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金曜の帝国  作者: 由利 唯士
21/33

クラーク12

本日ふたつめの投稿です。

前にもう1話ありますのでそちらからご覧下さい。

 翌週、クラークがオフィスに入るとプリンターには週末に話した面談リストが既に出力されていた。

 クリスが休日出勤をしてリストを作ってくれたのかもしない。だとしたら自分も誘ってくれたら良かったのに。

 クラークがそう思っているとドアがノックされた。

 顔を出したのは案の定クリスだった。

「見てくれました?」

「流石、早いね、ありがとう」

「それ、病院の名前とか消してありますから大丈夫たど思いますけど持ち出す時とか一応気を付けてくださいね?」

「わかった。ありがとう」

 クリスは同じことをアフレック氏の所にも言いに行ったようだ。

 そういえば今までもらったリスト類は全て院内の規定に沿って、病院名や出力時間、担当者名なども一緒に印刷されていた。

 対してこれは患者名と訪問日時だけがシンプルにプリントされている。

 ひょっとしたら、警察の介入に備えて独自捜査の証拠が残らないようにしてくれているのだろうか。

 確かに、バーンズが本当に犯人と刺し違えて死亡した場合、情報提供という形で他殺及び自殺幇助の疑いがかけられる可能性があるのかも知れない。

 法に裁かれる事はないだろうが、マスコミにでも騒がれたらクリニックとしては大打撃になり得るだろう。

 医師会の判断によってはクリニックが資格停止になるかもしれない。

 あるいはアフレックとクラークの資格剥奪処分ということも考えられる。

 今までは意識していなかったが、そういう事態になりかねない事を始めてしまったのだ。

 改めて覚悟を決めてかからねばならないだろう。


 午前の面談を終えると直ぐにカルテ室に向かいリストのカルテを探す。

 リスト順に探して行ったが頭の5名は見当たらない。アフレック氏が朝一番に持って行ったのだろう。

 先を越されたようだ。

 リストの下から5名を抜き取ってオフィスに戻る。

 朝買っておいたサブウェイのサンドイッチとミネラルウォーターの昼食を摂りながら受診アンケートに目を通していく。


 最初に見た偏頭痛持ちの女性は脳外科で原因が特定できず、心因性の可能性を指摘されクリニックに訪れている。

 小さく几帳面な字体。

 病名などの難しい単語の綴りもきっちり正確に書いていることから高学歴であることが分かる。

 以上、次。


 リストの最後から2番目の男性は奥様の勧めで来院。

 怒りがコントロールできないとのこと。

 右肩上がりの荒々しい自信家の筆。

 可能性ありかと一瞬思ったが、カルテを読むと男性更年期障害の典型的症状との所見で心療内科での薬物治療に切り替えとなっている。

 さもありなん、次。


、、、次。


、、、次。


 自己主張の強さを感じる筆跡、弱々しい筆跡、乱筆のものに印象が残るが、別にそういうものを探している訳ではない。結局何も得られず昼休みを終えた。

 受付にカルテを返却し午後の診療に入る。


 午後の診療を終えるとリストの下から10番目までの5名に目を通す。

 これといった収穫はなし。

 アフレック医師のオフィスに顔を出す。

 老眼鏡を掛けたまま向えたアフレック氏も特にこれといった収穫はなかったとのこと。

 内線でクレアを呼び出し話を聞くと、受付でカルテを開いていると他の同僚に怪しまれるので早くに出勤してカルテを見ていたらしい。

 確かに受付担当がカルテを閲覧していたら怪しまれるだろう。

 クレアがカルテやアンケートを見ていて不自然じゃない理由を皆で考えてみたが良い案が思いつかない。

 クレアには申し訳ないが早朝出勤を続けてもらうしかなさそうだ。


 しかしこれは意外と時間が掛かりそうな作業だ。

 リストには43名の患者が上がっているのでひとりひとりに時間を掛けてはいられない。

 とりあえず軽くで良いので週末までに全て目を通すことを確認して解散となった。




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