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起きるまで(後編)

 目を開けたら、室内は薄暗かった。


(わたし、まだこの世界にいる)


 ゆっくりと腕を持ち上げ、拳を握ったり、開いたりという動作を繰り返してみる。

 大丈夫、思ったように動かせる。最初に目覚めたときより、ずっと滑らかだ。

 思っていた以上に深い眠りについていたようだ。物音を聞いた覚えもないが、護衛二人は寝たのだろうか。

 耳を澄ませても、何も聞こえない。

 上半身を起こしてから、隣のベッドを見た。


「わーっ」


 思わず声が出た。


「アキラ、どうしました?」


 開け放してあったドアから、すぐにアランが飛び込んでくる。

 上掛けを胸元まで引っ張り上げたまま固まっているアキラに視線をすべらせてから、隣のベッドに目を向けた。


「オレは何もしてねぇよ。アキラが変な動きをしていたから見ていただけだ」


 ベッドの上に胡座をかいて座っていたスバルが、ふてくされた顔で言ってから足をおろして立ち上がった。


「変……でしたでしょうか。身体がちゃんと動くか確認したくて。その、初めてここに来たときは全然ダメだったから」


 そしたら、何の物音も気配もしなかったのに、隣のベッドからスバルがガン見していたのでびっくりしただけなんです。

 アランの実直そうな水色の瞳に見つめられているうちに、言い訳か説明かわからない部分は口にできず、上掛けをぎゅっと握りしめてしまう。

 部屋を出て行こうとするスバルに道をあけながら、アランがくすりと笑った。


「アキラ?」

「はい?」


 なんだろう? と返事をすると、アランは目元に笑みをにじませ、白い歯を見せて言った。


「いえ。なんでもないです。おはようございます。良い朝ですよ」


 横を過ぎるスバルに顔を向けて「朝起きたら、『おはよう』ですよ。言いましたか?」と軽く絡みながら背を向けて去っていく。

 アキラも慌てて足を下ろすと、床に置かれていた柔らかい布のルームシューズに足を通して追いかけた。

 

「ごめんなさい、朝起きたら男の人が隣にいることにびっくりして。スバルの顔が怖いとか、そういうんじゃないんです」


 部屋に足を踏み入れた瞬間、顔にタオルを投げつけられた。


「一言余計だぞ。さっさと顔を洗えよ」


 落とさないようにタオルを両手で握りしめながら、アキラは目を向けてきている二人を視界におさめていった。


「おはようございます。昨日はありがとうございました。今日も一日、よろしくお願いします」

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