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2.魔王の誕生

お待たせしました、第二話です

 ……なんかガヤガヤと賑やかな声が聞こえるな。

 あれ、俺ってどうしたんだっけか……?

 確かパシリさせられて、途中でと会って話しながら階段上ってたら、後ろから駆け上ってきた奴がぶつかってきて……落ちて死んだんだ。

 んでもって、女神が現れて転生させてくれるって……転生!!

 てことは猛獣になれたのか!?


 「がるあああああああああ!!!(うおっしゃあああああああ!!!)」

 「おお!我らの王がお目覚めになられたぞ!!」

 「王よーーーーー!!!」


 ん??

 なんか、俺の獣のような雄叫びの後に何か言われたような?

 周りを見渡せば、俺は城の広間みたいなとこにいて、喜びに溢れている人間ではない異形の生き物で囲まれていた。

 え、なにこれ?

 ポカンとしていたらいきなり周りにいる異形達が跪き始めた。

 え、なんか怖いんですけど。

 OKOK、ちょっと現状を確認しよう。

 死んで目が覚めたら異形の何かに囲まれていて、俺の身体は……青と白の毛皮で覆われていて、なんだかすげぇでかい狼っぽくなってる。……狼でいいんだよな?

 ここ、日本じゃなくてどっかの国か?

 一匹の人間に角があって、黒くて長い……蝙蝠みたいな奴が俺の前へと近づき、跪いてきた。

 コイツ、悪魔か何かなのか?


 「魔狼王フェンリル様、お目覚めでなによりです」

 「あー、おう。で、ここはどこなん?」

 「ここは魔界の魔王城、王の間でございます」


 ……はい?


 「わりぃ……もっかい言ってくんない?ここは……なんだって?」

 「ここは魔界の魔王城、魔王の間でございます」

 「え……魔界?いやいや、ここは日本のどこかじゃ……?」

 「はぁ……ニホン……とはなんでございますか?」


 え、日本を知らない?

 てか、考えないようにしていたがそもそもこいつらはどう見ても地球にゃ存在しないようなファンタジーの魔物だよな?

 てことは……だ。俺はファンタジー世界に転生しちまったのか?しかも魔物に?

 あの駄女神(クソガキ)……なんつーとこに転生してくれてんだよ!!

 俺は確かに猛獣にとは言ったよ?猛獣っちゃあ猛獣だけどさ、なんで異世界なわけ?

 異世界にとか言ってなかったろうがよ!

 数秒前に一瞬でも喜んでしまった俺を殴ってやりた……いや、無理だからガブッと噛みついてやりたい。喉元に。

 あと、悪魔みたいなのは俺のことを魔狼王フェンリルとか言ってなかったか?

 それってアレだろ?北欧神話だかなんだかに出てくるやつやゲームや漫画、小説とかにも出てくるやつ。

 え、つーことは、この現状からして俺のポジってまさか……


 「現在、魔王様は勇者と相打ちにより滅んでしまいました。どうか魔王となり、あなた様のお力で我らをお導きください!そして人間どもに制裁を!!」

 「お願いします!!」


 うるっせぇぇぇ!!んな同時に大声出すなや!(耳を(まえあし)で塞ごうとしたけど人間の名残で頭にある耳ではなく顔の横を押さえたのは内緒)

 てかやっぱり魔王ポジかよ!!こっちは転生したてホヤホヤなんだぞ!

 しかも転生前は平凡な一貫の高校性だったんだぞ?それをいきなり魔の王になって導けと?

 

 「ガルァァァァァァァァァァ!!!(できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」

 「な、なぜですか!?」

 「ガル!!ガルア?ガアァ!(なぜもへったくりもあるか!!こちとら、この世界のことを全く理解できてないのに魔王になってお前達を導いて人間を襲えだぁ?んなことできっか!!今の俺には上に立つ器も大群への指揮力もねぇんだよ!だいたい、俺は元は人……)」


 まてよ?今の俺は体がでかくて強そうでも生まれたて同然だ。

 ここにいる魔物全員人間を恨んでるみたいだし……そんな中、俺は元は人間だなんて言ったりなんかしたら……


 『なに!貴様は人間だったのか!!』

 『魔狼王であるフェンリル様の身体を乗っ取るなんてなんて奴だ!きっと我らを洗脳して、この魔界を我が物にしようとしてるに違いない!!』

 『今のうちに殺せーーーー!!』


 なんてなるかもしれない……

 転生してすぐ殺されてたまっか!!

 何とかしてここから逃げ出さなくては……


 「元は……何でしょうか?」

 「……と、とにかく無知な獣の俺がやんなくてもいいだろ!お前達で勝手にやってろ!!」


 立ち上がってとっさにヒョーイと魔物の大群の上を飛び越えて部屋から逃げ出す。

 うおう、なんつー脚力だよ。一気に飛び越えちまったよ。

 でも、四足で走るなんて初めてだからうまく走れない……


 「フェ、フェンリルさま!?」

 「追いかけろ!!説得して我らの王に!!」


 げげ!!すげえ勢いよく追いかけてきやがる!こちとらこの体に慣れてないからフラフラなのに!!

 しかも体がでけぇからどっかに隠れてもすぐ見つかっちまう。

 あー、もう!しつっこい!!

 いつの間にか走るのは慣れてきたこの体で、広く長い通路走っていたら先の方で光が点滅しているのが見える。

 あそこが外か?

 その場所を目指して突っ走って、俺は急ブレーキをした。

 だって、ね?

 外っちゃあ外だけど、そこは小さなバルコニーで、空は暗雲なうえに雷が鳴り響いていていた。

 うん、魔界だわ。ゲームや漫画であるようなファンタジーな魔界だわ。

 恐る恐る下を見れば、かなり下の方でいろんな魔物が黒い長蛇の列を作っていて、俺の姿を見るなり超大歓声な声をあげているのにヒクついてしまった。


 「この場にいる全ての魔物があなたの下に就く者達です。皆、あなた様を必要とされてるのです」


 あ、あれだけ走ったのに息を切らしてないんですね。感服します。

 そして、今の俺はガビ~ンという表情をしてるんだろうなぁ。

 したくなるよ。精神は人間なのに、この景色を見てしまったら。

 さらには魔族の王として、だもんなぁ……はぁ。

 体は魔族だとしても心は人間。

 ここで首を縦に振ったら魔王になるどころか、さらには人間の敵になるオマケ付き……この状況に負けるわけにはいかない!

 だけど……


 「どうやってこの状況から抜け出すかなぁ……」


 さすがにこっから飛び降りて逃げるのは……無理だよな。

 たぶん普通に捕まる可能性より怪我して動けくなって捕まる可能性の方が圧倒的に高い。

 あれ、これ詰んでね?

 ……いや、ほぼ賭けだけど飛び降りて魔物共をクッションにすれば……さすがに可哀そうか。

 ヤバイ、他になんも思いつかねぇ……

 ぐおぉ……マジどうしよう!


 「フェンリル様、どうかご決断を」


 チラッと見れば期待に満ちた表情の魔物達。

 はぁ……仕方ない。こうなったら腹をくくるか。

 

 「狼地」

 「……はい?」

 「俺の名前だ。トップに立ってほしいなら俺の名前くらい覚えろ」

 「狼地様……!」

 「狼地様!狼地様!!」


 どわああああぁぁぁぁ!!という歓声が上がった。

 やっちまった……これで後戻りができないぜ……

 そういやぁ、アイツはどなったのかな?

 翔太はたしか、「人間ならなんでも」とか言ってたから、俺が魔の王ならアイツは人間の王なのだろうか?

 ……こんな事になるなら猛獣じゃなくて人間て言っとくべきだったぜ。

 しかし、どうすっか?

 コイツ等は人間を滅ぼそうと考えてるに違いない。

 しかし、元人間である俺が人間と戦うのは嫌だし、命令すんのも嫌だな。

 ならば……ブーイングや反発が来るかもしれないが……言ってみるか。


 「よし、ならば最初の命令だ。自ら人間に戦いを挑むな」

 「……はい?」

 「もちろん、向こうから仕掛けてきたのならやむを得ないが、こっちからは仕掛けるな。そして殺すな」

 「な、なぜです!?奴らは我々の同胞を……」


 ザワザワと騒ぎ出す魔物達。

 うーん……やはりこういう反応か。


 「大方、同胞を殺されたからって仕掛けて……返り討ちにあってんだろ?だったら仕掛けないで極力無害にした方がいい。そうすれば向こうも好き勝手に俺達を殺したりはしなくなるだろうさ」

 「で、ですが……」

 「なら聞くが、殺しあって永遠に被害を大きくしていくのと、最初を我慢して被害を少なくしていくのと……どちらがいい?」


 悩む魔物がいれば、ザワめきながら近くの誰かと話しあう魔物がいる。

 ゲームとかだと知性が無いように感じてたけど、実際はちゃんと理性はあるんだなー。

 さて、こいつらは俺の意見を賛同してくれるのか……?


 「……そんなうまくいくでしょうか……?」

 「んなことしらん」

 「は!?」

 「俺はこっちの世界の人間を見たこともないからな。だが、向こうが変えないのなら、こっちが変えないとこのループは永遠に続くし、被害も甚大だぞ?」

 「……」


 言ったぞ。もう後戻りはできない。

 これが吉と出るか凶と出るかは賭けになるが、これで人間への攻撃も減るはずだ。

 ま、この意見が通れば……だが。

 頼むから、裏切り者だから殺せってことになるなよ……

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