鬼と勇者とスライムと
異世界は、、スライムすらも規格外で!?
「えと、君が勇者の末裔なんだね?」「・・・はい。」「えと、じゃあ、魔王倒そ?」「無理です!ムリムリムリ!そんな魔王さまなんてその名を口にするだけでも震えが止まらないのに倒すだなんておこがましい!」どっちの味方なんだよ。「それに、魔王だなんてザックリしすぎですよ!」魔王でザックリ?(魔王とは・魔王種という種族と、人間に対する悪意と殲滅可能な力を持った者達のことを指す。)なんじゃこりゃ!?(叡智・転移特典。知りたい情報を自動的に脳に入れる。)それはそれは。これでちょっと、異世界生活が楽になりそうだ。
叡智のおかげで、転移特典の中身が分かった。「特技選択」「叡智」「超次元貫通」の三つらしい。なんだそれ。厨二かよ。わかりやすく言うと、特技選択はなんかほしい技を条件を満たせばもらえるもの。叡智は図鑑。超次元貫通は四次元ポケット。ただし、性能は少し上になっている。ポケットに入れてないものも取り出せる・・・ポケットじゃなくね?でも、これなら。弱い魔物なら、最強の武器とか出したら勝てそうだ。「魔物で一番弱いのは?」「スライムですね。でも、人間じゃなかなか勝てませんよ?」自分を基準にするな。思わず突っ込みたくなったが、まあ良い。(叡智発動!スライムの居場所!)脳の中に3Dの地図と光る点が現れる。一番近いのは、「勇者の墓跡」?もしかしてだけど。「勇者の墓跡って何?」「父さんのお墓です。」やっぱりか。「父さんは、その、立派な勇者だったんですよ。私と違って。」なるほどな。「何で、跡なんだ?墓じゃなくて。」「・・・壊されたんですよ。「鬼」に。」鬼。頭の中に、誰かが浮かぶ。(キミモ、コチラニオイデヨ。ナカマジャナイカ。)誰だ?(ウラミヲモツモノ、オニトナル。イキナガラニシテ・・・)「コウガさん?」はっと気が付いた。何だったんだ、今のは?「何でもない。それより、墓参りさせてくれるか?」「ええ?」「興味があるんだよ。」今のが、もし、マコの父親なら。墓で何か分かるかも知れない。
「少し、待って下さい。」そう言われてもう5分ほどになる。と、扉が開いてマコが出てきた。思いっきり勇者装備だ。「何で、そんなカッコなの?」「ずるいですけど、父さんの前ではせめて、勇者でいたくて。」・・・そうだよな。好きで勇者に生まれたんじゃない。俺みたいに、ならざるを得なかったんだ、理不尽の中で。「もしかして、村人に嫌われてるのは、「勇者」だから?」「はい、勇者なのに、魔王様が怖くていつまでも引っ込んでるから。」そういうことか。「・・・つきました。」勇者の墓跡は、文字通り墓跡だった。砕けて地面に刺さった石、焼け焦げた砂、爪で引き裂かれたかのような地面を抉る大傷。鬼・・・(ウラミヲモツモノ、オニトナル。イキナガラニシテ・・・)
「コウガさん?さっきから、体調でも悪いんですか?」「あっいや。ただ・・・悪夢を見ただけだ。」何だあれは?なんだアイツは?何だ、あの言葉は?何故知ってる?知らないはずの人間、いや、まるで「ニンゲン」じゃないみたいな物言いだったな。「立って目を開けたまま眠るなんて。コウガさんはもしや、新人類?」いや、たとえなんだが。ああ、もう、気分が悪い。半ば乱暴に花を添えて水をかけると、俺はきびすを返した。「帰る。」「え?もうですか。」
その時。青の半透明の生命体らしき者が後ろから現れた。人型をしているが、どう見ても【魔物】だ。隣で、マコが震えている。ランマー並に。局地的アースクエイク?「すっすすすっすっ」落ち着け。「す」しか言えてない。過呼吸かよ。「「スライム」です!」スライム?アレがスライム?もっとまんじゅう頭のマヌケ面を想像してたのに。人型じゃん。でも、魔物なら。「マコ、分かるよな」「っはい!」背中の大剣を、ゆっくりとさやごとからだから外す。「お願いします!コウガさん!」いや、逆だろ普通。そうじゃなくて、それでアイツを倒してくれない?「いや、でも。怖くて。」ああ、もう。「いいか。このまま何もしなかったらカクジツに殺される。でも、戦ったら、もしかしたら勝てるかも知れない。どっちが怖い?」しばらく、真剣な顔で考えるマコ。「えっあ・・・殺される方が、怖い?」「よし、なら戦え!」魔物にすら慣れてないなら、魔王なんて負けイベどころの話じゃない。
マコが、剣を投げる。記録、50センチ。鞘から抜けよまずは。ズルズルと剣を引きずって戻ってくる。(ゴクリ)「強い!」「違う、弱い!(ゴクリ)じゃない!」「プルルプルルルプッルッルッ」どんな笑い声だよ。「弱いな、メスガキ。」そうだ、よくぞ言った!じゃなくて。「とりあえず切れ!」「は、はいっ!」ズバッと体が縦に裂ける。鞘にいれたままだけど。と、裂け目から触手のようなモノが出てきてマコを捕まえる。え?「噂は、本当だったんですね。」何?噂?「スライムは水みたいな流動体なので、物理攻撃が効かないんです。」先に言えよ。初期的のくせにスライムの強さじゃないじゃん。これガチでやばくね?
(スライム:魔物の中では一番弱い。生き残るため、特性特化型に進化した。能力値:LV3 HP1752 物攻0 物防0 魔攻349 魔防675 特性:流動体 物理攻撃完全無効化。自由に体の形を変えられる。 蒼き鏡身 光属性攻撃反射。反射時、水属性を上乗せする。 状態変化 自身の体を固体、液体、気体に変える。周囲の熱エネルギーを使ったり、周囲に拡散したりする。 特技 トラップ作成、トラップ設置 魔法 熱源感知 称号 トラップ職人、嵌めるモノ)だ・か・ら。初期的の強さじゃないって。
「さーて、私のお店、特等席へご案内してあげるわ。」「え、す、すみません、財布もってきてません。」いや違うだろ絶対。「こけにしているの?」「私、人を苔にする魔法なんて使えません。」スライムの額に、血管が浮き出ている。「もういいわ。」それだけ言うと、マコを体内へ引きずり込んだ。「いらっしゃいませ!!死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」きれすぎ。てまずい、助けないと!ポケットから缶を取り出すと、走りながら投げつけた。スライムの体内に缶が入る。パキッ、パキパキッ。「な、何じゃこりゃあ!?」液体窒素だ。凍った体を割って中からマコを取り出す。氷に触ったせいか、体全体が冷たい。「しくじった」体が、とけてる?「周囲の熱エネルギーを取り込んだのさ。」そういや、そんなの書いてあった。ええい、もうどうにでもなれ!スライムに有効な中で最強武器を!ポケットから出てきたモノを見て、固まってしまった。日本刀だったってのもあるが、その名前だ。(妖刀)「激おこぷんぷん丸」。は?「!?そ、その剣は!」「知ってんのか、スライム。」ギリっと歯が鳴る。「大陸を七つに割った怪物だ。」なにそれやう゛ぁあい。まあ、効くらしいからとどめを刺そうか。「ま、待って。話を聞いて・・・」「ごめん、オマエは砕け散れ。」ズバァン!今度は、横に真っ二つになった。
「ああ、もう。最悪だ。もっと長生きしたかったな。・・・おのれ、忌々しい、」そういうこと言われると、今後魔物を殺しづらくなるのだが。ただでさえ見た目は少女真っ二つなのに。続きは、聞きたくない。でも、言葉は容赦なく、俺の耳に、脳に、入ってくる。「{鬼呪}め。呪いの塊め。」呪いの、塊。「自己紹介も、他者紹介も、地獄で飽きるほど聞いてやっから、おとなしく首を長くして待っとけ。」スライムは蒸発するように消えた。墓場は、再び静かになった。
激おこぷんぷん丸詳細は次話にて。