15実際に騎士団の女性にも試着してもらいました
「イザベラにレオナか。われは呼んではおらぬが、ソフィアが呼んだのか?」
「はい、カナデは騎士ではありませんので、実際に女性騎士の皆様に着ていただくことで、使いやすさや快適さを実感して欲しくて、この場にお呼びいたしました」
にこりと微笑むソフィアに、突然呼ばれた二人は頬を紅くする。微笑ましい様子にエリザベスもほっこりした気分になるが、すぐにそんな気分が吹き飛んだ。
「では、お二人の分はこちらになります」
カナデがずいと二人に服を差し出す。カナデは騎士団の女性制服の試着品を着たままだった。
「えっと、あなたは……、カナデさんだよね?」
「うそでしょ。あの男女 (おとこおんな)のカナデがこんな」
二人の反応は、エリザベスと同様だった。カナデの騎士団の格好に驚いていた。目の前の現実を信じられないという驚きで固まっていた。そんな様子にすっかり慣れてしまったカナデが苦笑する。
「そこまで服装で変わるとも思えないけどね。とりあえず、私とソフィアさんで作った騎士団の女性用の制服を着てみて欲しいです」
イザベラとレオナは渡された服を見つめ、固まっていた。手渡された制服は、見た目は男性用の騎士団の制服とよく似ていたからだ。
「どうやって、この短期間に私たちの分まで試作を作ったのかわかりませんが、ありがたく身につけてみることにします」
「着替えてきますので、少しお待ちください」
固まっていた二人だが、すぐに正気に戻ると、急いで部屋の奥にあるついたてに向かって歩き出す。二人の足取りはどこか軽かった。
「こ、これは!動きやすいうえに、身体を動かしても恥ずかしくない!」
「男性物と同じに見えて、でも、ぶかぶかしないし、か、可愛く見える……」
数分後、着替えを終えた二人がカナデたちの前に姿を現した。興奮したような声で口々に感想を言い合い、どうやら、カナデの調整を気に入ってもらえたようだ。
『ど、どうでしょうか』
ひとしきり感動して、今度はカナデたちに感想を問いかける。調整した本人であるカナデは二人を見て、どう答えようか考える。イザベラもレオナもばっちりと似合っていた。女性らしさを損なうことなく、かつ以前のような破廉恥極まりない格好でもなかった。
イザベラは、もともと女性にしては身長が大きかったこともあり、今回の試作品が彼女の足の長さや手足の長さを魅力的に魅せていた。胸元も下品になることなく、女性らしい曲線美を描いていた。厭らしい目で見られることなく、それでいて女性的な魅力を存分に出されている。
レオナも同様に女性らしさを出しつつも、下品になることなくまとまっていた。騎士団ということもあり、適度なフィット感が鍛えられた身体を魅せていた。
同時に彼女たちになら、護衛を任せてもよいという安心感を与えていた。
男性騎士団の制服は、青を基調としたジャケットに白いシャツ、紺色のスラックスとなっている。女性も基本的には同じだが、シャツの胸の部分は不自然な切り取りがしてあり、胸の谷間が覗いていた。さらに、シャツやジャケットの胸周りの大きさがサイズ違いかと思うほどの苦しさを訴えていて、胸を強調させていた。下半身は男性と異なり、下着が見えるから見えないかぎりぎりくらいの超ミニスカートに、膝丈までのロングブートという格好だった。
「いいんじゃないかな。調整した私が言うのもなんだけど、私なんかよりよほどお似合いよ。やっぱり現役の女性騎士は違うわね。逆にあんたたちはどんな感じなの?見た目はいいけど、ほら、騎士という仕事上、動くことが多いでしょ。その辺はどんな感じ?まあ、さっきの班のを見る限り、不満爆発ということはないと思うけど」
「これを振って動作の確認していただくといいと思います」
カナデの言葉に、ソフィアがすっと二人に模擬戦用の刃引きされた剣を手渡す。まるでカナデの言葉を知っていたかのような用意周到ぶりに、カナデは思ったことがつい口に出てしまった。
「ずいぶんと用意がいいけど、こうなることがわかっていたのですか?」
「カナデさんの行動は読みやすいですから」
簡単に答えられてしまったが、そんなことはどうでもいい。カナデは二人の行動を見守ることにした。
模擬戦用の剣を渡された二人は、さっそくその場で素振りを開始した。素振りの軽快な音が部屋に響くが、それ以外に声をあげる者はおらず、二人の素振りをカナデやソフィア、エリザベスはじっと観察していた。しばらくして、動きやすさを確認できたのか、二人は剣をソフィアに返して、改めてカナデと向き合った。最初に言葉を発したのはレオナだった、
「ええと、何といえばいいのですか。これはその、私の、私の」
まどろっこしく、はっきりとしない言い方にカナデは結論を急がせた。
「はっきり言ってもらって構わないから。ほら、例え見た目が良くても、動きにくかったら、仕事着の意味がないでしょう?お飾りで騎士の地位にいるわけでもないんだし。コスプレ衣装でもないから、見た目だけではダメなのはわかっているでしょう?」
「そ、それはそうですが、ええと、その、今までこのような服を着たことがなかったので、世の中、このようなものも存在するのかと、ええと、だから」
「まどろっこしい!」
「レオナの言いたいことはわかります。なので、私が代わりに応えましょう」
レオナの要領を得ない回答に、イザベラが代わりに応えてくれるらしい。カナデはおとなしくイザベラの言うことに耳を傾けることにした。




