11続ハーレム能力発動中です①
シーラを旅の仲間に迎え入れたカナデたち一行は、引き続き、首都「ネームオールドハウス」に向かっていた。
「ユーリ様は、異世界からいらしたということですよね。いったいどのようなところなのでしょうか。」
村を救ったお礼ということで、シーラは成り行きで一緒に魔王を討伐する手伝いをすることになってしまった。異世界転生・転移特有の主人公に対するハーレム能力が発動された結果としか思えない。。シーラもイザベラたちと同じように、「ユーリ様」と呼ぶ声は、甘さが含まれていて、カナデは吐きそうなほど気持ちが悪くなっていた。
「大した場所ではない。ここの方が自分の本来の姿をさらけ出せる気がする。それに、ここは自分の故郷だと思えるよ。」
「くそが。ここがただのキモオタの楽園ということだけだろうが。」
「ああ、なんか言ったかこのくそブス。」
「さあ、見ていってください。奇怪サークルの始まりだよ。」
「ああ、そういえば、サーカスがこの辺を回っていると聞いていましたが、まさか本当に出会えるとは思っていませんでした。全国各地を回っているサーカスですが、ここで見られるとは幸運です。」
たまたま道中に立ち寄った村で、カナデたちはあるサーカス団に遭遇した。広場のようなひらけた場所で、サーカス一団が公演の準備をしている最中だった。イザベラがその様子を見て、興奮したように説明する。
「ここのサーカスは、人間以外の種族の見世物が面白いんですよ。人間もそれはもはや人間とは思えないような技を披露するのですが、それ以上に面白くて、一度生で見てみたいと思っていました。確か、一番の見世物は、獣人によるパフォーマンスです。」
「じゅ、獣人とは、も、もももしや。これは、何としてでも、見なくては。これが本当ならオレのハーレム計画がまたさらに……。」
「ケモミミロリとか、ケモミミ美少女がいるということか。ということは……。いや、絶対だめだ。彼女たちがいるという可能性は少ないが、それでもここを急いで離れなければ…。」
ぶつぶつとユーリとカナデは独り言をつぶやきだした。イザベラの話を聞いて同時につぶやきだすので、周りから見たら、可笑しな二人だと思われているだろう。ただし、そばにいたのは、ユーリに心酔している美少女たちのみ。ユーリを心配するように周りでおろおろするばかりだった。
「あら、始まるみたいですよ。」
ソフィアがサーカス一団を指さすと、道化師のような男性が開始の合図をしているところだった。
「まずは私たち人間の技をとくとご覧あれ。」
ステッキを何本も持った道化師は全てを一気に宙に放り投げた。それを一本キャッチしては放り投げるを繰り返す。見事なジャグリングを披露する。くるくると際限なくステッキは宙を舞う。それが始まりとして、様々な人間が技を披露する。あるものは、一輪車に乗ってぐるぐると輪を描き出す。あるものは水のようなものを口に含み、その場で吐き出すと、火が出ていた。
広場に集まった観客からは、技が披露されるたびに大きな歓声と拍手が沸き起こる。もちろん、そこから少し離れた場所から見ていたカナデたちも素直に賞賛の拍手を送っていた。
「では、我々はここまで。次は、皆さまお待ちかねの獣人による技の披露となります。」
道化師が一礼して、その場を去ると同時に、一台の大きな檻が観客の前に姿を現す。檻の大きさは人一人が余裕で入りそうなもので、赤い布で全体を覆われて中を見ることはできない。檻を運んできた仮面をつけた女性は、恭しく赤い布をめくる。
「バサッ。」
布を採られた檻の中には、一人の少女が鋭い目つきで観客をにらんでいた。殺気と憎悪を含んだ視線を受けた観客はほう、とため息をつく。不愉快な視線を送られていても、それを凌駕する少女の美しさにため息がこぼれたのである。
「こ、こここここここれが、噂の。」
『ケモミミ美少女』
「今回の目玉となります、獣人の中でもとりわけ身体能力が高く最も美しいとされる狼の獣人のウルフです。では、ウルフ、お客様にさっそく見せてやりなさい。」
キッと道化師の方を睨みつける少女。彼女は明らかに人間ではなかった。茶色いつやのある髪の間には同色の獣、狼の耳らしきものが二つ飛び出している。髪はさらさらと背中に流れ、腰のあたりまである。身体の後ろからはふさふさとした人間には生えることのない、見事な毛並みの尻尾が主の気持ちを反映しているかのように逆立っていた。瞳は真っ赤な深紅でその瞳が見るものを魅了する。少女は、サーカスの見世物をするために、豪華な衣装を身につけていた。赤い燕尾服に黒の太もも露わなほどのミニスカートを履いていた。足には黒い太ももまであるニーソックス。お尻からは尻尾が見えている。
毛を逆立てて威嚇してはいるものの、逆らうことができないと知っているのだろう。観念して、その少女は立ち上がる。それを合図にそばで控えていた女性が檻のカギを開ける。
「ご紹介にあずかりました獣人、狼族のウルフです。今日はおあつまりいただきありがとうございます。最後まで楽しんでもらえると嬉しいです。」
少女は檻からゆっくりと出て、ふう、と息を吐くと、一度目を閉じる。目を開けると、少女とは思えぬ声を発する。まるで、狼が仲間を呼ぶための遠吠えのごとく。
「わおおおおん。」
その声はあたり一帯に響き渡る。
「まさか、仲間を呼んでいる、のか。」
「狼の遠吠えってそれしかない、けど……。」
ざわざわと観客に戸惑いが広がっていく。遠吠えらしき叫びを終えた少女は、これで自分の役目が終わったと言わんばかりに静かにまた目を閉じる。
時間にして数分が立っただろうか。恐ろしいほどの沈黙があたり一帯を支配する。誰も声を発することができなかった。
「ワンワン。」
「キャンキャン。」
「あら、私のかわいいチワワちゃんがなぜここに。」
「俺んちの犬もだ。」
沈黙を破ったのは、大小さまざまな大きさの犬たちだった。わらわらと広場に集まってくる。どうやら、この村の人々が飼っている犬たちらしい。それがこの広場に一堂に会しているのだ。驚きの光景が目の前に広がっていた。
「これが狼族の特徴である遠吠えとなります。彼らはイヌ科の動物を従える力を持っています。そして、ここからが彼女の真骨頂。」
道化師の男性が観客の目の前に現れて説明する。説明を受けた彼女は感情のこもらない瞳で集まった犬たちと向き合う。
『殺せ』
一言、犬たちに命令を下す。
『ワン。』
まるで、彼女が飼い主であるかのように、犬たちは声をそろえて、一声鳴く。それを合図に犬たちはすぐに行動を開始する。
「キャー。」
「ど、どうしたの。チワワちゃん、私はあなたのかいぬ、し……。」
広場は一瞬にして、混乱に陥る。彼女によって集められた犬たちは広場の観客に襲い掛かる。逃げまどう観客と追いかける犬たち。
「これほど面白いことはないでしょう。これこそ、観客と一体のショーというもの。今回もさすがというべきですね。」
その様子を止めるでもなく、面白そうに鑑賞するのは、道化師の男性。いつの間にか狼族の少女は檻の中に再び収容されていた。




