9話 海と水着と妹と……
夏休みが始まって、1週間ちょっと経過しました。森野灯です。
今日は8月1日。そう、魔法少女として活動しなければならない日です!
そんな日に私は輝夜ちゃんと、海へ出かけます! 2人っきりで! お泊まりで!
あぁ。幸せ。
「灯さーん!」
おっ、来た来た……
ブフッッ!!
「きゃあ!? 大丈夫ですか?」
「あれ、何これ……」
思いっきり鼻血を噴いてしまった。いやいやいや、輝夜ちゃん! その服はずるいよ。いくら海へ行くと言ったって白のワンピースと麦わら帽子ってそんな……破壊力が!
(少女治療中)
「大丈夫ですか? 日を改めた方が...」
「大丈夫大丈夫! さぁ、行こう!」
バスに乗り込んで出発! [星乃川市]には海がないから南の町へ向かわなきゃいけない。バスで大体1時間ちょっとかな?
「輝夜ちゃんはどんな水着持ってきたのー?」
「な、内緒です!」
「ざんねーん」
そういえば……と、輝夜ちゃんは確認するように呟いた。
「灯さんはもう宿題は済ませましたか?」
「うっ! まだ1ページも……」
「ええ!? 1週間そんなにお出かけしていたんですか?」
「いえ……半分以上家にいました」
ちょっと気まずい空気が流れる。
最初はこんな会話を続けていたけど初めてくる町に入ってからは窓の外に夢中になってた。
輝夜ちゃんも景色を見ていると思ったら……
「スゥー、スー」
あらら。輝夜ちゃん寝ちゃった。もしかしたら楽しみで昨日眠れなかったのかな? だとしたら小学生みたいで可愛いなぁ。
「ん……」
「はぅ!」
なんと輝夜ちゃんが寝たまま寄りかかってきた。
いいんですか神様! 宿題すらできない怠惰な私にこんな幸せを与えて!
ツンツン……っとほっぺたをつついてみる。なんか最近セクハラしかしていない気もするけど大丈夫だよね?
そのまま10分くらいは寄りかかってきた輝夜ちゃんをそのままにして堪能したけど、窓から海が見えてきたから起こしてあげる。
「かーぐーやーちゃん。海だよ〜」
「ん、ふぁ〜、あれ、私……」
「私の肩の寝心地はどうだったかな?」
「え、あっ! ごめんなさい! 私、寝てしまって」
「いいよいいよー!」
むしろありがとうございます。
「そ、れ、よ、り! 海だよ、海!」
「綺麗……」
輝夜ちゃんの方が綺麗だけどね!
そこからほどなくして海に到着。
旅館[南星の宿]に荷物を置いたら……
「海だぁ〜!!!」
近くで見ると決して綺麗だとは言えない海。でも夏休みに遊びに来たという条件をつければそこはもう南国の海になる!
「更衣室ってどこにあるんでしょう」
キョロキョロと輝夜ちゃんが首を振る。
「うーん、見つかんないねぇ」
一旦旅館の中に戻って
「すみませーーん! 更衣室ってどこにあるんですかー?」
「あらあらごめんなさいね〜。更衣室は海側じゃなくて裏側に作っちゃったのよぉ〜」
「あぁいえいえ全然。ありがとうございます! 行こっ、輝夜ちゃん!」
「はい!」
さてさてお着替えっと……
どうせみんな私が輝夜ちゃんの着替えをガン見するって思ってるんでしょ。
私だって一応乙女なので「その時」まで裸は見ないと心に誓っているのです! ※銭湯は除く。
私はまぁいわゆるちっぱいさんなのでフリルビキニを選択! 金髪のミディアムストレートに合うようにビキニはオレンジ色にしました!
そして大本命! 輝夜ちゃんはスク水です! ……えっ
「ええええ!? 輝夜ちゃん、その水着……」
「はい。灯さんのような水着を着る勇気がなくて……」
いやいやいやそっちのが何倍も勇気がいるでしょ!
ちょっぴりポンコツなところもあるなーって思ってたけどこれは……ベタすぎて驚き!
「輝夜ちゃん、水着、買おう?」
「えっ?」
「買おう?」
「は、はい……」
なんとかパワーで押しきった。
気を取り直して……
「海だぁーー!!!」
結局輝夜ちゃんは黒の大人っぽいビキニを選択。無難だけど最高だね。
「もー! 恥ずかしがらずにタオル取りなよー!」
「その、慣れるまでこれでいたいです……」
ええー、可愛いのに……もったいない。
まぁとりあえず海に来たからにはやっぱりコレ! ってのをやりたい!
「輝夜ちゃん! 浜辺で追いかけっこしよ!」
「いいですよ」
「じゃあ私が追いかけるから、輝夜ちゃんは逃げてね。よーい、どん!」
ザッという砂を蹴った音と共に追いかけっこスタート! 本当は夕暮れをバックにやりたいけど夕方まで遊んで走れる体力は私にはない!
「あはは〜、輝夜ちゃん待て待て〜」
輝夜ちゃんとの距離がどんどん離れていく……
15m、20m、30mと離れてって……
「ちょちょちょっと待って! 本当に待って!輝夜ちゃあ〜ん! グヘッ!」
盛大にすっ転んだ。
「大丈夫ですか? 灯さん」
「う、うん。大丈夫ー……」
まさか砂浜の追いかけっこでガチダッシュするJKがいるとは思わなかったよ。
その後は水鉄砲で撃ちあったり
小玉のスイカでスイカ割りをしたり
焼きそば食べたり
浮き輪でゆったり浮いて……
「あー!! 遊んだねぇ」
「はい! すごく楽しかったです」
夕方になっても楽しく堤防でお話ししてたら……
「おお〜。可愛い子いるじゃーーん」
後ろから声がする。ゲッ、ナンパかな?
「あの、私たちこれから帰るところなので! ……って桜!?」
「もうっ! お姉ちゃん海に来てるなら言ってよねぇ!」
「灯さん? この方は?」
「あぁ、紹介するね。妹の桜。ってか桜! むしろなんで桜がここに? 友達の家に泊まりに行くんじゃなかったの?」
「お友達の家が旅館やってるの! すぐそこの、[南星の宿]ってところ」
「えっ、それって」
「私たちの旅館ですよ、灯さん」
ええ〜! それは困る……すっごく困る……
「それよりお姉ちゃん! そこの美人さんはだあれ?」
「……桜には教えない」
「美山輝夜と申します。いつも灯さんにはお世話になっています」
「へー、輝夜さん、かぁ。ねぇねぇ、今日の夜、私たちの部屋に遊びに来ませんか? ……ダメ?」
だってこの子は……
あざとい百合ぶりっ子だから!!!!!