魔法使いじゃない6
今回はちょっと短いです。
ガツンと頭を打ち付けられるとはこういうことを言うのだろうか。
幼い頃から魔法書を紐解き、彼らの歴史の謎を解いていきたいと思っていた。
だから唯一といわれる女魔法使いラーナ・プラヴァに会いたかったのだ。
酔っ払い達には適当に叔父の書状を届けるだけだとジルは答えた。適当に受け流し上の階にある部屋に逃げるように戻ってきた。リーンはこの護衛対象のただならぬ様子に黙って後ろについてきている。
弟子にしてもらう?
ジルは自分が魔法を使えそうもないことをわかっている。使えないなら弟子なる意味もないだろうし、そもそも弟子にしてくれないだろう。
それでは使えないながらも、魔法使いについてその在りようを聞く。術も展開できない人間に魔法について教えてくれるだろうか?
自分にほんのちょっとでも魔法使いとしての才能があればよかったのかもしれない。そうすれば堂々と彼女の門を叩き、師として仰いだだろう。
ただただ知りたいだけなのだ。魔法の根源と謎に満ちた魔法使い達を……。
「隣の部屋に控えておりますので、何かあったらお申し付けください」
リーンが下がった途端、ジルはベッドに勢いよく飛び込んだ。
館のいつもの布団よりも固く、ジルを優しく包み込んではくれなかった。
(そうか、私は怖いんだ。本物の魔法使いからお前のやっていることは無意味だ。術も使えないのに真理に近付いてどうするんだって言われるのが怖くなったんだ)
来年十八歳になれば、否応なく今の生活は変わる。騎士は到底無理だから、何らかの文官の仕事に就かなくてはならないだろう。財務長官の下は絶対嫌だし、記憶も薄い父と同じ法務官もやっていける気がしない。
今回の旅を大公が許した本当の理由など気が付いていた。成人前に最後に希望をかなえてやるから、その後は行政官としてやっていくために心を入れ替えろということなのだ。
学者になるという選択肢もあるのだろうが、学び舎は神殿の管轄だ。元が魔法使いの家柄ということで、クルクニ国とは距離をとっており交流がほとんどない。何より魔法使いに憧れるジルは、神殿から見ると異端であった。
深い深いため息がジルの唇からもれていた。ふと部屋の中を見渡すと椅子の上に乱暴に置かれたマントの上で、ゲーノが羽を休めて寝ているのが目に入った。
「お前はいいなぁ。鳥には仕事なんてないんだよな。好きなことして好きに飛び回ってるだけだもんな」
寝ていたゲーノがまるで異議を唱えるように頭を振って、また眠りについていた。
朝はゲーゲーうるさいゲーノの声で目を覚ました。
一晩寝ると体がすっきりしたのがわかる。ジルの心のほうはまだモヤモヤしたものが残っているが、魔法使いとの邂逅を目指し、今を楽しむほかない。




