66話 灯さん
格上の【ベビーラテラル】に勝てた・・・ということより正直に言ってしまえばあの赤ちゃんプレイを回避できたのが良かった…! 困惑系ボーナスタイムにはもう遭遇したくない…。
それにしても今日私に負けたから【ベビーラテラル】はもう願いを叶えられないんだ…。そう思うとちょっと罪悪感が…。
しばらく待ってるとハチミツのポールに縛られた【ベビーラテラル】が彼女に似合わない無表情で出てきた。
「アタシの負け、か…」
「・・・今ポイントはいくつまで貯めていたの?」
さっきは教えてくれなかったけど、今のしんみりとした雰囲気なら教えてくれる気がする。
「615だ。もうとっくの前からダメだったさ」
「【ベビーラテラル】ですらそうなんだね…。自信なくなってきた…」
「ハッ! だったらさっさとボーナスタイムで稼ぐんだな。一分一秒を無駄にできるほど偉いとは思えねぇぞ」
たしかに。貴重なボーナスタイムの時間を割いて話してるのを意識してなかった…。
「じゃあ始めるよ」
「うっ!?」
口を指で強制的に開かせる。見たまんま抵抗が強いから苦労したけどなんとか指を突っ込むことができた。
「うっ…ぐっ!」
う〜ん、やっぱり結構耐えてくるな…。なんとなくあんまり感じてくれるタイプではないと思ってはいたけど…。
でもこっちだってパターン2があるんだから! 上あごの性感帯・・・これならどうだ!
「ひっ…ぐ…へっ!」
なっ、笑われた!? どうしよう・・・このままじゃせっかく【ベビーラテラル】に勝てたのに20ptしかゲットできない…。
いや…【ベビーラテラル】だからこそ、もしかしたらこれでイケるかもしれない!
スゥーと息を吸う。恥なんて捨てちゃえ。今考えるべきは、満点を取ることのみ!
「バブちゃ〜ん、しっかり歯磨きできまちゅかぁ〜?」
・・・これでどうだ!!!
「できにゃ〜い。ママ〜!」
・・・よし! 結構キツイけどまぁよし!
「それじゃあお口開けまちょうね〜」
「はぁい」
今度は自分から開けてくれた。
「じゃあママが歯磨きしてあげるからねぇ〜」
猫なで声で今月20歳になる者をあやす。この状態を冷静になって考えるとかなりキツイけど、なんとかマザーズハイになってる間に走り切ろう。
「あぅー…あっ!きゃっ!」
これは…感じてるとはまた別の何かな気がするけど…。たぶん本人は負けたのに赤ちゃんプレイができてるから絶頂しそうな勢いだろうから…いいか!
「ほらほらー、ちゃんと奥歯も磨かないとでしょ?」
「マ…あぅ…ママ〜…」
【ベビーラテラル】はずいぶんと楽しんでいる様子・・・だったのに突然真顔になって
「お前の夢、叶えろよ?」
「え?ーーーーー」
次の瞬間にはもうホテルの食堂が目の前に広がっていた。
≪【ハニーランプ】ポイント更新≫
戦闘開始前:90pt
↓
戦闘終了後:140pt
≪内訳:戦闘勝利+20pt。ボーナスタイム+30pt≫
≪weapos≫ 『メルヘンロッド』 sub 『スチールソード』
≪skills≫ 『ジャンプ能力向上』『HP+50』『街灯索敵』
≪magics≫ 『インフェルノ』『サンダーウィップ』『ハニートラップ』『サンダーボール』『ショットガンランプ』『未登録×2』
『マジカルボード』にポイントの変動が表示される。満点を取ったのに【ベビーラテラル】の最後の戦いだったんだと思ったら手放しに喜べない。なんかちょっとだけ切ない気持ちが混ざるのは仕方のないことだと思う…。
「ってダメだダメだ! 今は楽しい修学旅行中なんだから!しんみりしてちゃダメ!」
気合いを入れるためにパンッと顔を叩いた。
さて、部屋に戻ろっかなぁ。
「ただいま〜」
「灯さん、おかえりなさい」
あっ♡ 新婚さんみたい…。
「忘れ物は見つかりましたか?」
「ん?」
忘れ物・・・?あっ!そういえば忘れ物を取りに行くって設定で部屋を飛び出したんだった…。
「あ、うん!見つかったよ!」
「良かったです」
「「・・・」」
そのままなぜか無言に・・・やっぱりスキー教室のことまだ頭の中にあるのかな…。
「そ、そういえばブラッディ遅いね! 何しに行ったんだろ〜?」
わざとらしく話題を振ってみる。
「そ、そうですねぇ〜! ホテルの周りは何もないのにどうしたんでしょう…」
シーーン…
そのまままた無言に…。どうしよう…この修学旅行では確実に何か一歩を踏み出そうと思ってたのに…。
「あ、灯さん!」
輝夜ちゃんが大きな声で話しかけてきた。
「ど、どうしたの?」
「今日のお昼から…ブラッディさんの呼び方を変えましたよね?」
ブラッディの…あぁ、おみくじを引いた辺りから「ちゃん」を付けなくなったね。
「う、うん。そうだけど…」
「私もそれ・・・したいです」
輝夜ちゃんは最後まで私を見つめて言うことはできず、途中で顔を赤くさせて目線を逸らした。
それをしたい…ということは…
「輝夜ちゃんもブラッディを呼び捨てにしたいの?」
「いえ…そうじゃなくて…」
逸らしていた目線を私に向けて、深呼吸して…
「私、灯さんの呼び方を…変えたいです!」
そう、言ってきた…。
「え! 全然いいよ! むしろ「さん」付けでちょっと距離感じてたし…嬉しいよ!これから呼び捨て?」
「はい! いいですか? 灯・・・?」
『灯』と輝夜ちゃんの口から出た瞬間、プシャーっと鼻血が噴き出した!
「うわぁ!?久々にきた!」
「ティ、ティッシュ使ってください、灯さ…あっ」
「あはは。だんだん慣れてこ?輝夜ちゃん!」
自分からは一歩を踏み出すことはできなかったけど、輝夜ちゃんから踏み出してくれて修学旅行の1日目は終了しました。




