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アルコルの餞別 6


 準備があるので二十分後に外で集合することになった。キッチンからもらって来たペットボトルを何本かと少女に倣い自分も作ったサンドウィッチ。そこまで遅くまで粘らないつもりだが防寒着を一枚に簡単な応急処置セットにカメラセット一式。それらを詰めると、やはりそれなりの重量になった。なにか減らせるかと考えたが特に無くせるものはなかった。水は飲めば消費するし、帰りは軽くなるだろう。

 靴紐を固く結んだ。さあ、行こう。




 一応こちらから願い出たのだし、少女を待たせるわけにもいかなかった(万が一先に出られたら大変だ)。ので、約束の時間五分前には外にいた。出て数十秒もしない内に少女が出て来る。時間に正確なのは日本人らしかった。

「早かったな」

「うん、ハイドも・・・・・・」

 付け替えたらしいゴーグルの奥の眼がぱちくりと瞬いた。それは幼い顔立ちをさらに幼く見せるものだったが、少女本来の仕草にも見えた。純粋に驚いているらしい。時間にルーズな人種であることは否定しない。

「廃坑に行くには一度説明を受けるんだって」

「来てたな」

 全員登録させられたメールから夜の内に通知が来ていた。敷地から離れる際はメンバー全員で地図をもらうと共に説明を受けること。五分くらいの短いもののようだが。

 女子寮の受付に入ると昨夜と同じようにララがいた。既に先客がいたので待って、終わると同時に入れ替わって前に出る。

「廃坑に行って来ます」

「何時頃帰宅予定?」

「片道でどのくらいかかりますか?」

「歩きと車どっち?」

「歩きで」

「徒歩で二時間半ってところね」

 往復で五時間。なかなかの距離だった。

「二人で行くの?」

「はい」

 ララはちらりとこちらを見た。昨夜のこともあるし少し引っかかったらしい。肩をすくめるだけに留めておく。

「・・・・・・これが地図。目印のポイントが立ってるからそれを辿って行けば着くわ。それほど難しいルートじゃない。・・・・・・で、何時頃に帰って来るの?」

「日が暮れるまでには戻って来ます」

「そう。敷地から出るならこれを持って行って」

 ことりとテーブルに二つ携帯が置かれた。

「万が一の時はこのGPSを辿って捜索になるから」

「はい。帰って来たら返せばいいですか?」

「明日も敷地から出る予定?」

「恐らく」

「じゃあ持ったままでいていいわ。最終日に返して。あとここにサインして」

「はい」

 携帯とは言いつつもこれが鳴ることは恐らくないだろう。失くさないようにこの場で鞄にしまった。仕舞うのにごそごそと手間取る。

「悪い、俺の名前も書いておいてくれないか」

「わかった」

 それから簡単に説明を受け、水等の確認をされた。少女の持つペットボトルの本数がやたらと多かったので重量的に大丈夫かと心配になったが、本人が大丈夫と言うならばうなずくしかない。

 外に出て、少女が帽子の鍔をくいっと下げた。

「行こうか」

「ああ」

 手でも繋ぐか? そう言いかけて、やめた。




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