33僕が学園に入学することに意味はありますか
「そう言うことで、僕が次に目覚めたら、この城の廊下にいたというわけです」
女神が説明しようとした、少年がここに来た経緯は、少年の口から説明された。
『我が呼んでおいたのだ。こやつは少年の姿で、今回の学園とやらに入学する権利を持っている。利用する手はないだろう?』
にやりと笑いながら話す悪魔に、ソフィアはため息をつく。
「事情は分かりました。ですが、すでにカナデが用務員として学園に潜入する手筈を整えることになっています。魔王、いえ、今はエイト君でしたね、彼をこちらに呼び寄せて学園に入学させる意味はありますか?」
『意味はあるだろう?ソフィア、カナデだけを学園に潜入させて、安心できるか?お主も潜入したそうな顔をしているぞ』
「ゴホン。わ、私は別にカナデが心配ではなく、一人よりも二人、学園に潜入する人数が多い方が、今回の任務の遂行をしやすいかと思っただけです」
図星をつかれたソフィアは、咳ばらいをしてごまかそうとするが、カナデは見逃さなかった。
「わ、私だけでも今回の任務、しっかり果たせます。見くびらないでください」
「まあ、私は、私のつてを使って学園に潜入しようと思っていましたので、もし、エイト君が学園に入学できるのなら、それに越したことはありません。ですが、それが私にどんなメリットがありますか?」
カナデの言葉は無視され、ソフィアが悪魔に質問する。悪魔はエイトが学園に入学させたがっているようだが、その理由を知りたかった。
『お主、このエイトとかいう少年の保護者として学園に赴いたらどうだ。こやつには保護者がいない。お主が保護者として付き添えば、カナデの様子もみられて一石二鳥じゃろ』
「そ、ソフィアさんの子供、エイト君が……。そ、それはなんという名案。あれ、でも、それだと年齢が……。いや、そんな些細なことは気にしません!悪魔様、ナイス提案です!」
悪魔の言葉にカナデは一人興奮していた。美少女と美少年の組み合わせ。しかも、ほのかに香る不幸な感じがまた、いい感じに二人の魅力を引き出している。カナデの興奮した様子にエイトだけが嫌そうに顔をしかめて反応する。しかし、すでにカナデの奇怪な行動に慣れている他の者たちは、カナデの様子を気に留めることはなかった。
「簡単に言ってくれますね。でも、まあ異論はありません。もともと、私は教師として学園に潜入しようと思っていましたから、保護者として、先生として、二つの立場で行くのに問題はありません」
「ええと、話が見えないのだが、学園に何か用事でもあるのか?」
ソフィアたちの話しを聞きながら、エイトは疑問に思ったことを口にする。先ほどから、学園に潜入することや、任務を遂行すると言った言葉が出ているが、いったい学園で何をするのだろうか。エイトは、自分が学園に入学すること、そこに何か役割があるような気がした。
「ああ、あなたには話していませんでしたね。私たちの学園に行く真の目的を」
「エイト君とソフィアさん、二人が通う学園。いや、今からもう、学園に行くのが楽しみです!とはいえ、私は決して、自分に与えられた使命を忘れてはいませんからね!」
「はいはい。カナデさん、いい加減に現実に戻ってもらえますか?エイト君が、自分がここに呼ばれた理由と、私たちが学園に潜入する目的が知りたいそうですよ」
「えええ!私が説明するんですか?ソフィアさんが話せばいいじゃないですか。私より話が上手でしょう?。」
ソフィアの雑な対応にカナデが反発するも、ソフィアは全く聞き入れる様子はない。
「教員免許を持っているという話は嘘だったんですか?」
「それとこれとは別です。あんなもの、話がへたくそでも、根性さえあればどうにでもなります!」
『二人とも、さっさとエイトに話してやらんか』
ソフィアとカナデの言い争いがいつまでも続きそうだったので、見かねた女神が声をかける。しぶしぶと言った様子でカナデがエイトに学園に潜入する目的を話し出す。
「仕方ないから、私から説明していきますね。エイト君、でいいよね。私たちはある目的を遂行するために、学園に潜入するの。その目的を話す前に、まずは私たちがやろうとしていること、すでに実現してきたことを説明した方がいいかもしれないね。私たちは……」
カナデは、自分たちがやろうとしていることを簡潔に説明することにした。自分たちは、女性が生きやすい世の中にしようとしていること、そのためにはまず、女性の服装を改めていく必要があること、すでに騎士団やメイド服が改正できたことなどを話していく。エイトは、カナデの話を最初は興味なさそうに聞いていたが、次第に真剣な表情で聞きだした。
「ということで、私たちが学園に潜入しなくてはならない理由はわかってもらえるといいんだけど」
話を終えたカナデがちらりとエイトに視線を向ける。エイトは、自分の想像と違った、彼女たちの学園への潜入目的、彼女たちが目指す理想の社会に驚いていた。カナデの先ほどまでの奇怪な行動からは想像できない内容だったが、男のエイトでも多少の共感を持つことができた。
「そうだな。お前たちの学園に向かう理由はわかった。だが、それを僕に話して良かったのか?僕も性別は男で、もしかしたら、お前たちの敵になりうる存在かもしれないぞ。まあ、僕はあのくそ勇者みたいな考えは持っていないから、女性の服装などに関しては、少しは共感を持てるかもしれない」
カナデから話しを振られ、どうやって自分の考えを伝えようか悩むも、正直に今思っていることを伝えることにした。
「それなら良かった。まあ、昔のあなたを見ていれば、くそ勇者と同じタイプの人間とは思えませんしね。女神たちがあなたをこの世界に残したことから。問題はないと判断されたのでしょう」
『うむ。こやつはお前らと同様に、何かこの世界で面白いことをしてくれそうだと思って残したのだ。勇者とは違うから安心してもいいぞ』
『こんな形で我らを面白くしてくれるとは思わなかったが。女神の言う通り、エイトはお主らに危害は加えないから安心していい』
女神と悪魔がソフィアの言葉に賛同するように言葉を発した。
「私は、エイト君が永遠のショタとして生きていくことを誓うのなら、一緒に行動しても」
「カナデは口を慎みなさい」
カナデだけは、一人論点のずれた発言をまたしていたが、ソフィアに突っ込まれておとなしくなる。
「僕は……」
エイトは、これからどうしようか考える。学園には行きたいが、学園に行くにあたり、彼女たちの協力をする必要がある。しかし、エイトは女性の服が破廉恥でいいとは思っていなかったので、彼女たちに協力することに異論はなかった。
「オレは以前、高校生だったが、その時に少し思っていた。彼女たちの服装は目のやり場に困ると。だから、お前らに協力してやってもいい」
あえてオレという言葉を使って、エイトは自分自身の意見を率直に述べる。彼の決意にソフィアがほほ笑んだ。
「なら決まりですね。すぐにエリザベス様に伝えて、エイト君の入学手続きをしてもらいましょう!」
カナデとソフィア、エイト、二匹の猫たちは、学園に通う準備を始めることにした。




