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処女作です。表現力や語彙力の乏しさに関してはご了承ください。
「…いいか朝陽……幼馴染の愛美ちゃんや、友達、自分と関わってくれる人達に優しくしなさい。そして……母さん…と美惚のことを……頼んだぞ。お前が守ってくれ…!」
父ちゃんが最期に残した言葉だった。俺は父ちゃんを心から尊敬していた。何事にも真っ直ぐで、本気で…。俺たちのことを大切にしてくれた。どんなに忙しい時でも、どんなに疲れていても、いつも笑顔で話をしてくれたし、嬉しかった。そんな父ちゃんが大好きで、とても尊敬していた。
でも、その父ちゃんは二年前に癌で死んだ。あの時本当に泣きたかった。悲しくて、辛くて、尊敬していた父ちゃんともう逢えないって思ったら自分の精神が壊れそうになった。けど俺は耐えた。父ちゃんと約束したから。人に親切にし、母ちゃんや美惚を守るって。
これから大切な家族を守る俺が泣いていたら情けない。父ちゃんに合わせる顔がない。常に自分に自己暗示してきた。
俺のことはいい。母ちゃんや美惚、友達に悲しむ顔をさせないようにしろ。
と。
俺は中学に上がってからイジメを受けた。周りには迷惑が掛からないようにと幼馴染である愛美とは距離を置いた。そして愛美が誰かと付き合っているなんて噂も聞いた。俺は悔しかった。だがそれと同時に、愛美が幸せなら、それが一番良いとも思った。俺みたいな奴といるよりもずっと良い。
俺は受験勉強を頑張った。父ちゃんにいつ見られても堂々と居られるように、大切な人たちを守るために、良い高校に行って、良い大学に進学して、良いところに就職して、家族を養ってやろうと思った。まるで、愛美やこれまでの繋がりから逃げるように…
そしてこの門をくぐる
天門学園高等学校
〜入学式〜
新入生代表、綾瀬愛美さん
「はい」
俺は驚きを隠せなかった。なぜ愛美が居るんだ。とても申し訳なく思った。もし俺と愛美が幼馴染だなんてことが知れ渡ったら…極力愛美と会わないように学園生活を送らなくてはいけない。それが、俺に出来る唯一の手段だ。
クラス分けの表が張り出され、1〜7組まであるなかで、俺は6組だった。俺は黙々と6組の教室に向かう。周りはすでに友達ができて居る奴がそこそこ居た。もちろんまだぼっちみたいな奴もいる。俺みたいにね。
一部人集りが凄い。なんだろうと思って見てみるとそこの中心には愛美がいた。昔から変わらず、周りから凄い人気だ。少し羨ましいと思ってたりする。羨ましいって思うってことは恐らく自分には無いからなんだろう。だから羨ましいって思っても仕方がない。だって自分には持っていないから。
教室に入るとまだ4人しか居なかった。多分下で友達作りが早速始まっているんだろうなぁ。
十分ほど経つとかなり人が増えてきた。さっそく会話の声が聞こえてくる。友達作るの早いなーと思いながら、HRが始まるまでぼーーっとしていたら教室が騒めいた。そう、奴が入ってきたのだ。
「あ!新入生代表でスピーチした人じゃん!」
「か、可愛い…」
「付き合ってください!!」
今告白するんかい。タイミングがあるだろ…男子はテンション爆上げ、女子も愛美に見惚れていた。まさに、カオス
「はーいみんな静かにしてー!HRを始めます。今日から一年間みんなの担任になりました。清水清香です。よろしくね!」
これまた綺麗な方だ。見た目からして、20代前半だろうか。ここの学校の偏差値は70で、バリバリの進学校だ。並みの教師じゃあ務まらない。恐らく難関大学に行ってたんだろう。高学歴で美人でスタイル良い。勝ち組じゃねーか。
「早速なんだけど、まずは自己紹介からしようか!じゃあ一番右の席の子から順番にどうぞ!」
ちなみに、教室の机は横に6縦に7の状態で並べてある。俺は右から二番目の7列目に座っている。
「桃原優美果です!みなさんこれから三年間よろしくお願いします!」
前の席の子が終わった。次は俺だ。俺の前の席に座っている子は、柔らかい笑顔でクラスの男性陣を魅了している。
「じゃあ次!」
「南雲朝陽です。みんなの役に立つように頑張ります。よろしくお願いします!」
こんな感じで良かったのかな?まあ、特に特徴ないし、平凡な感じで収まっただろ。と思ったら、クラスの男子生徒2人が反応した。
「はーいはーい。じゃあ俺の恋を叶えて!」
「何言ってんだバカ。お前の恋なんかどうでもいいわ。」
そんな冗談を言ってくれたおかけで、教室は笑いに包まれる。そのまま自己紹介が続き、そして…
「綾瀬愛美です。好きなことは、友達とお話しすることです。みんないっぱい喋ろうね!」
誰もを魅了する笑顔で自己紹介をした。男子生徒のほとんどは鼻血を出したり、顔を真っ赤に染めたりする。破壊力は抜群だったようだ。
そんなこんなでHRが終わった。
HRが終わってからクラスのみんなが愛美のところに集まって楽しく雑談していた。俺は用事があるのでさっさと帰ることにした。
この時は気づいていなかった。綾瀬愛美が帰ろうとする南雲朝陽のことを目で追っていたことを……