普通は二頭以上で引く
「……田吾作を戦車化すれば俺が出張らなくてもドラゴンを蹴散らせるのでは?」
「何言ってんの」
メルディア王国恒例の春のドラゴン大討伐にて。
口に手をあて考えごとをしていると思ったらなんか言い出したカオルさんと、言ってる意味が分からな過ぎて普通に聞き返すオネエ。
ちなみに忘れている読者もいるかもしれませんが、田吾作というのはカオルさんがポセイドン様に槍返した時にお礼としてもらった馬(神馬)です。
神馬なのに名前が田吾作でいいのかって?
多分気に食わなかったら本馬にカオルさんが蹴られています。
「いや俺も実物は見たことないですけど、馬用の鎧とかもあるらしいじゃないですか」
「あー確かにあることはあるけど」
将を射んと欲されて先ず馬が射たれるなら馬の防御力をあげればいいじゃない。
実際のところ中世の後半くらいには騎士の鎧が重厚になり倒すのが難しくなったため、馬が狙われまくることになり馬用の鎧が発展していったそうです。
当然日本でも馬用の甲冑は存在しましたが、銃の普及により「どうせ抜かれるならつけてても馬疲れるだけじゃね?」と徐々に衰退していった模様。
「つまり田吾作に鎧つけて突撃させようってこと?」
「いや、いっそ戦車みたいな箱かぶせて、適当に槍でもつけて突撃させた方が攻撃範囲広くなるんじゃないかなと」
「発想が小学生」
ぼくがかんがえたさいきょうのうませんしゃ。
なお古代からある戦車というのは当然機械動力などないので馬を利用していましたが、あくまで馬に戦車をひかせるのであって馬と戦車が合体して突撃したりはしません。
「まあ確かにあの馬は度胸がある上に馬力があって頑丈だから、時代遅れなチャリオット的な意味での戦車をひかせるだけでもかなりの戦力になりそうだけど」
「でしょう!」
「ドラゴンが生息してるのは山の中なのに、どうやって突撃するつもりなの?」
「……」
田吾作なら突撃すること自体は問題なくても、チャリオットに乗ってる人間が吹っ飛びそう。
「まあやりたいなら止めないけど、やるならチャリオットに乗るのは当然アンタになるわよ」
「……」
なお御者をしながら攻撃とかできるわけないのでチャリオットには複数人乗るべきなのですが、誰も乗りたくないよね神馬にひかれて山の中を爆走するチャリオット。
「……団長なら耐えられるのでは?」
「団長は田吾作に近寄ることすら拒否されるほど恐れられてるでしょうが」
神馬に恐れられる人間とは一体。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「前にツクヨミから聞いた話を鑑みるに、今更何をやってもアメリカ車が日本で売れる気がしない」
「まあ実際どう足掻いても売れないからほぼ撤退しちゃったわけですからね」
むしろ日本車がアメリカで売れるのを妨害しまくっているため、以前作者の知り合いの車関係の開発をしている人が「こっちの商売邪魔する前に売れる車作れや!?」とぶちギレていました。
今は縁が切れているのでどうしているかは分かりませんが、多分今も盛大にぶちギレまくってます。
「そういやたまに『田舎だと車がないと生活できない』って言われてるけど、程よい田舎だと自治体がマイクロバス巡回させてたり、スーパーとかが出張販売の車回してたりするよね」
「なんですか程よい田舎って」
田舎過ぎて人が居ないと採算とれなくてそんなサービスすらしてもらえないからね。仕方ないね。
「それに今なら通販とか……いや生鮮食品とかは無理か」
「そういったものは通販よりも〇協の宅配が便利でしょうね。毎日は無理ですが週一くらいのペースで注文した品を宅配してもらえますよ」
「マジで。じゃあもう家に引きこもって暮らすことも可能なのでは?」
「可能でしょうが。姉上何かイベントがあると参加したがるタチでしょうが」
日本最古のなんちゃって引きこもり。
今日も高天原は平和です。