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~~桃原side~~
まさか南雲君のクラスを西條先輩に教えるだけでと一緒にご飯を食べれるなんて思っていなかった。とても嬉しい。
一応私も自分の容姿には自信がある。入学してわずか一週間で10人に告白された。でも、西條先輩には敵わない。去年の全国選抜高校テニス女子シングルスで優勝。あの時の西條先輩は忘れられない。とても格好良かった。だから私は愛美と一緒に天門学園を受験した。
愛美は私の親友で、本音で何でも話せて、喧嘩もよくするほど仲がいい。そして、テニスではライバルだ。中学の頃は常に競ってきた。6勝8敗 私は愛美に負け越しているけど、力の差を感じるわけではない。私が圧勝するときもあるから。
「どうしたの愛美ちゃん。あ、もしかして、妬いちゃってる?」
西条先輩は小悪魔な笑みを浮かべて愛美に問いかける。
「な、何言ってるんですか!べッ別になんとも思ってないですから!変な勘違いしないでください!」
そう、愛美はすごくわかりやすいの。こうして強がっているけれど、本当は恥ずかしいってことも知っている。中学の時も、そして今も、ずっと南雲君のことを見ていたことも知っている。幼馴染って聞いたときは驚いたけど、今となっては当たり前のように感じる。
「愛美ってわかりやすいよね。」
「ちょ、ちょっと!優美果までなに言ってるの!?ほ、ほんとになんとも思ってないからね!?」
「はいはい、じゃあそういうことにしておきますよっ」
愛美や先輩が楽しそうに会話しているのを見て俺は自然と笑みが零れた。それと同時に俺たち男子二人は完全に置いてけぼりなっていた。
「大門の存在感が全然ないな…」
「や、やめろ…おれだってもっと会話したいよ!ちくショー!なんで朝陽ばっかり!!」
すると西条先輩がまた卵焼きを俺の口元は運んできた。
「南雲君、はい、あ~ん」
「先輩、もういいです。これ以上されると俺のメンタルが…!!」
「むぅ…わかった。そんなに私の卵焼きが食べたくないんだ。いいよ。あとは自分で食べるから。」
「ああああ、冗談っすよ冗談!!もっと食べたいっす!あ、ついでに大門くんにもあげてくれるとうれしいな~なーんて!」
「ふふふっ面白いね南雲君。今のは態とだから、そんなに無理しないで。」
和気藹々とした雰囲気で昼食を摂っていたら、ラウンジ内が黄色い歓声に包まれる。
「キャー!柏木先輩と神宮寺先輩よ!!」
「二人が揃っているなんて夢みたい…」
「いつみても格好良くて、美しいです…」
「やっぱり西條先輩がお目当てかしら?
「いや、あの一年生二人の可能性もあるわよ・・?」
俺の耳にそのような会話を聞いたので、西條先輩と愛美と桃原を見た。すると先輩と桃原が、一瞬暗い表情をしている気がした。たぶん気のせいだろう。
「よお!、陽菜ちゃん、優美果ちゃん、愛美さん。」
「一緒にランチでもどうだい?」
よお!と元気よく挨拶をしたのが黒髪でマッシュヘアの柏木蓮だ。身長が高いゆえに顔も小さい。スタイル抜群だ。そりゃ女子からキャーキャー言われんのもわかる。てか納得せざる負えない!
そしてランチに誘ったのが神宮寺和人。金髪でいかにもおぼっちゃまって感じだ。実際そうなんだろうけど。高身長、小顔、鼻が高い。イケメントリプルスリー、天門学園の山田○人だ。
先に口を開いたのは西條先輩だ。
「すみません先輩。今日はこの方たちと食べる約束をしていたので。」
笑顔で、そしてどこか悲しげな表情で西条先輩は断りの返事を言った。
「うわああまじかーなら俺たちも混ざっていいかな?」
「蓮、それは勝手すぎるぞ。それに席が足りない。無茶なこというな。 ごめんね。蓮が勝手なことを言って。また今度お願いしようかな。じゃあね。陽菜ちゃん、優美果ちゃん、愛美さん。あと、そこの男子二人も。」
神宮寺先輩が俺たちに謝って、二人はその場から離れようとする。たぶん、西條先輩たちに恋心を抱いているのだろう。そして逆もまた然り。そうなると邪魔なのは俺だ。俺が退けば二人分の席が空き、先輩二人は座ることができる。だったら俺がとる行動は一つだ。
「あ、待ってください!俺、先生に呼び出されててもうすぐ行かなきゃいけないんですよ。だからどうぞここの席を使ってください。」
イケメン二人は一瞬驚いた。そして黒髪イケメンが口を開く。
「えっ!ほんとに!なんだお前いいやつだな!ありがとう!」
爽やかスマイルを俺に向ける。なになに、チョーカッコイイんですけど。
「本当にいいのか?すまないな。」
「いやいや、そんな感謝されるほどのことでもないっすよ。じゃあごゆっくり!!」
俺は一目散にその場から消えた。大門を置いて。