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異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました  作者: 折原さゆみ
第一章 異世界転移をした彼女は異世界の常識を変えようと試みるが、勇者がくそ過ぎて困りました
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2異世界に降り立ちました

 謎の白の空間から姿を消したカナデは、ある場所に姿を現した。そこには人がおらず、カナデのみがぽつんと立っているだけだった。



「いったい、ここはどこなの。おそらく、女神さまに聖女を要請した国のどこかだとは思うけど。」



「キエー。」


 考え込むカナデの前に謎の生き物が現れた。爬虫類のようなうろこをまとった、羽を生やした生き物。カナデは物語の中で嫌というほど目にしたことがあったので、正体はわかっていた。ドラゴンである。まさか、異世界に降りたってすぐ、こんなやばそうな生き物に出会うとは思わなかった。



 ものによってはすぐに現れるタイプの話もある。カナデの運が悪かっただけである。カナデは瞬時にこのドラゴンの対処法を考える。そして、何もしないという選択肢をとることにした。たいてい、物語を進めるうえで、最初のモンスターで聖女や勇者がやられるということはまずありえない。


 ちょうどよいタイミングで助けが入ると確信していたからだった。その予想は見事に的中した。異世界転生小説を読み込んでいた甲斐はある。



「トウリャー。」


 叫び声とともにドラゴンが縦に二つに分断される。分断されたドラゴンはその時点で絶命しているが、さらに追い打ちをかけるようにドラゴンが紅い炎に包まれる。


 数分後、丸焦げになったドラゴンの亡骸がその場に残ったのだった。





「何をしているのですか。こんなところに一般人がいてはいけません。ただでさえ、魔王が復活して治安が悪くなっています。ここは、町から離れた場所。助けがこなくても、文句を言えない場所ですよ。」


「そうだよ。こんなところに一人で無防備に立っていたら命がいくつあっても足りない。今回は私たちがたまたま通りかかったから助かったものの、通りかからなかったら死んでいたからね。」



「助けてくれてありがとうございました。」


 カナデは感謝の言葉を二人に投げかけた。カナデの窮地を助けてくれたのは、二人の女性だった。助けてくれたのは感謝しかないのだが、助けてくれた二人の服装を見て絶句してしまう。



「な、なんていう格好をしているのですか。」


 何とか絞り出せたが、とても弱弱しいものだった。


「お礼の次に出た言葉が、服装についてだったのは初めてです。別にそんなにへんな格好をしているとは思えませんが。そうでしょう。エミリア。」


「そうだねえ。これといって変なところはないでしょ。まあ、あんたの武器とかが女性としてふさわしくないことを言っているのかもよ。イザベル。」


 二人の恰好は、現代の日本からしたら、露出狂として捕まりそうなレベルの服装だった。エミリアと呼ばれていたのは、小柄な女性だった。白いローブを腰まで身にまとっていて、ぱっと見では露出してないように見えるが、カナデは気づいてしまった。ローブの下の黒のロングスカートにある大胆なスリットに。そこから生足ががっつりと見えていた。こうなると、ローブの下の上半身もおそらく、ノースリーブに違いない。


 エミリアの容姿は、これぞ異世界の住人という色合いを持っていた。つやつやとした銀色の髪を肩まで伸ばし、瞳の色はアメジストのようにきれいな紫。現代の日本ではカラコンにウィッグでコスプレした姿しか見ることはできない。こちらは本物だろう。彼女によく似合っていた。


 もう一人のイザベルと呼ばれている女性は、真っ赤な髪にオレンジの瞳をしていた。真っ赤な髪は一つに結ばれて背中で揺れていた。鎧のようなものを身にまとってはいたが、なぜか胸のところがぽっかりと空洞となっていた。そこから胸が丸見えである。これでは、急所を狙ってくださいと言っているようなものだ。


 下半身はもっとひどいものだった。下着と同じくらいの短いスパッツに、足はニーハイを履いている。その上に膝までのブーツを履いていた。ただし、太ももが丸出しなので、いざ、足を狙われたら、すぐに出血して大惨事になること間違いなしだ。こちらも、コスプレ会場にしか見ることのできない破廉恥な格好だ。きっと、彼女の職業は騎士とかいうのだろう。女性騎士とかいう奴だ。こんな破廉恥な格好で騎士とは笑ってしまいたくなる。



「はあ。」


 カナデは異世界転移、転生物のお約束事を思い出した。


『女性の服装がむやみやたらに露出していること。そして、勇者となる人物に対して、好意を持ち、最終的に転生者である勇者にぞっこんでハーレムエンドだということ。』


 その中の、女性の服装が当てはまってしまっている。ということは、近い内に出会うことになる勇者にこの女性たちは惚れてしまうのだろうか。


 つい、思ったことが口に出してしまったが、幸い、二人には聞こえていなかったようだ。


「こんなところで長話も危ないし、あなたも一緒にきますか。これから街にいこうと思っていたところなのです。」


 イザベラと呼ばれていた鎧をまとった女性が、カナデに一緒に来ないかと誘ってきた。 


「ぜひ、お願いします。ああ、すいません。一緒に行くということなら、自己紹介しなくては。私の名前はカナデと言います。」


 カナデは素直に誘いに応じることにした。このままここに居ても、何も進まないと思ったからだ。自分が今どこにいるのか、魔王の情報も聞く必要もある。


「カナデ、ですか。私はイザベラ。こちらの少女はエミリアです。」


 カナデが簡単に自分の名前を紹介すると、イザベラも名前を教えてくれた。隣の少女は特に付け足すことなく、カナデにかるく会釈する。


 自己紹介が終わったとばかりに二人が歩き出す。慌てて追いかけるカナデ。そこで、驚くべき発言がイザベラから飛び出した。カナデが予想もしていない質問だった。




「カナデと言いましたか。あなたは、どちらですか。」


「どっちと言われても、同性愛者ではないと思いますが、異性を好きになったことも、愛したこともないですし。しいて言えば、二次元を愛する部類のオタクですかね。三次元の人間には興味ありませんし。」


 イザベラが問いかけた質問の意味がわからないまま、とっさに思いついた答えを口にするカナデ。しかし、イザベラが発した質問は好きになる趣向を訪ねていたのではなかった。とはいえ、イザベラの疑問は白いローブをまとった少女、エミリアによって解決された。


「この人、女だね。」


「な、初対面の人のどこを触って。」


「男みたいだけど、胸がある。」


「本当ですか。」


「ああ、性別のことでしたか。私はこう見えて女です。」


「どちらかわからずについ、質問してしまい、申し訳ありません。エミリアも、いつまで他人の胸を触っているつもりですか。」


 聞いた本人であるイザベラは、慌ててカナデに謝罪した。エミリアもしぶしぶカナデの胸から手を離す。しかし、手を離したエミリアはそれ以降も興味津々にカナデを見つめていた。



 町につくまでの間、三人は特に会話なく黙々と歩き続けた。カナデはいたたまれない気持ちになりながらも二人の後を追うのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 確かに冒険者の服装としては露出度高すぎますね。 個人的には異世界も外国の一種だと思うので、日本の服ではなく海外の服の露出度基準で考えてみてもよかったのかなと思いました。
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