄だなそれ。


 そんなようなガールズトークをしている間に…


「スゥー…スゥ…」


 輝夜ちゃんが真っ先に落ちちゃった。やっぱり早いなぁ。


「・・・輝夜?」


「もう寝ちゃったよ。まだ寝れないからもうちょっとだけお喋りしない?」


「・・・うん」


「ねぇ、なんで帰ってくるの遅かったの?」


 やっぱりちょっと気になっちゃった。


「・・・別に。道に迷っただけ」


「・・・そっか」


 まぁ言いたくないなら…いっか。話す気になってくれてからでいいや。と思ってたんだけど…


「・・・どうして深く聞いてこないの?疑わしくない?」


「ん?疑ってなんかないよ?」


「そう…」


「そもそも疑うことなんて何もないしね。それに…」


「・・・」


「友達だもん。話す気になるまで待つよ」





 ーー-----------------------




『友達』。その言葉を残して灯は眠りについた。


「友達…私が?灯の?輝夜の?」


 二つの寝息のみが響く部屋にポツリと呟く。友達…そんなもの知らない。魔道国四天王となって早数百年。部下はいても、王はいても、友達はいない。


 思えば私は人間界の調査を命じられた時毎日魔道国に帰れるか王に聞いた。でも今私は・・・魔道国に帰らずに輝夜の家にいる。この行為は…悪くないとさえ思っている。


 私たちが人間界を支配できたとしたら2人は…王に頼んで2人だけは奴隷にはさせないでおこう。


 ………どうして特別扱いを?わからない。わからない。わからない。


 ………どうして人間界を、支配しなければならないのだろう。わからない。わからない。わからない。


 この思案は夜中ずっと考えても「わからない」ままだった。

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