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異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました  作者: 折原さゆみ
第二章 異世界転移をした彼女は女性の意識改革(服装改革)を行うことにした
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18身近なところに敵はいましたが、問題はありません

「だいぶ署名が集まりましたね。ですが、まだまだ人数が足りませんね。相手はあの宰相みたいな考えを持った人たちですから」


「そこが制服改定のための大きな壁となるな。あいつらに制服改定が必要だと思わせるためには、確かにこの人数だけでは足りんな」


『はあ』


 ソフィアとエリザベスは、ソフィアの部屋にいた。署名活動で集めた書類を見て、同時に深いため息を吐く。城の女性や城下町の女性たちのほとんどから署名をもらうことはできたが、あくまでも女性の署名ばかりだった。とはいえ、世の中、男性と女性は大体同じくらいの人数なので、城周辺の女性たちから署名を集められたことは大きな成果と言えた。



「そろそろ、男性の方の根回しも始めていく頃ですね。いつまでも後回しにはできないですから」


「そうしてくれるとありがたいが、無理は禁物だぞ。カナデもそうだが、ソフィアも案外、のめりこむタイプだからな」


「肝に銘じておきますが、私はカナデとは違います。どいつもこいつも、カナデのことばかり」


 後半の言葉は独り言のように小さかったが、エリザベスにはしっかり聞こえてしまったらしい。


「カナデがどうかしたか?そういえば、カナデを見かけないが何をしているのだ?」


「カナデですか?ああ、今回の署名集めには向いていないかと思いましたので、雑用を任せておきました」



 ソフィアは、今回の署名集めにカナデを同行させていなかった。カナデがいると、いちいち女性たちと共感して、訪れた場所ごとに長居しそうだと思ったからだ。もちろん、共感を得るためにはいいことだが、さっさと制服を改定して欲しい。女性の意識改革、服装改革は始まったばかりで、最初でそこまで時間をかけていたら、いくら時間がかかるかわからない。まだまだやるべきことはたくさんある。


 そんなことを考えていたソフィアは、カナデにあることを頼んでいた。服の修繕だった。カナデの女神から授かった能力を使えばすぐに直すことも可能だが、あえてその力を使わずに、自分の手で修繕しろと命じている。修道院にもよく顔を出しているソフィア。子供たちから預かったほつれた衣服を直してやることがあった。最近、カナデのことでいろいろあり、修繕する服がたまっていたので、カナデに直させることにしたのだ。



「私にこれらを手直ししろとおっしゃるのですね。ソフィアお嬢様。これは、いじめと思っていいのでしょうか」


「理解できないわ。あなたは私の侍女として生活をしている。それなら、私の仕事を手伝うことは当たり前だし、侍女の仕事としてはうってつけだと思うけど」


「ソフィアさんって、私のことだいぶ理解してきたと思ったんですけど、勘違いだったんですかね。私、裁縫とかできないですよ」


「わかっているからこそ、頼んだのよ。どうせ、制服改定の残りの手続きは私がやるのだから、あなたの出る幕はひとまずないの。その間の暇をつぶすために渡した仕事だもの。ゆっくりと丁寧に修繕してくれればいいわ。期限も特に設けないことにするし、ああ、なんて寛容なご主人でしょう!」


 ソフィアの言葉に、カナデは反論できなかった。こうして、カナデは今、エリザベスが手配した侍女たちに与えられる一室を借りて、そこで一日の大半を過ごしていた。たまにカナデが様子を見に行くと、必死に針と糸と、ほつれた服を掴み、修繕を行っている姿を見かけるので、ソフィアのもくろみは功を奏したようだった。




 そのような事情があり、ソフィアの部屋にはエリザベスとソフィアのみで、カナデの姿はなかった。カナデがその場にいない事情をエリザベスに話すと、納得したような答えが返ってきた。


「なるほど、まあ今回に限ってはそれもやむを得ないかもしれんな」


「わかっていただけて何よりです。それで、男性からの署名集めの方法ですが、カナデには秘密にしてくださいね。この方法は少し、強引でカナデには無理な芸当でしょうから」


 女性からの署名を集めるまでは順調だった。女性たちへの根回しも終わり、男性に声をかけようかと考えたソフィアは、手始めに、一番騎士団の女性に近い場所で働いている、男性騎士に声をかけることにした。



 しかし、手始めには、騎士団の男性からと思ったのが間違いだったのかもしれない。身近なものほど、危険だということに、ソフィアは気付くことができなかった。





「女性騎士団服の改定?何を言ってるんですか。バカじゃないですか。女性騎士が目的で入団する男もいるんですよ」


「改定なんてする必要あるのか?男性と違って女性騎士なんてお飾りみたいなものだろ。そんな奴らには、あの服装で男を喜ばせるくらいしか取り柄なんてないだろ」


「確かに、女性騎士にも強い人はいますよ。ええ、認めます。でも、それと制服改定は関係ないでしょ。男性と同じにしたら、面白味がなくなる。ただでさえむさくるしい男の中の癒し、美しい花をめでる俺たちの気持ちは無視ですか?」


 ソフィアは、男性騎士の根回しは、イザベラやレオナにやらせなくてよかったと心から思った。同僚の女性に向かってひどすぎる言葉に、ついソフィアはつい、本性を出してしまった。女性に対しての署名活動は二人を連れて歩いていたが、男性騎士に対しては、ソフィア一人で署名を集めようと決めていた。



「馬鹿かてめえら!」


 突然のソフィアの柄の悪い言葉に、男たちは一瞬ひるんだ。ソフィアの暴言は止まらない。


「そんなんだから、てめえらは女性に嫌われんだよ。女性の気持ちを考えたことがあるのかよ。ああん、そうだ、いいことを思いついた。お前らも、女性がどんな思いをしてきたか体験したらいいんだよ」


ぱちんと指を鳴らしたソフィアに、二匹の猫が男たちの前に現れた。白と黒の二匹の猫は嫌そうにニャーと鳴いている。


『ソフィア、お主の本性ってそんな感じなんだな。カナデもやばいが、ソフィアもたいがいだな』

『女神よ。ソフィアの言うことを聞いた方がいいと思うぞ』


「さっさとしろよ。お前らも、異世界テンプレに侵されて、男性擁護とかいうんじゃねえだろうな」


『違います』

『違う』


 ニャーとひときわ大きく鳴いた二匹の猫。その声に反応したのか、男たちの周りが光り始めた。異変に気付いた男たちが慌てて逃げ出そうとするが、ソフィアが逃がすはずもない。


「逃げられると思うなよ。『止まれ』」


 ソフィアの身体が金色に光り出し、声を聞いた男たちの動きが止まった。



『仕方ない。想像するだけでおぞましいが、それがソフィアの望みだからな』

『悪魔みたいな女だ。自らの存在理由を見失いそうだ』


 次の瞬間、男たちの身体が先ほどより強い光で包まれた。あまりのまばゆさに男たちも目の前にいたソフィアも目をつむる。



『ソフィア。お前の望み通りにしてやったぞ』

『感謝するんだな』


 女神たちの言葉に、目を開けたソフィアは、目の前の光景に吹き出してしまった。



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