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金曜の帝国  作者: 由利 唯士
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メリンダ13

 メリンダが大学の食堂でランチを食べていると携帯の呼び出し音が鳴った。FaceBookのメッセンジャーの音だ。

 液晶画面を見るとポールの彼女のシェリルからだった。

 珍しいこともあるもんだ、と携帯を取り上げながらメリンダは思った。

 シェリルの(フラナリティ)はWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントの略語)のお嬢様しか入れない寮で、お友達は基本全員金髪(ブロンド)だけだ。メリンダのような黒髪(・・)とはあまり親しくしない。

 メリンダとシェリルに接点があるのはお互いの彼氏がルームシェアしているからであって直接仲が良い訳ではない。

 事実、シェリルとメリンダの直接の接点はFaceBookとインスタグラムの相互フォローだけであり、メールアドレスも電話番号も交換していない。

 ポールとエリックの繋がりから友達申請が来て、断る理由もないから承認しただけだ。

 ちなみに人種の話をすると、エリックはドイツ系で、ポールはフランス系。ビルはアイルランド系である。彼らは全員白人ではあるがホワイトマイノリティに分類される被差別白人だ。

 メリンダの寮だともっと雑多で、ギリシャ系、イタリア系、ユダヤ系が多く、アフリカからの留学生も数名いる。

 メリンダは薄く黒人の血が入っているし、同じ寮生のアナはハワイ系で、ハワイアン、中国とフィリピンの血まで入っているエキゾチックな美女だ。

 これはメリンダの想像だが、おそらくシェリルにとってフランス系の彼氏というのはロマンティックな存在なのだろう。

 両親からフランスっぽい名前がつけられてるしフランス贔屓なのかもしれない。

 単なるリベラルアピールかもしれないが。


 メッセンジャーを立ち上げ内容を読むと。シェリルからの謝罪だった。長くていまいち要領を得ないが、どうやらインスタグラムにアップしたメリンダの写真がツイッターで拡散してしまったということらしい。

 そのインスタならメリンダも確認したはずだ。例のカウントダウンパーティーの時の様子を数枚撮ったもので、別にベロベロに酔ってたわけでもないし、なんらおかしい写真ではなかったがどういうことだろうか。

 むしろメリンダ的にはいつもより美人に撮れていて満足だったのだ。

 少しの間考えてメリンダははっと(・・)した。

 その写真に付けられたシェリルのコメントを思い出した。

 そこには

『フライデーランドを取材してきたメリンダと』

 とあった。

 改めてメッセージを読みかえすと、ツイッター運営からシェリルにメールが届き、該当の写真に削除要請が入ったため削除したとの報告があったのだとわかった。

 そのツイートは1万リツイートされているという。

 そこで再度、不意にメッセージの着信音が鳴りバイブレーションしたのでメリンダは驚いて携帯をテーブルの上に取り落とした。

 見るとシェリルからの追記である。

 シェリルはインスタとツイッターをリンクさせていたのを忘れていて、ツイッターは最近見なくなっていたから気付くのが遅くなったとのこと。

 メッセージには重ねて謝罪の文句が綴られていた。

 シェリルのようなプライドの高い娘がこんなに素直に謝っているという事実と、1万リツイートという数字がじわじわとメリンダにのし掛かってきた。

 これってヤバいのだろうか?

 フライデーランドのファンやネットに巣食う特定厨などに特定されたとして、何が起きるのだろう?





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