アルコルの餞別 11
きっかり二時間半で帰還出来た。拠点地の明かりが見えた段階で少し自重していた水分補給を遠慮なくはじめていたので荷物は軽い。が、生ぬるい水だけしか補給出来ていなかった身体にキンキンに冷えたコーラはご馳走以外のなにものでもなかった。乾杯、と、ヒイラギと瓶と瓶を合わせる。
「っ、あー! 美味い!」
「んー」
少女も満足そうにジンジャーエールを飲んだ。炭酸が得意ではないのかちびちびと飲んでいたが、それでも満足そうである。
「おいしい」
「ああ、美味いな。それに俺らよく頑張ったよ合計五時間も」
「確かに」
「……楽しかったか?」
「え? うん。楽しかった」
当たり前のように少女がうなずいたので、そうか、とこちらもうなずいた。
「ヒイラギ。宴会としよう。シャワー浴びたら食堂に集合、いいか?」
「わかった」
少女と一度別れ部屋に戻りシャワーを浴びた。……が、服を脱いだ段階でえらいことになった。砂だらけでじゃりじゃりしている。くそ、外で叩いてから来ればよかった。部屋の床も砂だらけでブルーになる。やっちまったなあと思いながら大量の湯で身体を洗い、全身さっぱりしたところでラフな格好に着替えのびをした。やはりある程度清潔にしていた方が身体は軽く感じる。
食堂に行くと少女はまだいなかった。十分ほど経ってからぱたぱたと寄って来る。ゴーグルはサングラスに変わっていた。
「お待たせ」
「いや。部屋砂だらけになったか?」
「になりそうだったから服着たまま一度シャワー浴びて砂落としてそのあとちゃんとシャワー浴びた」
「お前、頭いいな……」
どうせ服は洗うのだしそうすればよかった。
「前もそうしたの。海撮で砂だらけになった時」
「お前意外とおもしろい苦労の仕方してるのな。……まあいいや、食おうぜ。腹減った」
「減った」
流石に動き回ったあとなので少女も空腹らしい。今度こそたくさん食べるだろうと思ったのだが、少女は小さく首を傾げるとこちらを真っ直ぐ見上げて来た。
「ねえ、まだ待てる?」
「飯を? 待てるけど……なんで」
「じゃあもうちょっとおいしそうなの作ってあげる」
そう言うと少女はちょいちょいと手招きした。




