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「さて、昼飯作るか。」


朝陽は手慣れた手つきで玉ねぎと小ネギをみじん切りにし、フライパンに油を引いて、米をフライパンに入れた後に溶いた卵を投入し、卵に少し焼き色がついたら玉ねぎ、小ねぎ、焼き豚を投入し、玉ねぎの香ばしい香りを漂わせながら炒めていた。するとドアが開く音が聞こえた。

妹の美惚が帰ってきたのだ。


「お、おかえり」


「…」


美惚は、大きくて綺麗な黒い瞳を少し細めて、一瞬、朝陽のことを睨んだ後に、自分の部屋に入る。


「また返事くれなかったな…」


美惚が中学生になって以来、(朝陽が中学二年生)2人はあまり口を聞かなくなった。どちらかというと美惚が朝陽のことを避けるような感じで距離が空いてしまった。


「まあしょうがないよな。こんなダサい奴が兄貴なんて避けたくもなるよな…」





中学の時、朝陽はイジメられていた。その理由には、愛美が関わっていた。朝陽は、愛美と幼馴染で仲が良かったため、周りからの嫉妬や妬みが凄かった。それが原因でイジメが始まった。イジメの原因を朝陽は知っていたため、愛美と距離を置くようにした。愛美に被害が及ばないように。

そして中学二年になり、美惚が同じ中学に入学した。美惚はすぐにクラスの中心人物となり人気者に。校内でも学年問わず告白を何回も受け、告白される度に断っていた。


そんな時、自分の兄、朝陽が三人の柄の悪い人たちにイジメられている現場を目撃してしまった。



「おーい南雲くーん。いつ美惚ちゃんを紹介してくれんのよー。」


「綾瀬さんはあのイケメン野郎に狙われてるから俺ら勝てっこないしなー。」


「だからよー 美惚ちゃんを俺らに渡してくんね?」


「う、うるせぇよ。美惚をお、お前らなんかに渡すわけねぇだろ…!」


「チッ わからねえ奴だな。こいつ見てるとほんと腹立つわ。おい、一発殴らせろ。そしたらもう関わらねーからさ」


朝陽の顔にめがけて拳が飛んでくる。



「ブハァッ!」


「お、おい顔はまずいだろ…」


「いいんだよ。どうせこいつには先生にチクる度胸もないしな」




その光景を、美惚は見てしまった。美惚はその場から動けなかった。ただ立ち竦んでいた。頭の整理が追いつかなかった。現実を受け入れられなかった。自分のせいで兄がイジメられているなんて思ってもいなかった。

朝陽と目が合いそうになったから、それを避けるようにして走ってその場を後にした。


ガチャ


「ただいま〜」


朝陽が帰宅し、リビングに向かう。


「おう、美惚。今日は早いな。部活は無かったのか?」


「ちょっと途中で抜けてきた。」


「はあ?何があった?もしかして体調が悪いのか?熱でもあるのか?と、とりあえず薬飲んだけ。なにかあってからじゃ遅いからな!」


朝陽が急いで薬箱を取りに行こうとした時だった。


「ねえ、なんで私にそんなに優しく接するの?」


朝陽は美惚の方へ振り向き、呆気とした表情をして、美惚に言う。


「急にどしたんだよ…そんなの大事な妹だからに決まってるだろ。 てかお前がそんなこと聞いてくるなんて珍しいな。なんだ、友達と喧嘩でもしたか?」


「…いや、なんでもない。薬とか要らないから。私部屋に戻るね。」


「お、おう。なんかあったらすぐに言えよ。」


朝陽は美惚のことを心配しつつ、水分を補給する。


あれから二時間が経ち、そろそろ母である裕美子が帰ってくる頃だ。


「ただいま〜ごめんねーしょうちゃん、今すぐ食卓の準備するから。あれ、美惚は部屋に居るの?」


「おかえり。ああ、なんかあいつ体調悪いみたいだわ。部活も参加せずに途中抜け出して帰ってきたってさ。」


「あら、そうなの…心配ね。とりあえずご飯作るから、美惚を呼んできて。お願い。」


「はいよー」


うちの家は二階建てで、玄関を真っ直ぐに進んだところにリビングがあり、玄関に入ってすぐ右手前に階段がある。朝陽は二階に行くため、階段を登ろうとした時。


「お、朝陽。ただいま。」


「あ、父ちゃん。おかえり。今日速早いね。」


「今日から仕事は早く終わるからこの時間には帰ってこれるよ。最近家族みんなで食卓囲むことがあまりないからな!今日は楽しみだ!」


「そっか。今母さんがご飯作ってるから先に風呂入っちゃえば?」


「そうするか〜じゃあお先に」


「うい」


この時朝陽は少し疑問に思った。なぜ仕事で重役を任されて居る父がこれから早く仕事を終えて帰宅できるのか。これまでそんなことは無かった。もしかして失敗したのだろうかと心配になったが、わざわざ聞くのもあれかと思い、特に何事もないように振る舞った。


美惚の部屋は朝陽の部屋の隣にある。朝陽は扉をノックして美惚を呼ぶ。


「おーい。もう夕飯の時間だ。そろそろ降りてこい」



美惚からの返事はない。


「お、おい。寝てんのか?ドア開けるぞ。」


扉をあけて部屋を見渡すと美惚がベットの上で体育座りをしながら俯いていた。


「なにやってんだ。ほんとに体調悪いのか?」


「……なんでもいいでしょ…」


そう言ってそそくさと部屋を後にし、リビングに向かって言った。


なんなんだよ…急に…


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