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啓太24才が片思いの女社長  作者: 古森史郎
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第5話

 やべー、太ももを見てるのバレちゃった。どうしよう……。


「あんた、ここで降りてもらうわ」


 あちゃー、キョロキョロ。この辺って栃木県に入ったばかりだけど、何も無い。あれ、本当に車を停めちゃうの? 左に寄ってハザードを出したぞ、お前ここは素直に謝れ!


「ごめんなさい、すみません」

「あんたさっきからHなサイト見てたりして、本当に仕事する気あんの?」

「み、路子さんのお仕事をやらせてください」

「路子さんなんて軽々しく呼んで欲しくないわ」

「じゃあ、なんて呼んだらいいんでしょうか?」

「そうねえ、昔から”ロコ”って呼ばれていたから、”ロコさま”でいいわ」

「?……ロコさまお願いします、一生懸命働きます」

「わかったわ、今回は見逃してあげる。啓太」


 おいおい、なんかご主人さまと召使いみたいになって来たなあ……すんなり許してくれたから、まあいいか。路子さん、いやロコさまはお尻を浮かしてスカートを手で引っ張ってから座り直すと、また車は走り出した。あー良かった。


 やっと宇都宮に着いて、商店街を通り過ぎたところで車を駐車場に停めた。そこから5分ほど歩いて汚い雑居ビルの前で立ち止まったんだ。


「このビルの3階が私の事務所よ」


 見上げると、3階のガラス窓に赤字で『コンソルロコ』と書いてある。どえらく汚いビルだなあ、相当古いぞこのビル。まだらな灰色の外壁と古臭い窓の外にはエアコンの室外機がペタペタと張り付いてる。


 ロコさまはビルの中に入ると、突き当りの古い鉄製の扉を手で開ける。……おっと、エレベータだった。その中に2人で入って扉をしめ、縦に並ぶ数字が書かれた丸い小さなボタンの③を押した。


 ——ガクン。ずいぶん揺れるなあ、このエレベーター! ——ギギギ。3階に着いて扉を開けて廊下に出たら、木でできた真新しいドアがある。そこには黄金色の浮き文字で『Consumers Solution consultant ROKO』と書いてあった。


「さあ、中に入って」


 ロコさまが開けたドアの向こう側を見てびっくりした!


 ビルの外観とうって変わって、シックな部屋になっていたんだ。真新しいデスクに革の応接セットに木製の棚、壁も天井も照明も、そしてカーテンも真新しく、落ち着いた雰囲気の事務所だったんだ。僕は入り口で立ちすくんでいた。


「啓太、ボーとしていないで、早く中へ入りなさい」

「はい、中の部屋はめちゃきれいじゃないですか」

「物事は外見より中身が大事なのよ、とにかくそこのソファーに腰掛けて」


 ソファーに座って待っていると、ロコさまはコーヒーと分厚い書類を持って来てテーブルの上に置き、ボールペンを僕に手渡したんだ。


「はい、コーヒー。あとこの労働契約書を読んだら、マイナンバーと住所と名前を書いてから署名欄にサインしてね」


 ありゃあ、この分厚い書類読めってか。どれどれ、労働時間と報酬と就業規則……面倒くせー! サインしちゃうか。


「早くコーヒーを飲まないと、冷めちゃうわよ」

「はい、サインしましたよ」

「あら、早いわね。3か月間は試用期間よ、良く読んだ?」

「取りあえず、ここで働きます」


 書類を受け取ると、僕のサインを確認する。

「それでは早速仕事をしてもらいます」


 バッグを取りに行き、戻って来て僕の正面に座ったと思ったら、すぐにバッグの中から例のダークピンクのボトルを取り出したんだ。


「今日の午前中に大宮で仕事の打ち合わせをした時に、これを渡されたのよ」

「それって、Hな塗り薬ですよね」

「ビンゴよ、啓太」

「どんな依頼だったんですか」

「大宮に本社がある会社からの依頼なんだけど、昨日長野にある工場から出張で来ていた女性従業員が失踪したらしいの」

「失踪? ですか」

「その女性従業員は大事な資料を持って来ていたんですって、それもいっしょに消えてしまって、彼女にも全く連絡が取れないのよ」

「はあ」

「それで、その会社の総務の人がその女性従業員が泊まったホテルを尋ねたら、このボトルだけが残ってたんですって」

「なんでかなあ?」





「逆ハニートラップじゃないかって、総務の人が言ってたわ」


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