1話 灯と輝夜
私、森野灯は高校1年生のごくごく普通の女の子。
運動は苦手で、勉強も得意な方ではありません。
でも、私は毎日が楽しい!
だって、私はこんな楽園「女子校」に毎日通う権利を得たから!!!
それともう1つ……
「おはようございます。灯さん」
「おっはよー!輝夜ちゃん今日も可愛いねぇ! ぐへへへ」
可愛い可愛い美山輝夜ちゃんとお友達になれたからです。
「はあ〜今日も綺麗な黒髪ロングとおみ足……眼福眼福〜」
たまにおじさんみたいな事を言ったり、美少女の前で手を合わせて拝んだりするけど、私はとっても普通の、とっても幸せな女の子です!
「ん?」
「どうかしましたか? 灯さん」
「ううん。なんでもない。ちょっと窓から視線を感じたんだけど、気のせいだと思うよ」
「それは怖いですね。ストーカーという可能性もありますし、先生に伝えたほうが……」
「大袈裟だよぉ〜輝夜ちゃん。でもありがと! 心配してくれて」
でもちょっと気になるなぁ。窓の外って木しかないと思うんだけど。
「おーい。ホームルームの時間だぞー」
窓を開けて見てみようと思ったら先生が入ってきちゃった。
まぁ、気のせいだよね?
いつも通り授業の5分の1くらいを寝て過ごしてたらもうお弁当の時間!
「楽しい楽しいお弁当〜♪輝夜ちゃんとお弁当〜♪」
「灯さんはお弁当の時間になると元気が出ますね。授業の時は半分以上寝ているのに」
「ウッ! それを言われると胸が苦しいかも。主に罪悪感的に」
「大丈夫ですか! すぐに保健室へ!」
「あぁ、ううん。そういうのじゃないから大丈夫だよぉ〜。でもありがと! それとごちそうさまです」
立ち上がった瞬間に輝夜ちゃんの髪のいい匂いを嗅ぐことができた!
まぁでも、私の本当の楽しみの時間はお弁当なんて生ぬるいものじゃないのだよ。
そう! 輝夜ちゃんが食後にする歯みがき!
これこそが私の高校生活でもっとも目を輝かせる瞬間なの。
シャコシャコシャコ……
髪を手で上げて歯みがきする輝夜ちゃんが色っぽ過ぎて……鼻からダラーッと……
「ごめん輝夜ぢゃん!鼻血ででぎだがら保健室いっでぐるね!」
「ま、またこの時間ですか?気をつけてくださいね……」
とまぁ学校でのルーティンみたいになってるんです。
「5限まであと20分かぁ〜何しようか?」
鼻に丸めたティッシュを詰めた結構アウトなJKになっちゃった。
「宿題の答え合わせでもしませんか?」
「あっ! いいねーそれ! ……ほへ? 宿題のノート……どこだろう……」
ない! ないないない! カバンの中も机の中も探したけれど見つからない!
「あぁーー!!! 家だ!! ちょっと取ってくるね!」
「えっ、間に合いますか?」
「大丈夫! 走れば往復15分で行けるから!」
ううう、やってしまったなぁ。運動苦手なのにお昼後すぐにダッシュって……横っ腹痛いよぉ。
5、6分走ってやっと家に到着……疲れたぁ。
「はぁ。はぁ。あれぇ? どこだろ?」
「探し物はこれかお☆?」
ノートを差し出してくれた。
「あ! それそれ! ありがとー! …………って誰!?」
「溜めがながいお☆……←は3つか6つまでにすべきだお☆」
ノートの陰に雪○だいふくに小さい目がついたような生き物がいる!
「ご、ごめんね! よくわからないけど遅刻しちゃうから」
見なかったフリ、見なかったフリ...お化けとか苦手なんだよねぇ。
なんとか走って間に合ったぁ。
「か、輝夜ちゃん……今日の夜、LI○E通話かけてもいいかな...」
「今日ですか...7月1日……ごめんなさい! 今日はどうしても……その、外せない用事があって」
「あ、いいのいいの。気にしないで! また今度しよ!」
本当はさっきのお化け(?)が怖いから今日したいんだけど……
そんなこんなで授業が終わって、いよいよ帰宅……
怖いなぁ。怖いなぁと思いながら、恐る恐るドアを開ける。……とりあえず飛び出しては来なかった。よかった〜。
そのまま安心して、部屋のドアを開けた。
「おかえりだお☆」
サッと血の気が引いていくのがわかった。
「な、な、な、な、な、なん」
「おお〜40年もののレコーダーみたいになってるお☆」
「あ、あ、あなたは一体?」
怖いけどよく見たらマスコットみたいで可愛いかも。うん可愛い。可愛い! 脳みそを上書きしよう。
「僕はディスポンだお☆。『マジカル聖王国』から来た愛と希望の使者だお☆」
語尾がうるさいなぁーこの子。なんかだんだん怖さなくなってきたかも。
「えっと……私に何か用?」
「そうだお☆。森野灯、君は魔法少女に興味ないかい? あっ、お☆?」
今言い直したよね……。
「魔法少女? 昔アニメで見てたりしたけど、もう10年くらい昔のことだし……興味ないかも」
「そう、残念だお☆。まぁ興味があるかないかなんて関係ないからいいお☆」
じゃあなんで聞いたんだろ。そんな言葉はなんとか飲み込んだ。
「率直に言うと、君に魔法少女になって欲しいんだ! あっ、お☆!」
その「お☆」やめればいいのに……
急に魔法少女って言われても……なんか怖いし……
「魔法少女は選ばれた人間しかなれない特権階級だお☆。この募集要項を見るお☆」
そう言うとディスポンの身体が光った。
「うわっ!? 何これ?」
「魔法だお☆ 書類を召喚したんだお☆」
「すごい……魔法なんて初めてみたよ……」
紙をディスポンから受け取る。なになに……
『魔法少女募集要項』
魔法少女募集条件
①20歳未満の女子であること。
②女の子が(性的に)好きであること。
③ちょっと変わった性癖を持っていること。
え?これって……
「ちょ、ちょっとおかしくない!? ①②はいいとしても③は絶対おかしいよ!」
「おお〜。こんなに①②をすっきり受け止めるのは珍しいお☆。でも僕の目がちゃんと③を満たしていると見抜いたお☆。間違いはないお☆」
「そ、それで、私を魔法少女にして何をさせる気なの?」
「戦いだお☆。他の魔法少女と魔法で闘いあうんだお☆」
「い、嫌だよ! そんな痛そうなこと! 第一、私運動苦手だし!」
「魔法体になれば運動神経なんて関係ないお☆。あと魔法体で攻撃を受けても肉体にはまったく損害はでないお☆。保証するお☆」
「そう言われてもなー……」
「もっとその紙の下の方まで見るお☆」
「下の方……?」
『魔法少女について』
①20歳になったその日の0時から魔法少女としての能力をすべて喪失する。
②魔法少女の通常戦闘は毎月1日の19:00とする。
③魔法少女との戦闘の結果、ポイントを得ることができる。逆に喪失することもある。
④ポイントが1000貯まった魔法少女は、自分の願いを1つだけなんでも叶えて貰える。
「願いを……なんでも……」
「なんでもだお☆。他の魔法少女なら思い人と結ばれるためだったり、お金のためだったり、希望する企業に勤めるために戦っていたりするお☆」
「思い人……輝夜ちゃん……」
ニッとディスポンが笑った気がした。雪○だいふくみたいな顔だから表情はよくわからないけど。
「やる気……でたかお☆?」
「う、うん。本当に生活に支障がでたりはしないんだよね?」
「もっちろんだお☆。魔力を持たない生命体には1秒に感じる時間を、魔法少女は2時間に感じて戦うから、一般人との生活の誤差もないお☆。認識阻害で身バレもないし、超ホワイトだお☆」
いいかも。輝夜ちゃんと結ばれるのなら……私……
「うん、やるよ! 魔法少女!」
「よく言ったお☆! じゃあ今日は7月1日だから早速戦闘の日だお☆!」
「い、いきなりだね……」
「じゃあもう魔力をあげちゃうお☆。3、2、1、『マジカル・インストーール!』」
ふわふわした虹色の光が私を包み込んでる! 10秒くらいしたら化粧水のように肌に浸透していった。
この時をもって、私は魔法少女になったのです!
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