173話 激闘の行方
「『ナイトメア……」
黒い立方体の粒子がナイトの周りに集まる。
「ランス!』」
[名槍:月姫]が黒く光り、強化されたのが一目でわかる。怖い……でも私だって強くなった! 迫り来る投げやりに……対応する魔法は、
「『ハニーシールド!』」
凝固したハチミツの壁! 突き刺さる槍はハチミツの粘性に負け、私に届くことはなかった。
「くっ……!」
「今度はこっちから行くよ! 『ハニーコンバレット!』」
小さな蜂の巣を召喚。MP消費も少ないから攻撃力には期待できない。でも……『イグジストナイトメア』を使ったナイトには一撃当てれば勝ち。だから……ワンチャンスを狙う!
「いっけぇ!」
8つある蜂の巣の穴から放たれた小さな弾丸がナイト目掛けて飛んでいく。
「そんな陳腐な魔法で……甘く見ないでください!」
縄跳びの空気を切る時のような音で、ナイトは弾丸を槍で叩き落とした。やっぱりそう甘くはいかないか……。
「『ネイベルサーチ』」
出た……! 何かよくわからない青い魔法陣! ナイトの眼球のすぐそばに発動する。
「そこか……『ナイトメアランス!』」
「うあっ!!!」
飛んできたのはわかってたのに……避けられなかった!? 右足をかすめただけだったから良かったけど、なんで避けられなかったんだろ……。
『ネイベル』に秘密があるのかな……ネイベル……おへそ……まさか、確実に当てるところをサーチしているってこと!?
ならヤバイ……絶対に攻撃は当たるってことじゃん! 警戒しないと……。
「・・・どうやらそこまでバカじゃなかったようですね」
ナイトは青い魔法陣を見ながらため息をつく。警戒を強めた私に確実に当てる場所は無くなったはず! でも注意はしておかないとね……気を抜いたらすぐにでも必中の攻撃が飛んでくるわけだし。
「こないならこっちから行くよ!『ランプボール!』」
光の球をナイトに投げつける。思ったより速い球! いけるんじゃない!?
「ふん! せやぁ!!」
気合いで……うそん……。
黒い立方体ではじき返された。まぁMP消費5の魔法だし、脆いのは仕方ないけど。
「もういいでしょう。今の私と戦えているだけ誇るべきです。魔法少女の、頂点にいる私と」
たしかに……今のナイトには【テールインペリアル】、【イヤーエンジェル】といった最強格でも敵わないと思う。でも……だからって私が勝てない道理はない! だって今の私はその2人より強い! そう自信を持って言えるから!
だから笑う。それこそ、いたずらっ子のように。
「・・・何を」
「やーだよ。私は……諦めない!」
「そうですか……別に構いません。結末は同じです」
もう一度漆黒の槍を構えるナイト。あれに対抗できるのは『ハニーシールド』だけ。攻撃魔法で匹敵するものはないか……。手数は多い攻撃が多い私と、一撃に込める魔法が多いナイトとの差だね。
「『ナイトメアランス×3』」
三本!? そういえば【バフォメット】戦でも三本出してたっけ……。
「これで……終わりです!」
完全に勝負を決め切る気のナイト。そうは……させない!
「『ハニーシールド!』」
この盾の範囲的にギリギリ2本なら止められる! で、あと一本は……
「武器[女王蜂]スキル発動『蜜巣』」
蜂の巣で閉じ込めちゃえ!
漆黒の槍は蜂の巣に包まれ、あと二本は私の読み通りハチミツの盾で防ぐことができた!
「……しぶとさだけは褒めてあげます」
「絶対ナイトに願いを言うこと聞いてもらうんだから! 当然今日の私はしぶといよ!」
「……まだ言いますか、さっさと断ち切ればいいものを」
「できるわけない! 人間として満たされていたって、ナイトを好きになっちゃった事実は変えられないから!」
「……そんなのズルいです」
「へ?」
ナイトの目から一雫、涙がこぼれ落ちた。
「私だって……いえ、なんでもないです」
涙を拭ってもう一度勝負の顔に戻るナイト。
「さぁ、終わりにしましょう。遊びはもう十分です。MP的にも、最後の技となるでしょう」
「そうだね……どっちが勝つか、それはもう、神様にしかわからない」
「いえ。勝つのは……私です」
ナイトの周りに黒い立方体が集結する。くるか……あの【バフォメット】戦で見せた大技。なら私も……
「『ビックバンランプ』」
魔法の名を呼ぶと眩い光を放つ球体が手のひらに浮かぶ。え……こんな小さいものなの!? MP65も使うのに!?
「『スターダスト……ナイトメア!』」
「くっ……!」
黒い立方体が流星群となって襲いかかってくる。やるしかない。信じるんだ、私の魔法を、私の勝ちたいという気持ちを!
「『ビックバンランプ』発動!」
直後、眩い光の球体が一瞬で弾け飛び、あたりを侵食しだした。光の魔法とは思えないほど進軍し、捕食していく。捉えるのは……闇!
「なっ!?」
ここだけ昼みたい……。ナイトの黒い立方体すらすべて侵食しつくした『ビックバンランプ』は、やがてナイトをも飲み込む。
「……まったく……ずるい人ですね、あなたは」
消える直前、ナイトはそう言い残した。私の……勝ちなの?
「………んーーー! やったぁー!!!!!」
私の叫びが、昼のような[星乃川市]にこだました。




