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「わーもやしラーメン美味しそう!こっちをメインで頼むべきだったかな〜」
「遠慮なくどうぞ。俺朝ごはん食べすぎたからあんまりお腹減ってないんだよね。だから1人じゃどうせ食べきれないよ」
「…優しいんだね。南雲くんは」
「いや、むしろ食べてくれる桃原さんの方が優しいと思う」
楽しくラーメンを食べていた2人だが、ある人影が近づいていることに気がつくはずもない。
「あ!朝陽じゃん!なんだお前も来てたのかよ!」
振り返るとそこには大門の姿があった。
「おお!大門も来たんだ。奇遇だね」
「いやー俺の一言でラーメン食べることになっちゃってさー」
そう言って朝陽の隣に座る。すると呆然としていた優美果の表情が一気に明るくなる。
「愛美ー!まさかこんなところで会えるなんて!」
「あ、優美果!……と朝陽…」
愛美が朝陽に気がついた途端、体に衝撃が走る。優美果が愛美に抱きついたのだ。
「ちょ、ちょっと優美果!?こういう公共の場では迷惑になるでしょ?」
「ごめーん。つい嬉しくて…」
2人の空間を楽しむ間も無く、榊が優美果に声をかける。
「やあ優美果さん。君たちも来ていたんだね。隣、いいかな?」
「ご自由にどうぞ。さあさあ愛美!私の隣に座って!」
隣に座ろうとするが、問題が起きる。
朝陽と優美果お互い向かい合って座っており、その両サイドに2人分の席が空いているという状況になっている。つまり、愛美の班は2人ずつに別れる必要があるのだ。
その状況に気がついた愛美がどうしようかと榊と甲斐に問いかける。大門はすでに朝陽の隣へ座り、2人で話をしている。
「うーん。甲斐さんはどうする?」
榊に問いかけられた甲斐はなにかを察したのか、自ら大門の向かい側へ座る。
「あ…じゃあ私と榊くんはこっちにしようか」
そうして愛美は優美果の隣へ座り、榊は朝陽の隣へ座る。
愛美はメニュー表を見ながらなにを頼もうか考えている。
「メニューどうしようかな。優美果はなにを食べてるの?」
「私はこの風風味噌ラーメンを食べてるよ。あ、南雲くんはもやしラーメンだよ」
「…そうなんだ。じゃあ私はゆず塩ラーメンにしようかな。榊くんはもう決まった?」
「僕は豚骨ラーメンにするよ」
店員を呼び、2人は注文を済ませたあと、再び愛美と優美果は話し始めた。
ーーー ーーー ーーー
「大門はどうするんだよ」
「俺?俺はもう決まってるぜ。この風風メガラーメンにな!」
「絶対チャーシュー食いたいだけだろ…あ、えっと、甲斐さんは決まった?」
「私はチャーハンだけにするわ。お昼はあまり胃に食べ物を入れたくないもの」
大門と甲斐も注文を済ませ、あとは出来上がるのを待つだけとなった。
「にしても朝陽のラーメンすげーな。もやししかねーじゃん」
「俺もびっくりしたよ。写真以上に山盛りになってたからさ…」
すると甲斐はカバンから本を取り出した。最近発売され、snsがきっかけで有名になった「99」というミステリー小説だ。
朝陽は昔から小説が好きで、特にミステリー小説は好んで読んで読む。だから99が発売されたことも知っている。
「あ、甲斐さん99読んでるんだ。それ面白いらしいね」
「あら、あなたご存知なの?」
「まあね。最近有名だし、結構評判いいって聞くよ」
朝陽と甲斐は共通の話題があり、その話で会話が続く。99を知らない大門も興味を示し、上手く会話に溶け込み、三人で会話が弾む。
4人の料理が届き、食事を始める。お腹が空いていたのか、大門は物凄い勢いでラーメンを食べ進める。甲斐と榊も黙々と食べ進めていた。愛美は、あまり箸が進まないようでいる。朝陽は気になったのか視線を愛美の方へやる。すると愛美と目が合ってしまった。
「…朝陽はもう食べ終わったの?」
「ん?あ、あぁ…もう俺はお腹いっぱいだよ。あとは桃原さんが食べるみたいだから」
2人のやりとりに大門は目を丸くする。
「…は?な、なんでお前下の名前で呼ばれてんだよ。羨ましいぞちくしょーが!!」
「は、はぁ?べ、別になにも問題ないだろ?」
「大問題だよ!だってあの綾瀬さんだぜ?学園のマドンナだぞ!?学園のマドンナがなんでお前のこと下の名前で呼ぶんだよ!そんなに仲よかったっけ!?」
学園のマドンナと言われたことで、愛美は頰を赤くする。
「いや、ただ昔から馴染みがあるだけだよ…別に特別な関係じゃないから気にするなよ。ていうかとりあえず落ち着け」
愛美の表情が一瞬にして暗くなる。
「なんだそうだったのか…いや待て、綾瀬さんが幼馴染ってことは…まさかお前…綾瀬さんの色んなところを見てきたんだな!?綾瀬さんのありとあらゆるところを…!」
「ば、バカ!何言ってるんだよ!そんなことあるはずがないだろ!?」
「いや、朝陽のことだ…朝起こしに来た綾瀬さんに抱きついたり、浴室でばったりと会って綾瀬さんのすべてを見てしまってバスタオルを投げつけられたり…」
大門ワールドが展開され、誰も手に負えない状況になった。たった1人を除いて。
「食事中はあまり騒がないで貰えないかしら。下品だわ」
甲斐さんの一言で大門はすぐさま正気に戻る。
「す、すみません…」
大門が謝罪を述べたあと、朝陽は甲斐に感謝と謝罪を含めて小さく頭を下にする。
「お、驚いた。愛美さんと南雲くんは幼馴染だったんだ。初めて知ったよ」
「う、うん。まあね…」
榊、大門、甲斐の三人に幼馴染だということを知られ、朝陽は少し気が落ち着かないが、その場は一先ず収まった。