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「全部、失くなったよ」
そっか。気分は?
「心細い」
大丈夫。安心して怖がってていい
「うん。……あのね」
なに?
「わたし、護られてた。護るつもりで吐いてた嘘に―――ずっとずっと、護られてた」
……そっか
「それが全部失くなった。だから……わたしは今、どんな顔をしていいのかわからない。なんにも持ってなくて……だから、心細い」
うん
「……ねえ、オーリ」
なに?
「わたしは今誰だっけ?」
ミユキは誰だと思うの
「……わかんないや。―――ねえ、オーリ」
なに?
「……ずっとずっと、愛してるの」
うん。知ってる
「うん。―――知ってるのを、知ってる」
あなたがいなくなったあとの話を、しようか。
あなたの不在に耐え切れなくなったわたしが、どこに行き―――どんな航跡を描いたか、話そうか。
嘘と詐欺のあとに、残ったものの話をしようか。
君がいる。君がいた。
―――その世界を、愛そう。
おひさしぶりです。ナコイ トオルです。
これは詐欺師でなくなった『彼女』が何処に逃げたのか、その話になります。
願わくば、また最後までお付き合いを。